INDEXへ 主宰の八句 2024 11月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。辿り着く 黄疸を発症 豊年や吾は老残の黄金仏 胆管癌の手術を受く 芭蕉忌の曾良とも頼む点滴棒 自問して自答して秋深みかも 冬蝶に此岸を摑む力かな 初鏡老いの気力を眉に寄せ 生きてゐる証海鼠を噛み切るも 新茶まで辿り着きたる病あと 怖づ怖づと手術の痕を更衣 吾が骨も団扇の骨も顕なる 蜜豆や酒に飽きたる齢には (「俳壇」令和六年九月号より転載) 主宰の八句 2024 10 月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。町涼し 出水以後河童のゐない河童淵 走り梅雨魚臭かすかに通し土間 外灯の光を舐めに守宮かな 吾が骨も団扇の骨もあらはなる 打水の糊代ほどを隣にも 鰻焼く間を川音の中にをり 三山を浮かせてゐたる植田かな △成城学園に住みて十年 学園を城となしたる町涼し 2024/10/1 主宰の八句 2024 9月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。新茶 藻屑濃く匂ふ突堤夏隣 薔薇冷えや止り木高き地下酒場 虹の輪の中より島へ着陸機 一山を若葉明りに鑑真忌 謦咳といふ物音を夏の始 落し文巻きの緩びは溜息か やや大き揺れ幅をもて今年竹 新茶まで辿り着きたる病あと 2024/9/3 更新 主宰の八句 2024 8月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。椿餅 洛外の更に外れの蓬餅 灌仏もふやけ心地の夕べかな 無住寺のただ甘茶のみ濡れ縁に 目借時千体仏のおほかたも 春の蚊の人の温みに来て打たる 門跡は吉野の流れ椿餅 屯所まで届いてゐたる壬生の鉦 欠伸にも阿吽ありけり壬生念仏 2024/7/29 更新 主宰の八句 2024 7月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。熊穴を出づ 春の虹加へ隅田に橋いくつ 全山は囁くに似て木の芽どき 関所過ぐ鶯笛のひと吹きに 春の鴨源平池の平家寄り 松下村塾の床の間夏蜜柑 立て直す春分の日の砂時計 金時と遊ばむと熊穴を出づ 香煙の中に義と情義士祭 2024/6/27 更新 主宰の八句 2024 6月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。春障子 空海のてのひらにゐる贋遍路 稜線を空の渚に鳥帰る 浮橋は文箱にかかり光悦忌 土雛の重さ愛でたるたなごころ 春障子開けて湖国の観世音 貼り紙は花の形に春障子 禅林やほまちの韮のひと摑み 雉子鳴く寂光院の外厠 2024/5/31 主宰の八句 2024 5月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。牡丹鍋 初夢のあやふく三途より戻る 初鏡老いの気力を眉に寄せ 丹田を秩父に据ゑて牡丹鍋 昨夜の酒うつはに残る寒さかな 余寒とも見ゆる眉根や阿修羅仏 秩父かな札所に春子商ふも 野遊びを喜んでゐる土不踏 鳶の輪の狭めてゐたる白子干 2024/4./26 更新 主宰の八句 2024 4月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。氷餅 鴨食うて湖国の風に顔晒す 代々を湖族に生きて魦汲む 寒林の梳りたる入日影 冬耕へ影伸びてくる父祖の墓 風呂吹の冷めてもやはり吹く習ひ 生きてゐる証海鼠を嚙み切るも 諏訪に買ふ雲の重さの氷餅 鳥ごゑに亡き誰や彼日向ぼこ 2024/4/2 更新 主宰の八句 2024 3月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。近松忌 淡海は降りみ降らずみ芦刈れり ひと日干す近江蕪の赤備 芭蕉忌の旅荷に匂ふ陀羅尼助 新蕎麦を打つ間詣でむ道祖神 この辺り鹿ヶ谷とぞ僧都鳴る 冬蝶に此岸を摑む力かな 花街に奈落ありけり近松忌 威銃故郷棄てたにあらねども 2024/3/5 主宰の八句 2024 2 月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。秋思 切株は秋思のための椅子ならむ 鎌倉や谷戸に秋思の種拾ひ 零せるはどの団栗の帽子かな 犇きてなほ孤を保ち黒葡萄 十日ほどかけ冬瓜をひとつ喰ふ 磐座の温みにしばし秋の蛇 行く秋の心に染みのやうなもの 青梅線四五駅を過ぎ涼新た 2024/2/28 更新 主宰の八句 2024 1月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。時雨 石庭に時雨の一部始終かな 草の花大原御幸の道の辺に 蚯蚓鳴く冥府の井戸はあの辺り 秋の蝶枯山水の石を舐む 水澄むや貴船詣は瀬を辿り 月上げてさざ波立つる銀沙灘 数珠玉やここも翁の杖の跡 鈴虫の鳴き出す前の髭振れり 2023/12/31 更新 主宰の八句 12月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。稲光 水平を保ちて桃の箱運ぶ 木曾谷の底を灯して踊の輪 蠟涙を路地に零せり地蔵盆 航跡も無き船形の火を送る 虫を聞く羅漢は大き耳を持て 金継ぎのごと毛野国の稲光 盆道といふも数歩の屋敷墓 縁側に干す座布団も盆用意 2023/11/26 更新 主宰の八句 11月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。メロン 熟るるまで仏に預けおくメロン 閉山も昔語りにメロン切る 次の店でも鱧の出て大阪は 京・長楽寺 一遍の脛のあたりを籔蚊かな 風鈴は扉開くたび地下酒場 蟬の穴より蟬声の多きこと 胸中はまた蜩の棲む日々に 蜩や余命といふに指折れば 2023/10/27 更新 主宰の八句 10月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。虚子の町 片陰も枡形添ひに坂の町 虚子居士もこの片陰に憩ひしか 片陰に虚子の孫弟子その弟子も 入りたる虚子門といふ片かげり もてなしは虚子の逸話と冷し瓜 冷し瓜芯のところがややぬるし 冷し瓜浅間隠しの見ゆる町 城跡は坂の下なる洗鯉 2023/9/29 更新 主宰の八句 9月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。涼 傘雨忌の酒に添へたる煎豆腐 鉄棒の鉄の匂も梅雨に入る しのばずに蓮の浄土を十日ほど 栗の花鬱然として空のあり 咬み痕を二つ三つ見せ蝮捕り 蕗の筋引けば長々蕗の丈 遠き世を引き寄せてゐる夕河鹿 鞍馬行き切符に涼み心地かな 2023/8/27 更新 主宰の八句 8月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。更衣 浮く泡は亀鳴く数と思ひけり 思ひ切りぬるき甘茶を有難く 蝮ゐるらし大宇陀の麻袋 山法師風を 土佐振りの厚さなりけり初鰹 三島手のやうにも見えて雪解富士 更衣して文弱の力瘤 軒燕鳴いて砂町銀座かな 2023/7/28 更新 主宰の八句 7月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。お中日 満願の遍路なるべし湯に浮くは 尾羽まで一直線に雉子鳴く 水占の貴船も水の温む頃 加茂川が鴨川となり水温む 雁風呂であるとおぼしきこのぬるさ 生国は訛で知れり田螺汁 胸奥を過ぎゆくものに花吹雪 墓終ふこと言ひ出せずお中日 2023/7/1 更新 主宰の八句 6月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。二月礼者 凍解や武甲の神威遍満に 山鯨食うて後退りはならじ 猪食うて老の血潮を泡立てむ 肉提げて秩父の二月礼者かな 余寒なほ猪突兜太の余震なほ 土竜塚焦がしてゐたる野焼かな 頰は火を吐くかに雉子鳴きにけり 竜天に登る鱗を散華とし 2023/5/29 更新 主宰の八句 2023 5月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。春を待つ 始発ベル上野は春を待つ駅か 風見鶏北向きながら春を待つ 神将の怒髪も春を待つ頃か 門跡に不遇の皇子や寒椿 このやうな軌道あるらむ寒卵 空海の鳴かせる亀と覚えけり 玉手箱開くるなと亀鳴きたるに 暴れ火を川に落として野焼終ふ 2023/4/29 更新 主宰の八句 2023 4月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。煤逃の古都 吉野より八咫の烏が雪連れて 着膨れが来て西行の墳拝む 南都今憤怒仏より雪礫 慈悲深き仏と分かつ隙間風 明王の一喝としてこの寒波 三山の畝傍訪ふのみ暮早し くつさめは千体仏のどの仏 青丹よし奈良の宮居の冬雲雀 2023/3/26 更新 主宰の八句 2023 3月△ 更新すると6秒後に再度動画になります。大宮氷川神社 大いなる宮居と聞けり落葉籠 願かけてみるもどうやら神の留守 一族の揃ふ柏手冬ぬくし 小吉の籤が身の丈小六月 縒りをかけ神に捧ぐる今年藁 青春の蹉跌スヱタの焦げ跡も 冬雲雀野菊の墓はこの辺り 年惜しむ疫病つづきの日々なれど 2023/2/26 更新 主宰の八句 2023 2月△ 更新すると6秒後に再度動画になります。鯨鍋 指差して山の名を聞く秋日和 描きかけの籠の秋果の一つ減る サルビアの鉢を正午に花時計 息継ぎであらむ秋蝶よく止まり 末枯の初めは谷戸の底ひより 補陀落に近き泊りや鯨鍋 笹子鳴く五百羅漢に千の耳 小春日や貫首の数珠を額に受け 2023/1/28 更新 主宰の八句 2023 1月△ 更新すると6秒後に再度動画になります。御慶 福詣逆波の飛ぶ墨田べり 擦れ違ひざまの御慶も兜町 御祝儀に鳴らす金歯や獅子頭 どんど火の燻つてゐてまだ点かず どんど火の明王と見え菩薩とも 歌留多とる遺恨絡みの袖袂 ふたかみの風の散らせる寒牡丹 乗り継ぎて次がふるさと春隣 (新年号の冒頭の一句) 二回目のみくじで吉に初詣 2022/12/25 更新 主宰の八句 2022 12月△ 更新すると6秒後に再度動画になります。 破芭蕉 文鎮のやうな富嶽や立版古 投函といふも旅めく夜の秋 寝袋に見る全長の天の川 槍岳の槍が突き上ぐ天の川 唐崎の夜雨は手荒に破芭蕉 子規居士の糸瓜の花も終の頃 長短の家族の箸や今年米 水澄むや信濃は鯉も食べ頃と 2022/12/28 更新 主宰の八句 2022 11 月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。かはほり 故郷や枕に沁むる蚊遣香 すぐ判る父の無骨な団扇風 老鶯の息継ぎといふ隙見せず かはほりや戦後の闇は闇のまま 炎天やいたこの声に泣かされて 玉虫や死して吾何残さむか 遺品とて紙魚の走れる書の届く 空蟬の黄泉を見てきし目の虚ろ 2022/10/26 更新 主宰の八句 2022 10 月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。祇園祭の頃 叡山を仰ぎみたくて扇子買ふ 夏のれん東山より風招く 象もゐて屏風祭の洛中図 落ちさうな尻を二階の囃子方 遠ざかる祇園囃子や厠窓 この辺りからが洛外蚊喰鳥 畳まれし屏風も後の祭かな 粽やせ乾び初めたる後祭 2022/9/24 更新 主宰の八句 2022 9月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。今年竹 筍も丈上ぐる頃光秀忌 鎌倉の五山筍流しかな 宇治橋の半ばにて聞く新茶の香 今年竹にも妹の丈兄の丈 竹落葉いま散華とも懺悔とも 鮒鮓も馴れ頃竹生詣でむか 西行の頭打つべく桜の実 白樺の倒れながらもなほ芽吹く 2022/8/28 更新 主宰の八句 2022 8月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。春浅し 光りたる身をな恨みそ蛍烏賊 花筏組むに手を貸す 風神が配る吉野の花便り 花びらは風の筏に段葛 蠅生まれ牧場の牛を舐めに来る いづれのおんときと言うてみて春浅し 夏蜜柑石橋山を転げ落つ 子規の墓八重の墓にも夏蜜柑s 2022/7/29 更新 主宰の八句 2022 7 月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。桜餅 菜の花の安房一国を縁取れり 野蒜掘る上総は山を低くして 亀鳴けり古墳の主を問ひたれば 県木と知り去り難き苗木市 咲くまでを生きる目途とし苗木植う 四月馬鹿己に噓をまた重ね 義士祭三百年を香に噎せ 子規ならば十ほど食ふか桜餅 2022/6/28 更新 主宰の八句 2022 6月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。 干鰈 干鰈よき骨格が日に透ける 海女小屋を歩き出しさう海胆の刺 湖を響板として百千鳥 大津京跡を鳴きつぐ百千鳥 蕨餅奈良もはづれの観世音 蕨餅鹿に見られてゐて噎せる 鎌倉や鷹鳩と化しサブレーに 義貞の剣の海や和布寄す 2022/5/26 更新 主宰の八句 2022 5月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。近江初春 諸子焼く仏に近き国に来て はららごを弾く炎や諸子焼く 魞に汲む湖賊の裔の諸子舟 魞挿しの風蕉翁も聞きたるや 魞挿しに足す青竹の二三本 魞挿しに竹生詣での澪届く 淡海に浮かぶ心地や初霞 水分の神ここに坐す芹の水 2022/5/1 更新 主宰の八句 2022 4月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。初湯 去年二礼あと二拍手の今年かな 初鳩にして争ひの羽散らす 迂闊にも枕を外れ宝船 初みくじ末吉に運使ひ切る 年寄りの長湯危ふき初湯かな 福詣吉原にきて日の傾ぐ 重なれる餅花の影塔の影 花びらは影を重ねて寒牡丹 2022/3/27 更新 主宰の八句 2022 3月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。熊野詣 畏みて熊野の神と年惜しむ 煤逃もありの熊野を詣でけり 花窟神社 伊邪那美の窟黄泉とて冬温し 数へ日の一つで済ます目張鮨 冬ざれのあれが熊野の暴れ川 湯の峰温泉 湯疲れの小栗もをらむ年詰まる 補陀落山寺二句 年火守る渡海逃れの僧ならむ 鳥居出て渡海日和といふ寒さ 2022/2/26 更新 主宰の八句 2022 2月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。夜長の一茶 菊の香を千体仏と分かち合ふ 爽籟やあぐらの中に孫二人 火を恋ふは人恋ふに似て夜の深し 全長に山日蓄へ秋の蛇 穴惑入日に鱗軋ませて 富士塚は五歩が五合目残る虫 流山・秋元双樹亭跡 この夜長一茶も味醂酌みたるか 一音をはぐらかしたる神楽笛 2022/1/27 更新 主宰の八句 2021 12月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。北澤一泊様のイラストを使用させて頂きました。 小鰭鮨 神将の怒髪千年堂涼し くるぶしに意思の強さを一遍忌 くろがねの 蝗煮る二三が鍋を逃がれをり 掘割は海に繋がる 地虫鳴くまだ死火山となりきれず 慈悲相におはす不動や豊の秋 窓にある雨月明りといふもよし 2021/11/28 更新 主宰の八句 2021 11月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。北澤一泊様のイラストを使用させて頂きました。 京都初秋 機音の路地に育ちて地蔵盆 婿取りの話もう出て地蔵盆 閼伽桶が年々重し墓洗ふ 大文字蛤御門に凭れ見る 魂送り胸に燠火として宿す 今年酒 新涼や蕪村旧居はこの路地に 浮沈てふ今浮の方か衣被 2021/10/24 更新 主宰の八句 2021 10月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。穴子飯 父母亡くて生家といふは黴やすし 浦島の玉手箱より黴けむり 過去帖の曾祖父あたり黴臭し 唐揚となり沢蟹が皿に這ふ 此ぞこの室の泊の穴子飯 河童忌や人恋しくて人嫌ひ 腹巻が首巻となりうなさるる 岳樺焼べ足してゐる夏炉かな 2021/9/24 更新 主宰の八句 2021 9月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。籐椅子 口下手にして草笛の吹き上手 海月千水族館を煽りづめ 籐椅子の背の直角に司祭館 八ヶ嶺に向く籐椅子も蹠も 下闇を踏めば奈落のありさうな 長考の末の一歩を蟇 天井に翼気怠き扇風機 蝙蝠や荷風老人来る頃か 2021/9/26 更新 主宰の八句 2021 8月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。穴子鮨 春夕焼ひと幕といふほどもなく 山越えの弥陀とも春の夕焼は 箍弛むときは一気にチューリップ 麦笛の嗚咽となりて吹き終る 竹皮に竹皮の紐穴子鮨 川風に飛ばされてこそ夏帽子 袋掛して桃の実に富士見せず 2021/7/24 更新 主宰の八句 2021 7月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。霞 落ちさうな仏の薬壺春深し たんぽぽの絮がひきずる母郷かな 溜息のひとつに万の落花かな 淡海に遊ぶ霞を食ふやうに 春惜しむ敬具のあともまだ綴り 直弼の墓花冷の痛いほど 背の亀の重さに下の亀鳴けり 本丸に出て筍の蹴られたる 2021/7/23 更新 主宰の八句 2021 6月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。陽炎 七十の吾も男の子や雛荒し 手箒で払ふかんばせ雛納 父母のこゑも故山も霞かな 八ヶ嶺は雲湧くところ楤芽搔く 闘牛のちらしを離島航路かな 子規庵に来て陽炎の客となる 竜宮のやうな駅舎に白子買ふ 白子干す日のあるうちを忙しなく 2021/5/27 更新 主宰の八句 2021 5月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。遅日 炬燵猫胎内仏のやうにをり 踏みさうな処に伸びてかじけ猫 よろけ出て眠り足りたる炬燵猫 この橋を渡れば安房へ春隣 頰杖に眠りを預け春隣 縁側に遅日余禄のごとくあり まんさくの頃を友垣散り散りに まんさくや峡の湯宿に硫黄の香 2021/4/25 更新 主宰の八句 2021 4月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。冬木の芽 冬木の芽詩嚢育ててゐるごとし 金閣を囲む冬芽の銀に 海鼠腸に鋏を添へて能登の宿 冬館かつて軍靴が戛戛と 寒餅の届くふるさと捨てし身に かいつぶり道灌堀の底覗く 寒木瓜の三日ほどして次が咲く 三寒の不動四温の観世音 2021/3/25 更新 主宰の八句 2021 3月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。高野山終大師 冬虹の根の濃きあたり高野かと 水洟を詫びつつ高野詣かな 御大師の膝下に ともかくも奥の院まで雪を搔く 千年のこの底冷を生き給ふ 凍えつつ終大師の餅貰ふ 曲がりてもまだ底冷の長廊下 秀次公自刃の間とぞ冷えまさる 2021/2/27 更新 主宰の八句 2021 2月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。小春の座 釈迦牟尼のおんてのひらは小春の座 小六月母が隣にゐるやうな 抱卵の身を日に透かせ柳葉魚干す 豊饒の海の一滴牡蠣啜る 溜息が白息といふ形なす 石垣のここにも江戸の大火跡 初霜や枯山水は氷河期に 柊の香や消息は久に絶え 2021/1/27 更新 主宰の八句 2021 1月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります。蝗 てのひらを蹴られつつ捕る蝗かな 蝗跳ぶ入日に翅を透かせつつ 振り塩の溶け頃を待ち衣被 富士山はどこも正面秋澄みぬ 爽やかや弥陀と手綱で結ばれて 椎の実は思惟の形に平林寺 野火止の野火の火群の彼岸花 粥座から薬石までを昼の虫 2021/12/26 更新 主宰の八句 2020 11 月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります.盤水先生没後十年 墓前五句 閼伽桶が年々重し墓洗ふ 掃苔や供物の煙草燃え渋る 爽やかや先生の句もその墓も 虫鳴いて先生の墓賑やかに 昼の虫句の虫も来て師の墓辺 水打ちて枯山水を喜ばす ふるさとに下駄の磨り減るまで踊る 小田原城古郭 螻蛄鳴けり濠の深さを測りつつ 20290/10/29 更新 ▲2016年11月26 日 読売新聞・朝刊掲載。 山晴や反りて崇なす朴落葉
拡大します。 主宰の八句 2020 10月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります. 山椒魚 月山も山椒魚も動かざる 滴りが映す山河をふくらませ 曾根崎の灯を対岸に祭鱧 鱧の皮グリコのネオン届く酒肆 日盛の京を西入ル東入ル 老人の目が蠅を追ひ見失ふ 老人がただ提げてゐる蠅叩 水羊羹平らに提げて富士見坂 2020/9/27 更新 主宰の八句 9月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります やませ 森に礼海に礼して苗木植う この梁も津波の下と海鞘捌く 合はす手に梅雨の湿りや光堂 弁慶の股下くぐる青嵐 光堂夏蝶も色こぼし過ぐ 幻の堂宇あやめは禁色に 田の神を震へ上がらせやませ吹く 毛越寺浄土の海をやませ吹く 2020/8/28 更新 主宰の八句 8月号△ 更新すると6秒後に再度動画になります白雨 老鶯の次の声待つ長湯かな 手に受けて蛍は熱しふるさとは 神頼みなども少しく短夜を 白雨来て枯山水の熱冷ます 黴の香も丸ごと家族写真かな 歳時記を割れば黴の香黴の項 もてなしの夏炉の炎やや高し 夏炉焚く座敷童が榾足して 2020/7/25 主宰の八句 7月号 2020花冷 半眼は水中に置き昼蛙 踏みどきをやや失ふも麦踏めり つくづくし一筆箋なら書けさうな 風呂敷に包まむ京の朧月 開かぬ目で我を見てゐる捨仔猫 長閑さや見えゐていまだ着かぬバス 疾きゆゑに花筏とはなりきれず 花冷の手痛きまでにこの年は 2020/6/28 更新 主宰八句 6月号 2020△ 更新すると6秒後に再度動画になります遅日 きな臭きまでに空澄み底雪崩 神の名に彦や 酒こぼし春愁の輪の広ごれり 角落とし後ろの鹿を躓かす 角落ちし鹿鳴きにくる西行庵 海鳴りや井桁に組みて雁供養 風あればたてがみめける春ショール 古稀の身の遅日の端にゐるごとし 2020/5/25 更新 主宰八句 5月号 2020八戸・えんぶり えんぶりの振舞酒に雪募る 頬紅を塗りえんぶりの顔となる 通行止めして苗植うる朳衆 えんぶりの鯛四辻に釣り上がる 抱き寄せてえんぶりの子を風囲ひ 町名に三日六日や朳摺る 脇役で八十といふ朳翁 2020/4/24 更新 主宰八句 4月号 2020鰤起し 宿の梁つられて鳴れり鰤起し 魚市の一番底に平目の目 書初の一画にして躓けり 暁闇の湯気の分厚き寒造 三寒と違ふ角度の四温の眉 三寒は父に四温は母に似て なまはげの足の縺れて藁こぼす 屋上に禰宜の来てゐる午祭 2020/3/29 更新 主宰八句 3月号 2020更新すると再度スライドします。串柿 串柿やすぐに日の失せ宇陀郡 一言神に供へし冬至南瓜とぞ 冬ぬくし仏の由来聞けばなほ 有難し観音堂のこの冷えも 玉砂利の四隅まで筋年用意 興亡の亡も神とし冬ぬくし 水神の幣を新たに寒造 2020/2/28 更新 主宰八句 2月号 2020更新すると再度スライドします。海鼠 神鏡に風の映れる神の留守 おでん酒昨日の客が今日もゐて 旧拓銀前朝市のたらば蟹 切られたる半ばに海鼠身構へる 啄木の失意の街の氷頭膾 力抜く十一月の山々は 短日といふも木曾路はあまりにも ひと掴みほどの冬菜をなぞへ畑 2020/1/29 更新 主宰の八句 1月号 2020更新すると再度スライドします。椿の実 海光が磨きをかけて椿の実 灯台は孤高の背骨鳥渡る 潮騒も襞に刻まれ甘干に 献上の折敷に跳ぬる紅葉鮒 穭田に田の神帰りそびれしか 罠の檻歪むるほどに猪猛る 裏庭は吉野へつづく鹿おどし 「伊勢 河合真如先生」 秋惜しむかつて神官たる人と 2019/12/29 更新 主宰の八句 12月号更新すると再度スライドします。主宰の8 句 2019年12月号 秋日和 青空を丸ごと摑み松手入 無垢の耳のみに聞こえて鉦叩 高野いま胎蔵界に鉦叩 雨粒を尻に集めて糸瓜かな 錆鮎の焼干し吊す檜枝岐 品川寺 虚子の句碑読む別れ蚊に刺されつつ 鯨塚などにも触れて秋愉し 寺あればまた寺に寄り秋日和 2019/11/29 更新 主宰の八句 11月号更新すると再度スライドします。全て九品仏・浄真寺にて 2019/10/28 撮影しました。 主宰の8 句 2019年11月号 九品仏初秋 秋思ひとしほ九品仏てふ駅名も 下生の身にも秋蟬の等し並み 吾が胸に切れを入れたる夕蜩 秋扇胸の閊へをあふぎをり 九品仏訪へば九品の秋のこゑ ことごとく秋思の相の九品仏 残暑なほ阿弥陀様にも上中下 芙蓉散る濁世を見切りたるやうに 2019/10/28 更新 主宰の八句 10月号更新すると再度スライドします。主宰の8 句 2019年10月号 陸奥の旅 恐山此岸より見る灼け地獄 禊湯を出て霊山のやませ受く やませ吹く我にも名無し塔婆にも 湯桁にも年輪陸奥の緑雨かな またたびの花まだ旅の続きをり 海鞘喰うて胸に霧笛のやうなもの 浮苗に活入れてゐるやませかな 消印は海辺の町の夏見舞 2019/8/28 更新 主宰の八句 9月号更新すると再度スライドします。主宰の8 句 2019年9月号 蜘蛛の囲 泥鰌鍋隣の席の世話も焼く 青嵐とも木曾殿の入洛は 蜘蛛の囲の糸飛ばしたる編み始め 頼りなき甘さが頼り枇杷啜る 孑孒の百態を見てやや痒し 爪先で知る梅雨冷の永平寺 隣家にも糊代ほどを水打てり 葬儀屋に客なくてまた水打てり 2019/8/28 更新 主宰の八句 8月号更新すると再度スライドします。主宰の8 句 2019年8月号 牡丹 牡丹に現世の息慎めり 余花に会ふ奥千本のその奥の 最澄の山一隅の余花明り 糶市に武者溜りめく蝦蛄の籠 鷹巣立つ枝の撓みをばねとして しまひには蹴りだされたる巣立鳥 短夜であれば一幕物の夢 夏めくや長寿眉など切り揃へ 2019/8/11 更新 主宰の八句 7 月号更新すると再度スライドします。主宰の8 句 2019年7月号 山ざくら 上千本にて残桜に追ひ付けり 深吉野の湯屋に飛びくる残花かな 手の届くあたりが冥府山ざくら ひこばゆる系図逆さにしたやうに 村ぢゆうが焦げついてゐる麦の花 身長の縮みて古稀に柏餅 毛の生えるやつぱり四月馬鹿 突つき合ふ憲法記念日も鳩は 2019/6/27 更新 画像上で拡大します。 スピーチと熱狂の鳴り止まぬ拍手喝采。 ダブル受賞の快挙・・! 溢れる程の祝賀モードへと・・。
祝 受賞 祝賀会 2019/3/17授賞祝賀会学士会館 2019年3月17日 更新で5秒後、再度スライドします。全14枚。 乾杯は井月の千両、千両と手締めでとフィナーレへと・・。 句集 「然々と」 伊藤伊那男 自選15句-1自選15句-1 更新で5秒後、再度スライドします。 5句 みすずかる信濃は大きな蛍籠 魔法瓶あるだけ並べ天茶寺 菊枕には重すぎる頭かな 露の世とつぶやてみて露の中 股引をもう見られてもよき齢 自選15 句 3019/4/1 更新 句集 「然々と」 伊藤伊那男 自選15句-2自選15句-2 更新で5秒後、再度スライドします 5句 マッチ一本迎火として妻に擦る 動かせば火鉢に爺がついてくる ボーナスを自分に出してみて淋し 白鳥の白炎として降り立てり 蝮酒二日ほどして少し効く 自選15 句 3019/4/10 更新 句集 「然々と」 伊藤伊那男 自選15句-3自選15句-3 更新で5秒後、再度スライドします。 5句 湯たんぽの慈母のごときを足蹴にす 春火鉢あればあったで手をかざす 山笑ふ若草山もそれなりに 京の路地一つ魔界へ夕薄暑 大仏の頭が見えて冬ぬくし 自選15 句 3019/4/20 更新 句集 「然々と」 伊藤伊那男 十句選 -武田禪次更新で5秒後、再度スライドします。 十句選 武田禪次 鱈割いて貧婪の腹さらけ出す 露の世とつぶやいてみて露の中 火に脂そそぎ秋刀魚の焼きあがる 人麻呂に空くる上座や今日の月 白鳥の白炎として降り立てり 鶴翼のやがて魚鱗に山焼く火 山女釣る山を大きく傾けて 若水の映す一歳もなき山河 風鈴を妻の吊るしし位置に吊る 焚き上げて枯菊の香を全うす 3019/4/25 更新 句集 「然々と」 伊藤伊那男 十句選 三代川次郎更新で5秒後、再度スライドします。十句選 三代川次郎 寒林に入り散策は思索へと 福寿草てふ睦まじき混み具合 山晴れへ挿す八朔の幟旗 たんぽぽの絮吹き絮に囲まれるる 鯉跳ねて十六夜の月崩しけり 山開馬が舐めたる清め塩 音階を一つ上げたる虎落笛 冬凪に潜水艦の甲羅干し 血管の膨らみきって競馬 阿弖流為を内より照らし大ねぶた 3019/5/1 更新 2019/5/4 更新 句集・然々と 伊藤伊那男 十句選 杉阪大和更新で5秒後、再度スライドします。十句選 杉阪大和 寒林に入り散策は思索へと 鶴引きて祭のあとのやうな村 落葉焚く色を夕日に繫ぎけり たんぽぽの絮吹き絮に囲まるる あぢさゐの色のはじめを雨が描く 鮎簗へ大きくしなふ渡し板 おほかたの影は縞目に夏座敷 驚きのかたちにうねる稲雀 山々は彫りを深めて洗鯉 富士塚の裾野に拡げ苗木売 3019/5/8 更新 句集・然々と 伊藤伊那男 十句選 松川洋酔更新で5秒後、再度スライドします。更新すると5秒後に再度スライドします。全10枚。 「然々と」十句選集・松川洋酔 2019/5/15更新 十句選 松川洋酔 平穏は余白にありて暦果つ 職歴は五指ほど勤労感謝の日 聖菓切る五人家族はやつかいな 蝮酒二日ほどして少し効く ボーナスを自分に出してみて淋し 紙懐炉ずれてふぐりを温むる 動かせば火鉢に爺がついてくる 股引をもう見られもよき歳 亀鳴くと師が言えば皆諾へり 2019/5/15 更新 句集・然々と 伊藤伊那男 十句選 武田花果更新で5秒後、再度スライドします。更新すると5秒後に再度スライドします。全10枚。 「然々と」十句選集・武田花果 2019/5/23更新 new 十句選 武田花果 福寿草てふ睦まじき混み具合 生家売るは棄教のごとし鳥に いつも買ふいつもの豆腐小鳥来る 黄泉の国より噴き出せる桜かな 兄吹けば草笛にある国訛 蒔いてみん妻の残しし花の種 鹿鳴くや恋はかくかくしかじかと 焚き上げて枯菊の香を全うす 隠れん坊のやうに人逝く年の暮 柏手の一打たがへし年の果 2019/5/23 更新 |