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 6月号  2018年



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伊藤伊那男作品 銀漢今月の目次 銀漢の俳句 盤水俳句・今月の一句  
  彗星集作品抄    彗星集選評  銀漢賞銀河集・作品抄
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 銀漢日録  今月の写真


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伊藤伊那男作品

主宰の八句












        
             


今月の目次










銀漢俳句会/6月号














  




   



銀漢の俳句 

伊藤伊那男 

◎続・京都よもやま話

『銀漢亭こぼれ噺──そして京都』は自分史であったが「京都よもやま噺」など京都の歴史や食物などのコラムも添えた。出版から一年を経て、私一人が盛り上がった結果かもしれないが、銀漢俳句会で初の京都吟行会を行うこととなり六十名ほどの参加希望者があるという。そこで本のコラムに書き足りなかったり、新しく知ったちょっと面白い話を旅の前に紹介しておく。

 ■清水寺境内の舌切茶屋
 NHK大河ドラマ『西郷(せご)どん』が放映されている。
 西郷が京都で討幕運動に奔走していた頃、清水寺の塔頭、成就院の僧月照との策謀が露見して、二人は薩摩に逃れた。そこまでは描かれるであろう。さてそのあと成就院の寺侍が加担の科で捕えられて拷問を受けたが、一切を語らず舌を噛み切って死んだ。清水寺は残された家族の生計を考えて、境内に茶店を開かせたが、その茶店の名が何と「舌切茶屋」、その曾孫が何と俳優の近藤正臣である。
 ■欧陽菲菲の好きな寺
 京都にいた若い頃、台湾出身の欧陽菲菲の「雨の御堂筋」が大ヒットした。当時京都一のキャバレーは東山三条の「ベラミ」で、菲菲のショーがあるというので、なけなしの金をはたいて行った。ショーの中で司会者が「菲菲、京都で好きな寺はどこ?」と聞くと菲菲は「キンカクシー!」と答えた。広辞苑にも載っているが一昔前は和式便所のことを「金隠し」とも呼んだ。この答えには笑わざるを得ない。そういえば銀閣寺近くの銭湯に「銀閣寺湯」があった。では金閣寺の近くは、というと「金閣寺湯」ではなく「金閣寺温泉」と、語感はやや和らぐ。私は下劣であろうか、つまらない話を紹介してしまった。
 「くわばら、くわばら」の語源
 4月号の京都案内でも触れたが、京都御苑の下に丸太町通があるが、向いの地方裁判所との間の誰も住んでいない路上に何故か住居表示が残っている。「桑原町」である。大宰府で失意のうちに死んだ菅原道真が怨霊となり、京都に雷を落とし廻ったが、道真の縁者の桑原家の屋敷には落ちることが無かった。そこで京都の人々は雷が鳴ると「くわばらくわばら」と呪文を唱えるようになったのであった。そのようなことから、道真公の祟りを恐れて、没後千百年を過ぎた今も京都はそこに住居表示を残しているのだ。京都とは今も怨霊が潜んでいて時々顔を出す街なのである。
   
京の路地ひとつ魔界へ夕薄暑   伊那男








 



  

盤水俳句・今月の一句

伊藤伊那男 

沖縄忌夜目にくつきり珊瑚礁         皆川 盤水


沖縄には度々遊びに行っているが、太平洋戦争の戦跡を巡るのに服装も心の準備もなく、ついつい行きそびれていた。二年前の旅では丁度終戦記念日の8月15日に那覇にいたので、決心をして家族共々、摩文仁(まぶに)の丘を弔問した。書物で知ってはいたが実際にこの地に立ち、展示品などを見ると悲惨な戦禍に鳥肌が立つばかりであった。沖縄忌は本土の終戦の前、6月23日である。「夜目にくつきり」とだけ言った写生に静かな凄味がある。
                                (平成15年作『花遊集』所収)
                             








  
彗星集作品抄
伊藤伊那男・選

墨だけで画く七色冬の虹         伊東  岬
封筒の窓の透明納税期          戸矢 一斗
入学児待つ黒板の桜色          星野かづよ
永き日の欠伸をうつす埴輪かな      池田 桐人
点になり点ふるはせる揚雲雀       片山 一行
飯事の主菜の団子春の土         森濱 直之
鳥曇ひとりの旅は北ばかり        中村 孝哲
動物図鑑子と見比べつ涅槃絵図      桂  信子
廃校の最後の落花浴びにけり       杉阪 大和
落葉松の芽立ちひときは騒がしき     三代川次郎
お松明仕舞の火の粉闇に吐き       辻本 理恵
利休忌の風鬱々と戻橋          武田 禪次
小中の一つ校門朝ざくら         萩原 空木
啓蟄や水飲みもどる夜具の穴       池田 桐人
鳩一羽高みを目指し卒業歌        大野 里詩
涅槃図の大きさを云ふ両手かな      坂口 晴子
落し穴掘りしあたりや土筆摘む      中野 智子
旅装解く宿に遥けき春の雷        伊藤 庄平
我が雛在り処確かむだけのこと      星野 淑子






       








彗星集 選評 伊藤伊那男


墨だけで画く七色冬の虹         伊東  岬
「虹」は四季にわたって詠まれる。「春の虹」「虹」「秋の虹」「冬の虹」。こうなると季節感がしっかりと把えられた「虹」でなくては生き残ることはできない。この句は黒一色で描かれた虹。墨の濃淡だけで七色を想像させる技法である。他の季節とは違って、はかない美しさが出せるかどうかにかかっているが、この句は十分にその雰囲気を醸しているようだ。水墨画から確かに色を想像させた秀逸。

  
封筒の窓の透明納税期          戸矢 一斗
 確かに、税務署からの通知は住所のところがセロファンで透明に抜けている様式が多い。たいがいは税金の請求であるから印象が強いのであろう。全部お見通しだぞ、という感じが「透明」の措辞に出ているようだ。もちろん封筒の形式が変更になるまでの間、生きている句だが……。

  
入学児待つ黒板の桜色          星野かづよ
入学式が終わって各々のクラスに分かれて、初めての教室に入る。黒板には上級生によって、歓迎の言葉と絵などが書かれている。桜の季節であるから赤いチョークをふんだんに使って黒板一杯に新一年生が喜びそうな絵が描かれているのであろう。「桜色」の把握が効果を発揮した。 

  
永き日の欠伸をうつす埴輪かな      池田 桐人
埴輪は古墳の周囲に並べられていることが多く、人、動物、武具など様々な形のものがある。古墳への殉葬の代用という説が有力のようだ。人を模したものは穏やかな表情のものが多い。欠伸をしているような顔もあり、見学者も埴輪につられて欠伸をしてしまったというのだ。「永き日」の季語の斡旋の効いた句となった。 

  
点になり点ふるはせる揚雲雀       片山 一行
雲雀が上昇して点となった、という句は沢山見てきた。だがこの句はもう少し踏み込んで、その「点」が震えているという所まで詠んで類型を免れた。「ふるはせる」によって、空の一点にとどまって鳴いていることまで想像させるのである。 

  
飯事の主菜の団子春の土         森濱 直之
ままごとのおかずに野の草花を添え、さて主菜は土を捏ねた団子である。それが春の土であるところがいい。春の土の温かさ、柔らかさがこの「飯事」の句を支えているのである。作者のやさしい目差を感じさせる。 

  
鳥曇ひとりの旅は北ばかり        中村 孝哲
鳥は北へ帰る。作者も北方指向か。「北ばかり」がいい。 

  
動物図鑑子と見比べつ涅槃絵図      桂  信子
涅槃図の動物を図鑑と照らし合わせる発想がユニーク。 

  
廃校の最後の落花浴びにけり       杉阪 大和
少子化で廃校も多い。「最後の落花」が悲しい。 

  
落葉松の芽立ちひときは騒がしき     三代川次郎
落松葉の芽吹きの凄さを独自の目で詠んだ。いい感性。

  
お松明仕舞の火の粉闇に吐き       辻本 理恵
修二会の一場面が的確。「闇に吐く(・)」と止めたい。 

  
利休忌の風鬱々と戻橋          武田 禪次
利休屋敷は一条戻橋近くであった。「風鬱々」が異色。 

  
小中の一つ校門朝ざくら         萩原 空木
「朝ざくら」が清々しい。「校門ひとつ」の方が素直。 

  
啓蟄や水飲みもどる夜具の穴       池田 桐人
「啓蟄」を人間の営みに持ち込んだユーモア。 

  
鳩一羽高みを目指し卒業歌        大野 里詩
この句の鳩には自身の思いが重なっているのであろう。 

  
涅槃図の大きさを云ふ両手かな      坂口 晴子
「こんなに大きかった!」と両手が語る面白さ。 

  
落し穴掘りしあたりや土筆摘む      中野 智子
そんなこともあったなと思う。「土筆摘む」に郷愁が。 

  
旅装解く宿に遥けき春の雷        伊藤 庄平
 春雷はこんな感じ。「旅愁」が出ている句。

  
我が雛在り処確かむだけのこと      星野 淑子
少し複雑な心理であるか。「確かむる(・)」とすべきか。 










   
   










銀河集作品抄

伊藤伊那男・選

書類もてふくるる鞄鳥雲に      東京   飯田眞理子
海ヘだて匂ふ若布の黒暖簾      静岡   唐沢 静男
草津湯の番台守る土雛        群馬   柴山つぐ子
濡れ筵より取り出せる苗木植う    東京   杉阪 大和
雛の舟木場の筏の水脈高し      東京   武田 花果
庭石の影の一つや蟇出づる      東京   武田 禪次
踏青の輪の餉にひろぐ日の卓布    カナダ  多田 美記
初午や歌舞伎稲荷へ幕間に      東京   谷岡 健彦
かたかごの花は領巾振るをとめかと  神奈川  谷口いづみ
立春大吉土蔵の札を貼り重ね     愛知   萩原 空木
春川の響とならむ山廬の谷      東京   久重 凜子
山よりの日差しを背負ひ雛納     東京   堀切 克洋
笹子鳴く三四郎池の藪深く      東京   松川 洋酔
大いなる矢となる魞を挿しにけり   東京   三代川次郎





   
   









綺羅星集作品抄

伊藤伊那男・選 

御神渡湖舟いづこも金縛り      群馬   山田  礁 
涅槃図の方舟めける混み具合     東京   山下 美佐
魞を挿す近江八景やや濁し      東京   橋野 幸彦
平成の平城宮に咲くげんげ      東京   森 羽久衣
切絵図に残る橋の名浅蜊飯      埼玉   大澤 静子
啓蟄や何着も着る試着室       東京   梶山かおり
町工場の隅の三角苗木植う      東京   小山 蓮子
町会の分けてくれたる苗木植う    東京   小泉 良子
寒鯉の遂に沈みて浮かばざる     東京   谷川佐和子
兜太忌とこの日定めむ遅き春     東京   畔柳 海村
骨太の名草の芽生れ兜太逝く     岐阜   堀江 美州
兜太逝く秩父春山衿正す       東京   松代 展枝
日本史はやつと明治に二月尽     埼玉   渡辺 志水
浜風の通り道なる端居かな      東京   沼田 有希
八重一重香は九重に夜の梅      埼玉   中村 宗男
蛇穴を世相窺ふ程に出て       東京   中村 貞代
鶴帰る兆しにたんと餌を撒きぬ    東京   白濱 武子
船笛の坂のぼりくる雛納       長崎   坂口 晴子
春ショール花結びにもしてみむと   東京   我部 敬子

黄水仙すこし揺らして卓を拭く    東京   相田 惠子
桃色の雲流れゆく西行忌       宮城   有賀 稲香
麦踏の足踏む音の強さかな      東京   有澤 志峯
風光るまだ跳ねてゐる糶の箱     東京   飯田 子貢
抱へゆくフランスパンや春の雲    埼玉   池田 桐人
女峰より男峰へそよと春の雲     埼玉   伊藤 庄平
土筆摘む大地の針を抜くがごと    東京   伊藤 政三
もの問へば若布すだれに声のあり   神奈川  伊東  岬
井月の墓は撫で肩春の雪       東京   今井  麦
藪割つて探梅の顔押し通す      東京   上田  裕
定食はチョークで書かれ花菜風    東京   宇志やまと
クロッカス神のみ手より撒かれしか  埼玉   梅沢 フミ
亡骸に寄り合ふ家族たびら雪     東京   大沼まり子
この国の地の塩となれ卒業歌     神奈川  大野 里詩
梅散りて絵島の墓へ供養風      埼玉   大野田井蛙
千の御手へ千人の列出開帳      東京   大溝 妙子
四温かな切り整へし老の爪      東京   大山かげもと
産土の見守る林巣立ち鳥       東京   小川 夏葉
大寒やぜんまい仕掛けとなる手足   宮城   小田島 渚
海よりも空掻き廻し若布刈竿     埼玉   小野寺清人
春寒しまたも喪服の里帰り      神奈川  鏡山千恵子
日の中へ凍を解かるる鶴のこゑ    和歌山  笠原 祐子
ふくろふの周りに闇のかたまれり   愛媛   片山 一行
日を遊び仔猫に遊び足りぬ悔い    東京   桂  信子
しばらくは唾液に浸し目刺食ふ    長野   加藤 恵介
雛段の仕丁傾ぐはこのたびも     高知   神村むつ代
収穫の喜びをはや苗木植う      東京   川島秋葉男
みすず野の六道原のわかれ雪     長野   北澤 一伯
苗木植う芸予の島の風ゆたか     東京   柊原 洋征
実朝の海はたてなく鳥曇       神奈川  久坂依里子
蟇出づや後脚いまだ覚めぬまま    東京   朽木  直
雪搔の幅となりたる裏通り      神奈川  こしだまほ
出開帳の千手背ナより外されて    東京   小林 雅子
早春の波の力を聞きとむる      千葉   佐々木節子
蔵の戸の冥き口開く梅の庭      長野   三溝 恵子
古稀共に迎へる雛を飾りたる     東京   島  織布
長靴で均す仕上げや苗木植う     東京   島谷 高水
どの里も雪解雫の鰤街道       兵庫   清水佳壽美
雛の日を待つ子と飾る雛人形     東京   新谷 房子
ものの芽や与力同心住みし町     大阪   末永理恵子
春雷や泣かせて締める博多帯     静岡   杉本アツ子
北山の声の響きや杉を植う      東京   鈴木 淳子
うぐひすや片膝立てて小鉤留む    東京   鈴木てる緒
蟻出るや一から十を数へる子     東京   角 佐穂子
春の雪五重塔の高さかな       東京   瀬戸 紀恵
開閉にてこずる箪笥春寒し      神奈川  曽谷 晴子
息白し抱かるる猫も抱く人も     長野   高橋 初風
春光をがぶ吞みにする池の鯉     東京   高橋 透水
父書きし墓石の文字や冴返る     東京   武井まゆみ
英字紙の文字を模様に紙雛      東京   竹内 洋平
寒の雨少しこはれし夜の母      東京   多田 悦子
我が鋤や春の息吹を知りつくし    東京   田中 敬子
興亡の山河遥けし魞を挿す      東京   塚本 一夫
囀や街の目覚めを知る如く      東京   辻  隆夫
ハスキーな声がますます春の風邪   愛知   津田  卓
麦踏みの手にロザリオの修道女    東京   坪井 研治
歳月を幹のねぢれに古梅咲く     埼玉   戸矢 一斗
福笹のなほ枝振りのよきを選る    大阪   中島 凌雲
梅真白ひとり龍太の忌を修す     東京   中西 恒雄
雁風呂に焼べる潮木のしめりかな   東京   中野 智子
春野ゆくからだにためる鳥の声    東京   中村 孝哲
忘れ雪忘れたきこと重ねつつ     茨城   中村 湖童
浅蜊汁殻の光を重ねをり       東京   西原  舞
魚氷に上る俎上の鯉を思ひけり    神奈川  原田さがみ
春めくや猫の舐めをるにはたづみ   兵庫   播广 義春
百人の意気ぞ百畳凧あがる      東京   半田けい子
一献の御酒を薬と梅見かな      東京   保谷 政孝
灯台の見えゐて遠し風光る      東京   堀内 清瀬
ペン先の毛埃を取る余寒かな     埼玉   夲庄 康代
梅雨空のふと明るみし鳥の声     東京   松浦 宗克
鷹鳩と化して高みを今も恋ふ     東京   宮内 孝子
流し雛せめて日差しのある中を    神奈川  宮本起代子
雪渓のしじまへ軒のつらら伸ぶ    千葉   無聞  齋
素描消すパン屑払ひ春闌くる     東京   村上 文惠
故里は春の息吹の只中に       東京   村田 郁子
国境を幾重も越えて春の水      東京   村田 重子
三椏やじやんけんぽんのちよきばかり 千葉   森崎 森平
天神の冬芽に固く御籤結ふ      埼玉   森濱 直之
梅嬉し記念樹なればなほ嬉し     長野   守屋  明
春塵や岬めぐりのバスに独り     愛知   山口 輝久
破る子のをらぬ寂しさ春障子     東京   山元 正規
篠竹の川面光れる上り簗       神奈川  𠮷田千絵子
山茱萸の咲く頃いつも小糠雨     愛媛   脇  行雲
梅が香の届くところに絵馬を掛く   東京   渡辺 花穂








       








     







銀河集・綺羅星今月の秀句

伊藤伊那男

御神渡湖舟いづこも金縛り        山田  礁
今年は諏訪湖の御神渡があり、私も目撃することができた。気温の上下で氷の収縮と膨張が繰り返され、ついには亀裂に沿って氷がせり上る現象である。この記録は一三九七年(応永四年)からあり、気候の推移を知る上で貴重な資料である。さてこの句、湖面が結氷するので当然舟は動けなくなるのだが、それを「金縛り」と詠んだのが出色である。男神が女神を訪ねる儀式という神話伝説があることを思えば、この措辞が俄然力を得てくるのである。 


  

涅槃図の方舟めける混み具合       山下 美佐
涅槃図という仏教のものと、ノアの方舟という旧約聖書の物語を取り合わせたところがユニークである。方舟は、神が悪に満ちた世界を絶滅させようとして洪水を起こした時、ノアが神の恩恵を得て作った舟で、家族や各動物の一つがいずつ乗せて難を逃れ、アララト山に漂着したという話。その舟の混雑した様子が、涅槃図と似ている、というもので、発想が柔軟である。一種類ずつの動物がいるというところもいい。 


 魞を挿す近江八景やや濁し       橋野 幸彦
魞漁は琵琶湖の風物詩。春に挿し直したり、修繕をする。その湖底に挿すときに湖水を少し濁す、という。いやそれだけではなく、長い竹竿が傾いたりしていること自体が、近江八景そのものの風景を濁らせている、というのであろう。「やや濁し」の意味の広がりが眼目である。


平成の平城宮に咲くげんげ        森 羽久衣
近鉄奈良線が西大寺駅を過ぎると両側に平城宮跡が拡がる。近時朱雀門や大極殿が復元され、まさに青丹よしの往年の雰囲気を再現して楽しませてくれる。千数百年前の平城京と平成の世の平城京を重ね合わせたのがこの句の面白さである。時を経て同じくげんげが咲いているのだ。


  

切絵図に残る橋の名浅蜊飯        大澤 静子
江戸切絵図は当時の観光客用に刷られたものであろう。江戸から東京に名を変えて百五十年、ずい分変貌したのだが、捜せば今もかすかな痕跡を見つけることができる。切絵図と今の地図を重ね合わせると、地形はそれほどは変化していないのである。鉄骨に変ったが橋の名も、そして浅蜊飯も……。


啓蟄や何着も着る試着室        梶山かおり
「啓蟄」は二十四節季の一つで、太陽暦の今は三月六日頃。冬ごもりの虫がその頃にぞろぞろと穴から這い出してくるが、さて人間はというと衣装が変わるということになろうか。衣料品店の試着室で何着も着てみる。自然現象と人間の営みを描き分けた楽しさである。 


町工場の隅の三角苗木植う        小山 蓮子
立て混んだ下町の町工場の一角、建物の隅の取り残された三角の地形に苗木を植えたという。大工場などには無い庶民的風景である。「隅の三角」が物を言った句である。同時出句の<糸切歯丈夫な母の春炬燵>も面白い。春炬燵に入るのだからそれなりの老齢なのであろうが、糸切歯は丈夫で、縫物の手を休めない母親なのである。 


町会の分けてくれたる苗木植う       小泉 良子
自分の意志ではなく、町会が配ってくれた苗なのだが、取り敢えず植えてみる。その主体性の無さが何ともおかしいのである。「苗木植う」の題では類例を知らない発想の句であると思う。私も町会であったか、学校であったかが配ってくれた海棠を植えたことがあるが、その後近所の庭のどこにも海棠が咲いて、今も咲き続けているのを思い出す。染井吉野の桜も同様に植えたが、徐々に大きくなり、狭庭からはみ出すほどになったので切り倒した。 


 

寒鯉の遂に沈みて浮かばざる       谷川佐和子
兜太忌とこの日定めむ遅き春       畔柳 海村
骨太の名草の芽生れ兜太逝く       堀江 美州
兜太逝く秩父春山衿正す         松代 展枝
梅林つひに青鮫には遭へず        梶山かおり
ざっと拾ってみたが、金子兜太への追悼句が目立った。我々とは全く句風の違う俳人であったが、親しまれた人であったことが解る。ここ十年ほどを見ても多くの著名俳人を見送ったが、兜太が最も強烈な印象を残した、ということになろうか。


その他印象深かった句を次に

日本史はやつと明治に二月尽       渡辺 志水
浜風の通り道なる端居かな        沼田 有希
八重一重香は九重に夜の梅        中村 宗男
蛇穴を世相窺ふ程に出て         中村 貞代
鶴帰る兆しにたんと餌を撒きぬ      白濱 武子
船笛の坂のぼりくる雛納         坂口 晴子
春ショール花結びにもしてみむと     我部 敬子

















               

 



 
星雲集作品抄
伊藤伊那男・選

秀逸

捨て榾に耳そば立てて春子かな    東京   大住 光汪 
曲がる時力をためる春の川      神奈川  中野 堯司
山小屋に昇りつめたる目刺かな    神奈川  有賀  理
燃殻に杉の香残しお松明       大阪   辻本 理恵
春の雪夫の逝きたる朝も斯く     広島   長谷川明子
入園や子の名を百は書き入るる    神奈川  星野かづよ
まつさらの頁を残し卒業す      東京   保田 貴子
三番の校歌覚えず卒業す       東京   山田  茜
天の岩戸なかなか開かぬ里神楽    埼玉   大木 邦絵
茶畑に雉の声聞く狭山かな      埼玉   志村  昌
風光る連絡船の水脈引きて      静岡   金井 硯児
ふらここや立ち漕ぎすれば大志湧く  神奈川  横山 渓泉
雲梯に靴は七色春の風        東京   矢野 安美
朱を残す憤怒の秘仏出開帳      埼玉   今村 昌史
幼子の一語一語や菫咲く       山形   我妻 一男
農小屋の眠りを覚ます初音かな    東京   須﨑 武雄
抜け殻のふくらみのまま春炬燵    群馬   佐藤かずえ
盆梅の百年分の香りかな       京都   三井 康有
東京の路線図を解く受験の子     静岡   山室 樹一

      




雲集作品集抄

            伊藤伊那男・選

立雛の海をみつめる窓辺かな     東京   秋田 正美
春嵐十六本傘で打つて出る      埼玉   秋津  結
吊橋に耳を澄ませば山笑ふ      神奈川  秋元 孝之
北へ行く始発電車や花曇       東京   浅見 雅江
結末を急ぐ貸本二月尽        東京   尼崎 沙羅
満面に春日受けたる傘寿の日     愛媛   安藤 向山
辛きこと明日への糧に黄水仙     東京   井川  敏
苗木植う終末時計進むとも      東京   生田  武
芹食めば妣の持薬の匂ひして     長野   池内とほる
二の腕を風に差し出す雛送り     東京   伊藤 真紀
大山の雨雲払ひ春一番        神奈川  伊藤やすを
風光る絵馬に願ひの志望校      高知   市原 黄梅
母の墓所側に一輪福寿草       愛媛   岩本 青山
つかの間の家族の揃ふ雛祭      東京   上村健太郎
神の国瑞穂の国や今朝の春      愛媛   内田 釣月
淡雪や人の想ひも解け行きぬ     長野   浦野 洋一
手から手へ繫ぐ蜜柑のバスの旅    静岡   大西 老林
春嵐換気扇鳴る台所         群馬   岡村妃呂子
大寒の人恐れざる街鴉        神奈川  小坂 誠子
連翹や水走ること走ること      京都   小沢 銈三
冬蠅の手摺り脚擦り遠筑波      埼玉   小野 岩雄
夜半の雨止みて目覚めの庭に春    静岡   小野 無道
望郷の地に家はなし畑を打つ     東京   釜萢 達夫
心得を部室に貼つて卒業す      神奈川  上條 雅代
雪の朝倒れ死の淵覗きたる      東京   亀田 正則
伊勢講の笑顔写真はセピア色     長野   唐沢 冬朱
初音聞く二度目を待つてしばしかな  神奈川  河村  啓
海潮音藁に刺されし目刺買ひ     長野   神林三喜雄
けぶる雨駒鳥の声うるませり     愛知   北浦 正弘
ひたむきに地球を突つく雀の子    神奈川  北爪 鳥閑
奥座敷きりり佇む内裏雛       東京   北出 靖彦
追伸に本音のひらり春めける     東京   北原美枝子
子の嫁ぎ段を飾らぬ内裏雛      東京   絹田  稜
北窓を開き会釈の日和かな      東京   久保園和美
春炬燵より失せ物の現るる      東京   倉橋  茂
浅間嶺も連なる嶺も斑雪かな     群馬   黒岩伊知朗
恋猫のいつしか去りて雨の音     愛知   黒岩 宏行
日もすがら凍返る風兜太逝く     東京   黒田イツ子
衛士の背に宮家名付けの椿落つ    神奈川  小池 天牛  
山間に頭下げての竹の秋       群馬   小林 尊子
リラの花散り敷く巴里の石畳     東京   小林 美樹
眉根濃く復興誓ふ卒業子       宮城   齊藤 克之
孫の手が背中で動く春隣       神奈川  阪井 忠太
花好きの母の鼻歌菊根分       長野   桜井美津江
緋毛氈うぐひす餅の幟立つ      東京   佐々木終吉
仄暗き御簾の巻きある御開帳     群馬   佐藤 栄子
満面の笑みで這ひ這ひ風光る     群馬   佐藤さゆり
放課後の廊下のひかり日脚伸ぶ    東京   島谷  操
春めくや波うつ髪をまとめ上ぐ    東京   清水美保子
嫁ぐ子に想ひめぐらす上巳の日    東京   上巳  浩
雉潜む丈十分に足りぬ藪       千葉   白井 飛露
飽きもせで磯巾着を突く吾が児    神奈川  白井八十八
序列ある如く庭訪ふ春の鳥      群馬   鈴木踏青子
恋猫の音階変へてねばりつく     愛知   住山 春人
枕木のまるで鍵盤雪残る       千葉   園部あづき
早世の文士の墓標春の雪       埼玉   園部 恵夏
ふと自信失ひし日の余寒かな     東京   田岡美也子
四国地図家で旅する遍路かな     東京   髙城 愉楽
震災忌この子春には二年生      福島   髙橋 双葉
雛段に飾りし母の裁縫具       埼玉   武井 康弘
ことば過ぎ眠れぬ夜や沈丁花     広島   竹本 治美
石一つ飛ばして終はる猫の恋     三重   竹本 吉弘
老漁夫の手甲濡らして魞を挿す    神奈川  田嶋 壺中
苗木市目利きの母の手を引きて    東京   立﨑ひかり
一振りの鍬の重さや春の土      東京   田中  道
ほろ苦き悔いもありけり蕗の薹    神奈川  多丸 朝子
梅園の色整ひし多摩の丘       東京   田家 正好
離れゆく時は一息流し雛       東京   辻本 芙紗
鶯をみつけて鳴くを隠れ待つ     東京   手嶋 惠子
春の浜広き歩幅と犬の跡       東京   豊田 知子
暗闇を切り裂きし声猫の恋      神奈川  長濱 泰子
水温む井戸端会議たうたうと     大阪   永山 憂仔
一人寝の淋しさ倍の余寒かな     神奈川  萩野 清司
大切なものは小さく菫草       埼玉   萩原 陽里
ジキルからハイドになりぬ春の猫   東京   橋本  泰
雛壇を飾る頼りの母の文字      東京   長谷川千何子
春一番唐松林身悶えす        長野   蜂谷  敦
荒畑も雨に静まり建国日       神奈川  花上 佐都
校章に校歌にも梅梅が里       長野   馬場みち子
三椏や規則どほりにのびやかに    千葉   平山 凜語
手術待つ朝の窓から春の富士     千葉   深澤 淡悠
吾が星の影寒月と重なれり      東京   福田  泉
ただ走る嬉しき音の風車       東京   福永 新祇
集ひ来し鳥は影絵に春障子      東京   福原 紀子
春陰や閂硬き阿弥陀堂        東京   星野 淑子
海苔障子片す入り日の瀬戸の海    神奈川  堀  英一
足音に寄り来る鯉や寒明くる     東京   牧野 睦子
春連れて黒潮沖に城ヶ島       神奈川  松尾 守人
この町の猫の数だけ猫の恋      愛知   松下美代子
暫くは見とれるばかり雪解川     東京   八木 八龍
あぢさゐややうやく移る雨の色    東京   家治 祥夫
歩く人立ち止まりゐて揚雲雀     群馬   山﨑ちづ子
それぞれに名があり紅と白き梅    神奈川  山田 丹晴
制服の胸の名札に風光る       高知   山本 吉兆
雪原を獲物つかみて鳶が行く     群馬   横沢 宇内
初花をはなむけとなし故郷出づ    神奈川  横地 三旦
絵手紙に帰国の報せ鰆東風      神奈川  渡邊 憲二
玄関に散らばる子らの春の靴     東京   渡辺 誠子
巣立鳥ここを先途と崖滑る      東京   渡辺 文子







         












     





星雲集 今月の秀句

伊藤伊那男

捨て榾に耳そば立てて春子かな      大住 光汪
私ごとだが秩父を歩き廻っていた頃、札所を繫ぐ道端の捨て榾からびっくりするほど大きな春子が育っているのを見つけ、宿に持ち込んで焼いたことがある。大きくとも味が劣るわけではない。商品にならないだけである。椎茸は秋の季語だが、春にもよく育つので春椎茸を春子と呼ぶ。おまけのような感じもあるので「捨て榾」が合うのであろう。「耳そば立てて」は類想が無いとはいえないが、上々の出来映え。同時出句の〈水取の闇うら返す大火の粉〉は、闇を「うら返す」とした措辞に感性の鋭さが垣間見られる。 


山小屋に昇りつめたる目刺かな      有賀  理
えっ、と意表を突かれた句である。目刺が山小屋に?だが川を遡上したわけではない。山小屋の保存食料として強力に運ばれてきたのである。こうした発想はなかなか出てくるものではない。類想を全く感じさせない句を目にすることは嬉しいものだ。同時出句の〈嚙み合はぬ父子の会話春炬燵〉にはそこはかとない哀感が出ている。 


燃殻に杉の香残しお松明         辻本 理恵
温もりの近づいて来るお松明         〃
他にも〈火の粉落つ響動めきの果て修二会の夜〉〈闇の中修二会の灰を頬に受く〉があり、東大寺のお水取りの行事を丁寧に詠んでいることに好感を持つ。燃え落ちた松明の杉は縁起がよいとのことで、拾っていく人が多い。「杉の香残し」まで喰い込んだ表現がいい。二句目は走り廻る大松明のその火勢を「温もりの近づいて」とおおらかに捉えたところが眼目であろう。一つの行事、祭事に執念を持って取り組むのが俳句上達の秘訣である。 


入園や子の名を百は書き入るる      星野かづよ
 子育ての頃、そんな場面があったような気がする。衣類全部、弁当や箸箱‥‥それを「子の名を百は」と大きく纏めたところにほのかなユーモアも滲む。同時出句の〈主役の手届かぬやうに雛飾る〉には、何にでも触りたがる子供の様子がよく解る。秀逸であった。


まつさらの頁を残し卒業す        保田 貴子
 「まつさらの頁」には、①単に使っていないノートの頁、という意味だけではなく、②やり残したことがあることへの後悔、③まだ形にならない未来への夢‥‥などの青春の欠片が混在しているのであろう。自分にもそんな時代があったな‥‥と思う。同時出句の〈消しゴムで消しきれぬこと多き春〉はより具体的な青春の痕跡ということになろうか。


三番の校歌覚えず卒業す         山田  茜
ああっそうそう、と思う。私もそんな風であった。多分ほとんどの人がそうなのであろうが、俳句には詠めなかった‥‥と思う。そうした盲点を突いた句であった。同時出句の〈雛飾るわづかばかりの畳の間〉もいい。私の今住んでいる家にはもはや畳というものが無いのだ。「わづかばかりの畳の間」に今日的な住宅事情が捉えられている。


茶畑に雉の声聞く狭山かな        志村  昌
狭山は武蔵野台地の丘陵地帯で、茶の栽培は鎌倉時代に遡るという。関東ローム層の下に砂礫層が走り、水はけのよい土壌である。「雉の声聞く」に刈り込まれた茶畑のうねりが目に浮かぶようである。豊かな風景だ。 


ふらここや立ち漕ぎすれば大志湧く    横山 渓泉  
上五、中七まで読んで、さてどうなるかな、と思うと「大志湧く」と収めたところが何とも面白い。大志はそれ位のことで湧くとは思われないが、目の高さが上になったことで気宇壮大な気分になったのであろうか。ぶらんこを降りたら終ってしまう大志であるかもしれないが‥‥。 


雲梯に靴は七色春の風          矢野 安美
「雲梯」はそもそも城攻めに用いた長いはしごのことであったらしいが、今は遊戯施設のひとつ。金属製の梯子に懸垂して渡っていくものをいう。ぶらさがった子供達が様々な靴を履いている。土を踏んでいるときには気付かなかったのに、ぶらさがっていることによってそのカラフルな色彩に驚かされたのである。 

  

その他印象深かった句を次に。
曲がる時力をためる春の川        中野 堯司
春の雪夫の逝きたる朝も斯く       長谷川明子
天の岩戸なかなか開かぬ里神楽      大木 邦絵
風光る連絡船の水脈引きて        金井 硯児
朱を残す憤怒の秘仏出開帳        今村 昌史
幼子の一語一語や菫咲く         我妻 一男
農小屋の眠りを覚ます初音かな      須﨑 武雄
抜け殻のふくらみのまま春炬燵      佐藤かずえ
盆梅の百年分の香りかな         三井 康有
東京の路線図を解く受験の子       山室 樹一


















伊那男俳句  


自句自解(30)
          
 
中年や西瓜かついでよろめけり

 中年とは何歳位を言うのであろうか。広辞苑を開くと「青年と老年の中間の年頃。40歳前後の頃。壮年」とある。が、平均寿命の伸び方などから見ると今は10歳位底上げをして50歳位まではその範疇とみてよかろう。この句は平成7年の句なので私は46歳。中年真只中である。その少し前に大腸癌の手術をしたり、経営していた会社が壊滅的な状況に陥ったりと「中年の苦悩」を実感していた頃である。もちろん40代から始めた月2回ほどの登山は続けており、健脚であった。つまり体力ということよりも気力の問題として「よろめけり」が口をついて出たのだと思う。鈴木真砂女が90歳位で蛇笏賞を受賞したが、その挨拶で壇上に登るとき、少しよろけた。すかさず「昔は男によろめいたけれど……」と笑わせた。この話を聞いたのはこの句よりずっと後年のことである。さて、ここまで書いたところで「や」「けり」があることに気付いた。誰からも指摘されたことは無かった!
  
にはとりの迷ひ込みたる踊の輪

 高野素十に〈おづおづと来て踊子にささやける〉があるが、『現代俳句』の中で山本健吉は、当初日本の風景として鑑賞していたのだが、後に素十外遊中の一景であると知ったとして、次のように書く。「ではこの句からわれわれが日本の盆踊り風景を想い描くのは誤りであろうか。私はそうは思わない。作者自身が季語として〝踊子〟を使っている以上、盆踊りの句として鑑賞されることを期待しているのである。(中略)鑑賞の対象は飽くまでも作品であって背後の事実ではない。作品はその背後の経験よりも、いちだん高い次元に結晶されたものである。写生とは決して事実を尊重するということではないはずだ」――と結んでいる。さて私の句、実はニューギニア旅行での嘱目である。鄙びた集落で身体に泥を塗り付けた男たちが武器を持って踊るショーを見物したが、同じ広場に鶏も走り廻っていたのであった。ただし前の鑑賞のように日本の一景として鑑賞して戴くのがいい。
    
 
















  
   


 



銀漢の絵はがき


挿絵が絵葉書になりました。
Aシリーズ 8枚組・Bシリーズ8枚組
8枚一組 1,000円

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掲示板






















 
             

銀漢亭日録

伊藤伊那男

3月

3月27日(火)
「萩句会」へ選句。発行所、中村湖童さんの「童夢句会」あと7人。小川洋さん。

 3月28日(水)
桜散り始める。店、雛句会」12人。私の句稿、第二句集あと7年分を四、五百句位に絞り込む。これから精査へ。

 3月29日(木)
Oh! 花見句会」の賞品の染筆。「本の街」へ句。同人評。「俳壇」寄稿文の校正など雑用をこなす。桜並木は落花の中。駅前の山桜がいい。店「秋麗」の藤田直子主宰他7人、内、伊藤文明さんは伊那北高校の先輩。池田のりをさん、慶大時代の友人3人。安藤さんは伊那北高校の先輩。

 3月30日(金)
慶應茶道会先輩の八田さん4人。青柳飛さんロスから帰国。日経新聞丸田光一さん3人。丸田さんは伊那北高校後輩。月野ぽぽなさんの近所の育ち。「白熱句会」檜山哲彦、藤田直子、井上弘美、木暮陶句郎、佐怒賀正美さん。いずれも私と同時期に主宰になった仲間の3ヶ月に一度の句会。発行所「金星句会」あと5人店へ。

  3月31日(土)
「信濃俳句通信」佐藤文子さんより創刊400号への祝句依頼あり。〈信濃の子まづ及第の通信簿〉昼前、入店し、仕込み。13時半、恒例の「Oh! 花見句会」。Oh! 句会は、年4回あり、朽木直さんが幹事。直さんの綿密な連絡で超結社47名集合。店は俳人で溢れる。持ち寄り5句の句会あと、席題3句の句会。さすがに、人数多く、2回の句会で19時過ぎ。

4月

 4月1日(日)
快晴。もう葉桜に。13時、中野サンプラザにて「春耕同人句会」。3ヶ月振りに出席。終わってすぐ溝ノ口へ。孫の亮介君の参加するダンス教室「アイビィーカンパニー」の公演へ。あと成城の牛角で家族で打上げ。

4月2日(月)
彗星集の選評を書いて5月号原稿終了。店、「かさゝぎ俳句勉強会」あと9人。ほか閑散。帰路、寝過ごして隣の駅まで。終電待ち30分あり、タクシーを拾おうと外に出るが1台も無し。牛丼屋があったので食べてしまう。

4月3(火)
15時、「俳句αあるふぁ」中島三紀編集長、カメラマンの武市さん、デザイナーの西郷さん来店し、連載の料理撮影会。5品ほど作る。あと試食会。広渡敬雄さん九州大学時代の仲間5人。発行所は事業部の「銀漢俳句会京都吟行」運営打ち合わせ。あと店へ。日経新聞の丸田さん(伊那北後輩)、俳人協会事務局の方々。お花見の帰りとて能村研三理事長以下、7名ほどで寄って下さる。

4月4日(水)
らぎ句会」あと7人。「宙句会」あと14人。パリ在住の伊藤惠子さん参加。店、ロサンゼルス在住の青柳飛さん。

4月5日(木)
飯田眞理子、飯田子貢さんの句集稿第一回目の選句終わる。店「十六夜句会」あと13人。皆川文弘さんと部下。全体閑散。帰路、今度は登戸まで寝過ごす。電車の遅れもあり、結局、小1時間のロス。トホホ……。

4月6日(金)
大倉句会」あと24人。佐怒賀正美「秋」主宰、佐怒賀直美「橘」主宰の兄弟。大王製紙、田中役員など。

4月7日(土)
8時、新宿駅西口集合。志村昌さんの車で甲州へ向かう。もう一台は小野寺清人さんの車で計12人。中央道釈迦堂サービスエリアで休憩し、釈迦堂遺跡博物館を見学。おびたたしい発掘品。周辺は桃の花の中。南アルプスの残雪を眺望。11時、境川村の山廬訪問。飯田秀實、多恵子夫人の出迎えを受ける。蛇笏、龍太の書斎などを拝見したあと、取り寄せていただいたお弁当の昼食。奥様手製の野蒜の天麩羅、田芹のおひたし。独活のマヨネーズ和えなどに感激! あと、秀實さんに後山を案内して戴く。丁度、今日から咲いたという山桜の巨木が見事。大欅の芽吹きも。14時過ぎから俳諧堂をお借りして五句出し句会。白根三山が美しい。16時にお別れして、山中湖、志村さんのブティック社の山荘へ向かう。途中のスーパーマーケットにて食料調達。清人さん持参の海鞘、鮪のづけ、牡蠣の蒸し焼き。私のからすみ大根。鮪のアボカド和え、その他で宴会。ひと眠りして戻ると狂乱の宴会は続いている……。

4月8日(日)
6時起き、快晴。目の前に富士山が! 風呂。朝食は味噌汁、独活炒め。山廬の奥様が裏庭に丁度出たという筍を三本茹でて木の芽を添えて持たせて下さったものを煮る。こごみ和え。……というような豪華版朝食。9時、出句で10句出し句会。富士の裾野の山焼きがあるというので、見物に。山名湖を挟んだ絶景スポットから野焼きを遠望する。富安風生の「俳句の館 風生庵」も見学して山荘に戻り、焼きそばの昼食。野焼きの題で一句出し句会。15時過ぎ、出発し、渋滞の中、19時頃、新宿まで送っていただく。何とも充実した旅。

 4月9日(月)
山廬に礼状と賛助会員会費納入。店、『伊那の放浪俳人井月現る』の今泉恂之介さん、北村皆雄監督。平沢さん、秋の井月俳句大会の打ち合わせ。今年は今泉氏に講師を依頼。店、超閑散。

4月10日(火)
「火の会」12人。久々、齋藤朝比古、卓田謙一さん参加。山崎祐子、山田真砂年さん、「復興いわき 海の俳句全国大会」の打ち合わせ。青柳飛さん明日、ロサンゼルスへ帰ると。

 4月11日(水)
京都のWさんから西ノ京の筍。別に、成城の仲間から、筍が来たが料理できないからと。何と、京かねの超高級品。店、阪西敦子さん他、句会の後の方々。三笠書房押鐘会長他。

4月12日(木)
「極句会」あと14人ほど。洋酔さんゲストで。

 4月13日(金)
橋野幸彦さん、友人と。若手の安里琉太君。あと超閑散21時半に閉める。

4月14日(土)
10時、運営委員会。11時から北辰社取締役会。13時、ひまわり館にて「銀漢本部句会」、56人。あと中華料理店にて親睦会。

 4月15日(日)
句稿まとめ、堀切克洋さんの句稿点検。13時半、下北沢駅。杉阪、谷口さんと待ち合わせ。「下北沢ザ・スズナリ」にて、田岡美也子さん出演の「妄想先生」を見る。あと杉阪さんに私の句集稿のチェックや意見を貰う。あと田岡、谷口さんと合流し、酒宴、2軒……。

4月16日(月)
午前中、句集稿点検。地名句、自己類型の排除など四時間ほど集中する。店、「演劇人句会」7人。閑散。

4月17日(火)
堀切克洋君の句集稿点検。店、「天為俳句会」編集部の親睦会6人。金融会社時代の堀川オーナーを囲む会。当時の財務部長の神村さん、旧長銀のKさん、旧興銀のKさん、旧三和銀行のWさん。オーナーには、400億円出資して貰い、返せなかった……。「江戸城天守を再建する会」の秋山さん、森本さん(元三菱地所専務)、会の事務所が隣近所。

4月18日(水)
藤森荘吉さん「閏句会」例会7人。伊那北高校同期「三水会」6人。「大倉句会」の清水ドクター。山梨出身とて、山梨市で開業していた伯父、加々美正彦のことを話したら知っている!   と。

 4月19日(木)
伊東岬さん、畑で作った野菜沢山(のらぼう、あさつき、キャベツ、あしたば)「銀漢句会」あと17人。

4月20日(金)
12時半より品川のグランドプリンスホテル高輪の宴会場にて、大牧広先生の「港」創刊30周年祝賀会。300人近い大パーティー。16時、店に戻る。発行所は「蔦句会」あり、終わって6人店へ。環順子さん3人、結社「パティオ俳句会」創刊と。奥の席、吉野の桜を見に行った女性4人の10句出し句会。

 4月21日(土)
10時、大久保の俳人協会4階。第57回全国俳句大会事前投句の予選室。横澤放川、小島健、藤本美和子さん、昼、小島健さんと海老フライ定食。あと16時まで選句。18時、成城仲間のレマちゃん来て、お好み焼きパーティー。レマちゃんは大阪出身。ヘンケル日本代理店の令嬢。お好み焼きの伝授を受ける。 

 4月22日(日)
国領の竹林の筍の会だが、私は雑事多く、不参加。持ち寄り料理として鯛のカルパッチョ、蓮根のキンピラなど作り、娘に持たせる。莉子はスキー合宿へ。宮澤は日光の撮影へ。終日家。

4月23日(月)
事業部、「銀漢俳句会京都吟行」の打ち合わせ。参加者60人超。編集部5月号発送。店、池田のりを、小川洋、伊達さん(週刊金曜日)など。事業部の面々も。

 4月24日(火)
午前中、俳人協会。全国俳句大会の予選作業。松川洋酔さんの洋酔塾が終会し、新たに銀漢俳句会の「ひまわり句会」として発足。第1回目の句会あと店へ12人。

 4月25日(水)
店「雛句会」13人。

4月26日(木)
「俳句αあるふぁ」夏号へ「一句一菜」送る。今回の料理はアボカドと鮪のマヨネーズ和え、ガーリックスライスの茸ソースかけ。砂肝の黒胡椒炒め。店、法政大学高柳先生3人。1人は前にも来て下さったドミニカ共和国駐在大使の牧内博幸氏。外は閑散。

 4月27日(金)
店、「炎環」の三 初子さん、「ひよこ句会」1周年とて石寒太主宰を招いての記念句会。9人。「金星句会」あと7人。

4月28日(土)
ヘアメイクの中川さん来てくれてカット。日本橋「鮨の与志喜」にて「纏句会」14人。蛍烏賊と独活の酢味噌和え。焼き蛤、桜蝦の天麩羅(今日の題)。イサキの塩焼、あと握り。酒は出羽桜の泉十段。夜、久々に家族で食事。ビーフステーキ。蕗煮、若布と胡瓜の酢物。独活の皮のキンピラ、独活のマヨネーズ和え(山梨、飯田家の奥様が出してくれたものを思い出して)など。

 4月29日(日)
終日、句集稿整理。夕食、新玉葱のサラダ。鶏のニンニク醤油焼き。油揚げ焼など。

 4月30日(月)
振替休日。句稿整理。構成が難しい。午後、杏一家来てお好み焼きパーティー。莉子の高一の友人4人も前日から泊まりがけで来ており、大人数。加えてお好み焼きを伝授してくれたレマちゃんにもう一度、正確なレシピを教えてもらおうと声を掛けて一家で来て貰ったので結局19人のパーティーとなる。

5月

 5月1日(火)
店、休みとする。11時、熱海駅に、唐沢静男、金井硯児さんの出迎えを受け、唐沢家へ。1年振りの訪問。洋子さんも元気、鯖、丸烏賊などの刺身、魴鮄、目刺、鯵などの干物、くさや、育てた野菜などの料理をいただく。酒は「磯自慢」。途中、寝てしまう。18時頃に辞去。酔っぱらったがともかく帰宅。









         
    






今月の季節の写真/花の歳時記



2018年6月24日撮影   ブッドレア   TOKYO/HACHIOJI




花言葉  
魅力・深い信仰心・あなたを慕う・私を忘れないで・恋の予感

 △ブッドレア
ブッドレアの別名(和名)は、ニシキフジウツギ(錦藤空木)・フサフジウツギ(房藤空木)です。ブッドレアの英名はバタフライブッシュ(Butterfly bush)・サマーライラック(Summer lilac)です。バタフライブッシュという名前は、甘い香りと豊富な蜜で蝶を呼び寄せることにちなんでいます。

ニゲラ 虞美人草 早苗 田植え 花菖蒲  
 
茅萱・チガヤ 凌霄花 ブッドレア  
写真は4~5日間隔で掲載しています。 
2018/6/25   更新


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