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7月号 2024年
伊藤伊那男作品 銀漢今月の目次 銀漢の俳句 盤水俳句・今月の一句 彗星集作品抄 彗星集選評 銀河集・作品抄 綺羅星集・作品抄 銀河集・綺羅星今月の秀句 星雲集・作品抄 星雲集・今月の秀句 伊那男俳句 銀漢の絵はがき 掲示板 主宰日録 今月の写真 俳人協会四賞受賞式 銀漢季語別俳句集 |
伊藤伊那男作品主宰の8句 今月の目次銀漢俳句会/2024/7月号
盤水俳句・今月の一句伊藤伊那男蕗を煮て天宥讃ふ羽黒人 皆川 盤水
彗星集作品抄伊藤伊那男・選 雛の間に参議篁おはさぬか 中島 凌雲
小綬鶏に呼ばれ望郷募りけり 星野 淑子 鉄棒に届かぬ両手入学児 保田 貴子 桜えび髭を零して干し上がる 小野寺清人 花守の花の盛りは寝ねにけり 加藤 且之 小夜更けて枕そばだつ遠雪崩 佐藤 栄子 寄り道を早も覚えて新入生 今井 麦 花冷や職員一人の観光課 清水 史恵 火の島の火種の如し島椿 山元 正規 山門に葷酒を入れて花見客 大田 勝行 あかがねの濡れて飴色甘茶仏 萩原 陽里 寝入りたるらし風船が天井へ 谷岡 健彦 桜湯や長き見合ひの席に咲く 大田 勝行 逃水やタケルの旅の果てしなき 中村 湖童 問診の短き春の風邪ならば 森濱 直之 春炬燵忘れ上手に聞き上手 福原 紅 聖霊会ならば鳴くらむ亀石も 中島 凌雲 花種のスパイスほどを振つて蒔く 清水 史恵 薄絹の池面となりて花筏 武田 花果 後三年てふ役の名の駅花ふぶき 大溝 妙子 梳る松葉のやはく朧月 小林 美樹
銀河集作品抄伊藤伊那男・選綿津見の吐く陽気かと蜃気楼 東京 飯田眞理子
北開き淡き光をアトリエに 静岡 唐沢 静男 湖にせり出してゐるさくらかな 群馬 柴山つぐ子 鳥帰る旅の帰りの旅心 東京 杉阪 大和 もろ鳥もそはかそはかと花の寺 東京 武田 花果 花の尾根越せばまた花西行忌 東京 武田 禪次 狛犬にひと色あづけ風船売 埼玉 多田 美記 いま木戸を開けてゆきしが春一番 東京 谷岡 健彦 幾筋の水尾の乱れや比良八荒 神奈川 谷口いづみ 魚鼓打てど応へなき庫裏竜の玉 長野 萩原 空木 これよりは電波届かず山笑ふ 東京 堀切 克洋 祠からどつと噴き出す蚊食鳥 東京 松川 洋酔 春の雪国栖に高まる笛の音 東京 三代川次郎 綺羅星集作品抄伊藤伊那男・選 剪定や一音あれば一枝飛ぶ 埼玉 中村 宗男
首伸ばす亀のおくびや鳴けるかに 茨城 中村 湖童 巡り見る同じ桜や栄螺堂 東京 橋野 幸彦 眼力の二人の美智子昭和の日 神奈川 白井八十八 花散るや余韻の長き芝の鐘 東京 白濱 武子 貼り立てと違ふ明るさ春障子 東京 鈴木てる緒 紫宸殿てふ大いなる雛の間 大阪 中島 凌雲 宙からの地球はかくや石鹼玉 岐阜 堀江 美州 同じ夢見んとて分かつ花の種 埼玉 伊藤 庄平 まなざしがもう飛んでゐる巣立鳥 愛知 荻野ゆ佑子 朝寝せば短くなりし余生かな 東京 柊原 洋征 老いたれば苦もなく朝寝したりけり 東京 畔柳 海村 こらへ降る雨の大粒涅槃寺 東京 小山 蓮子 山笑ふ恐竜の棲むおもちや箱 青森 榊 せい子 白といふ終に着るいろ大牡丹 長崎 坂口 晴子 しんがりは蛇尾の如くにメーデー来 長野 坂下 昭 囀のどこか雅に冷泉家 兵庫 清水佳壽美 踏台の置いてありたる花御堂 東京 清水 史恵 散りたれば花の話を誰もせず 大阪 末永理恵子 春炬燵無為てふ疲れあるを知る 群馬 鈴木踏青子 古里の畳の匂ふ朝寝かな 東京 田家 正好 ざらざらにしてあたたかし猫の舌 広島 長谷川明子 あるがままを水に一生ヒヤシンス 東京 矢野 安美 妹は面倒なやつ八重桜 東京 飛鳥 蘭 初蝶や洗ふ野良着の解れ糸 東京 有澤 志峯 熊蜂の花粉まみれの花の揺れ 神奈川 有賀 理 脱落といふ生き方も残る鴨 東京 飯田 子貢 たも網の乾き切りたる日永かな 山形 生田 武 外に出よか家に居よかと花曇 埼玉 池田 桐人 恐れ多くも円墳の青き踏む 東京 市川 蘆舟 挨拶は花の遅速や桜時 東京 伊藤 政 浦風を巻きとつてゐる春キャベツ 神奈川 伊東 岬 三椏咲く律儀に三枝重ねつつ 東京 今井 麦 山の湯の効き目の板書呼子鳥 埼玉 今村 昌史 春の塵拭ひ去りたきこと数多 東京 上田 裕 源流は神棲むところ座禅草 東京 宇志やまと 引揚げし日のはるかなり黄砂降る 埼玉 大澤 静子 地球儀を廻せば散れるつちぐもり 神奈川 大田 勝行 吹かれをり摘まるる草も摘む吾も 東京 大沼まり子 魚追ふ少年にごりなき五月 神奈川 大野 里詩 魚島の鯛の膨らみ御食国 埼玉 大野田井蛙 福島・夜の森 かくも咲きかくもさみしき桜かな 東京 大溝 妙子 窓硝子軋ませ磨くよなぐもり 東京 大山かげもと 春愁のかたまりとして泣き黒子 東京 岡城ひとみ 落下するやうに飛び立ち巣立鳥 宮城 小田島 渚 目覚めよと二月の風の叩く海 宮城 小野寺一砂 目の揃ふ杉の割箸木の芽和 埼玉 小野寺清人 まんさくや血筋を今も峡に生き 和歌山 笠原 祐子 丸まつて尻尾とあそぶ子猫かな 東京 梶山かおり 鯉の尾の振れ幅広くうららけし 愛媛 片山 一行 永き日や整理のつかぬ古写真 静岡 金井 硯児 春袷色を違へて三姉妹 東京 我部 敬子 湖に点睛として残る鴨 東京 川島秋葉男 斑鳩の旅寝を囃す蛙かな 千葉 川島 紬 六道の辻にふるまふ甘茶かな 神奈川 河村 啓 雨の中湖畔とよもす初音かな 愛知 北浦 正弘 春日遅々と渡り廊下のながさかな 長野 北澤 一伯 緞帳の校章へ向け卒業歌 東京 絹田 稜 釣銭の合はぬ自販機四月馬鹿 東京 朽木 直 鴉の巣あやぶまれつつ仕上がれり 東京 小泉 良子 次の子を待つふらここの静けさよ 神奈川 こしだまほ 幼子の息かたち成すしやぼん玉 東京 小林 美樹 匙うらに来し方映す春の虹 千葉 小森みゆき 地の火照り浅蜊吐き出す世の憂ひ 宮城 齊藤 克之 浅間嶺は村の目印春動く 群馬 佐藤 栄子 犬ふぐり青き耳輪の欲しかりき 群馬 佐藤かずえ 暮れぎはのはくれん闇を深くして 長野 三溝 恵子 時計屋に鳩時計鳴る日永かな 広島 塩田佐喜子 南口も北口もみな花人に 東京 島 織布 来し方を一つづつ打つ遍路杖 東京 島谷 高水 花曇軽きめまひを覚えたり 東京 清水美保子 顔だけの上野大仏風車 埼玉 志村 昌 奥様と呼ばれたくつて春日傘 千葉 白井 飛露 雛人形未だ留め置きて老住まひ 東京 新谷 房子 目覚しに空返事する朝寝かな 東京 鈴木 淳子 一夜雨牡丹深紅の芽をほどく 東京 角 佐穂子 春暑し力士の雪駄ぺつたんこ 千葉 園部あづき 春霞さらつてゆきし待ち人を 神奈川 曽谷 晴子 埋蔵金あるやなしやの山笑ふ 長野 髙橋 初風 念仏に緩みてゆけり蝌蚪の紐 東京 高橋 透水 花冷や帯に潜めし銀時計 東京 武井まゆみ 人形の両の眼の朧なる 東京 竹内 洋平 総身で受くる卒園証書かな 東京 多田 悦子 遠目にも木蓮ひかり放ちをり 東京 立崎ひかり 藍蒔く日空の青きの澄むが良し 東京 田中 敬子 夏近しロダンの像の力瘤 東京 田中 道 ソ連邦残る地球儀鳥雲に 東京 塚本 一夫 またひとつ年を経て聴く卒業歌 東京 辻 隆夫 棒鱈に鋸で立ち向かひたり ムンバイ 辻本 芙紗 首に解き鞄に結ぶ春ショール 東京 辻本 理恵 断層は地球の記憶鳥雲に 愛知 津田 卓 ふるさとはとほきにありて犀星忌 東京 坪井 研治 だいたいの時刻で帰る日永かな 埼玉 戸矢 一斗 春愁の指を栞に賢治の詩 千葉 長井 哲 少年の目はまつすぐに風光る 東京 中込 精二 耕の本家と分家畦隔て 神奈川 中野 堯司 人はみな故山捨てたり啄木忌 東京 中野 智子 辞書になき孤咳の言葉放哉忌 東京 中村 孝哲 門前に潮の匂や若布売 東京 中村 藍人 硬券の角にありたる花の冷 長野 中山 中 去年の巣に燕今年の泥加ふ 千葉 中山 桐里 百八の数珠玉の艶涅槃西風 大阪 西田 鏡子 味噌汁の貝を漁る花曇 埼玉 萩原 陽里 神酒賜ばる社日色ふる花手水 兵庫 播广 義春 晩年にも反骨少し松の芯 埼玉 半田けい子 履き慣れし靴こそよけれ春の土 埼玉 深津 博 住職は南国生れ夏蜜柑 東京 福永 新祇 飽食の果ては夕餉の目刺かな 東京 福原 紅 たんぽぽの絮吹く息を三度足し 東京 星野 淑子 花筵四隅の石を結界に 埼玉 本庄 康代 雨後の路地物の芽区別出来るほど 東京 松浦 宗克 風の子が空のぶらんこ漕いでゐる 東京 松代 展枝 洛北の谷ひとつ越え涅槃寺 神奈川 三井 康有 弁当を作らぬ朝や鳥巣立つ 神奈川 宮本起代子 波の音風の音背に栄螺売る 東京 村田 郁子 鎌倉に夜来の雨や山ざくら 東京 村田 重子 家系図を辿れば魚涅槃西風 東京 森 羽久衣 残花なほ闇深めたり蔵王堂 千葉 森崎 森平 山彦の声に艶あり山笑ふ 埼玉 森濱 直之 花びらに重さいろいろ飛花落花 長野 守屋 明 鳩時計扉の中の目借時 東京 保田 貴子 生者死者こもごも来る目借時 愛知 山口 輝久 巣箱てふ優しき闇のありにけり 群馬 山﨑ちづ子 雪代の木曾三川を溢れしむ 東京 山下 美佐 桜鯛糶の値高く跳ね上げて 東京 山田 茜 空に立つ細波に似て辛夷咲く 東京 山元 正規 山笑ふ二個目ほほばる目張りずし 東京 渡辺 花穂 奪衣婆の手ぐすねをひく余寒かな 埼玉 渡辺 志水
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剪定鋏はなかなか威力のあるもので、これも知恵の集積で、かなりの太さの枝も切り落す。一つの音があれば一枝が落ちる。違う意味を持つ「一」の字を重ねた韻律のうまさが手柄である。目を瞑っていても情景が解るのだ。 |
実際には鳴かないのに、鳴くと断言する「亀鳴く」は俳諧という「おかしみ」を象徴する季語である。この句は「鳴く」とは断定していない。「鳴けるかに」と疑問形にとどめているのだが、この慎ましさもまた味わいである。 |
私の知る栄螺堂は会津にある。栄螺の殻のように螺旋状をしていて同じ通路を通らずに上り下りができる。通り道は違うが、同じ桜の木を見た、という機知に富んだ句である。「同じ桜」の表現は卓見である。ちなみに栄螺堂は日本に五ヶ所あるという。 |
なるほどこういう俳句も成り立つのか、と感心した。人事句の極みということになろうか。昭和を代表する二人の「美智子」。樺美智子さんは東大生で六十年安保闘争で二十二歳で死んだ。正田美智子さんは聖心女子大を出て皇后陛下になられた。卓越した昭和の二人の美智子を詠んで、見事! |
芝増上寺の鐘は東日本最大。余りの大きさに七回の鋳造があったという。〈江戸七分ほどは聞こえる芝の鐘〉〈西国の果てまで響く芝の鐘〉と川柳に詠まれているが、江戸中に響いたという。江戸中の花を散らせるような面白さに仕立てた句であった。 |
春障子を一物仕立てで、しかも非常に珍しい視点で捉えた秀句である。「障子貼る」は秋の季語だが、「冬障子」を経て、やや色合いも変わったこの「春障子」に到った、という。障子一枚にある微妙な色の変化に気付いた細やかな眼力を称えたい。覚えておきたい句である。 |
紫宸殿は平安京内裏の正殿の即位の大礼を行う場所であるから、、まさに雛段の大本、ということになる。京都御苑を訪ねての発想であろうが、御所の建物そのものを壮大な雛段に見立てた発想は手柄である。 |
石鹼玉を客観的に見た句である。宇宙から見たら地球はこの小さな石鹼玉のようなものではないのか、と思う。こんな意識を持ったら戦争は起こらないのに、もっと地球を大事にするのに、などと考えさせられる句であった。 |
温か味のある句だなと思う。同じいい夢を見るために花の種を分け合うという。俳句も温かさを分かち合うもの、句会はその花の種なのだと思い到った。 |
誰もが見ていることだが、俳句にすることができなかったことを表現できた句だなと思う。羽搏きながら飛ぶ訓練をする雛鳥。ためらいつつ、まなざしはもう滑空しているという。この微妙な飛び立つ寸前の様子を詠み取っているのである。覚えておきたい句である。 |
いずれも老境を詠んだ句である。俳句は年季、年輪が生み出すものだというのが私の持論だが、こういう句を見るとその意を強くする。若い人には作れない句なのである。洋征句は朝寝した分だけ残りの人生が減ったと滑稽を持って嘆く。海村句は獲得した自適の人生を楽しむ。いい老境である。 |
釈迦入滅の日、衆生も鳥獣虫魚も嘆き悲しむが、気象までもが嘆きの中にあるという。随分堪えていた空もついに大粒の雨となる。自然現象も巻き込んだ壮大な句となった。 |
その他印象深かった句を次に
伊藤伊那男・選
桜は日本人の心を揺す振る花だ。殊に夜の桜は尚更である。桜は根に骸骨を抱いているといい、花に魂があると日本人は思っている。この句の「浮いてゐるやうな」には魂の浮遊を想像させるものがある。俳句は美しいものを詠むだけではなく、その奥にある季語の本意を掴むかうかである。 |
柴又の矢切の渡しもいいが、三浦半島の浦賀の渡しは印象深い。西叶神社で買った勾玉を東叶神社に納めるのに通うポンポン舟で、合図を送ると来てくれる。この句のように誠に長閑で豊かな気持にさせてくれる渡し舟である。 |
私だけかもしれないが、この句は「西伊豆」の地名が効いているように思う。西伊豆には遅日が合うように思う。観光地が少なく、海を見て過ごすしかないようなところが遅日という時間の経過と合うように感じるのだ。 |
短い花期の桜にもよく観察すれば色の変化がある。まさに「花の色は移りにけりな」である。散り際には少し退色するように思う。あっという間の変化をしっかり捉えている。「惜しめば」の抒情もいい。 |
東山を烟らせる春雨は風情のあるものだ。軽い雨であっても足許は気になるのであろう。さりげない仕種がいい。 |
蜆は薬効が高く、今も健康補助食品によく使われている。どんなに医療技術や薬品が発達しても、やはり昔から大事にされてきた食品は信頼感のあるものだ。「縋る思ひ」の切実感がいい。 |
確かに。あめんぼは自分の作る水輪を知っているのであろうか。そんな素朴な疑問が俳句になったのである。「俳句は三歳の童に習え」というのはこのことで、素直な疑問を持って自然界を見ることが大事なのである。 |
命令形の俳句である。子供に注意喚起をしているのだが「にはたづみ」だけを言っているのではない。これから体験していくであろう人生の艱難辛苦を象徴する「にはたづみ」である。 |
物部氏によって難波の堀江に捨てられた釈迦如来を本田善光が拾って信濃の善光寺に祀ったとされる。日本最古の仏像ということになる。蟇も拝みに穴を出てくるという寓話的、土俗的発想がなかなか面白いのである。 |
啄木忌は四月十三日。私の子供の頃の信州では入学式には桜の蕾はまだ固く、四月後半が桜時であった。東京の生活に入ると娘の入学式の頃が満開であった。ところが今や三月の内に咲き終わる。気象の変化は只事ではない。とはいえ桜前線は北上していく。啄木忌との取合せがいい。 |
卒業時の感慨の句で共感できる。自分の付けた疵であるか、友人か、いやずっと昔からのものであるのか、疵によって様々な事が甦るのであろう。疵を撫でるのは即ち思い出を撫でる、ということなのである。 |
別れ霜で一番被害を受けるのは茶畑である。これを恐れて今では空気を攪拌する扇風機が備えられている。星々がよく見える空気の澄んでいる夜が危ないのである。 |
昼間あれだけ賑わっている鎌倉だが、夜は意外にも淋しいのである。特に私が怖れているのは北条氏滅亡の地、東勝寺跡の腹切り矢倉周辺、もう一つは護良親王の墓所周辺。昼間でも胸騒ぎがする所だ。「朧に鎮まりぬ」に私は物の怪の存在を感じてしまうのだ。 |
伊那男俳句 自句自解(102) 木枯を聞く
奈良と大阪を結ぶ日本で一番古い道が竹内街道である。その境目にあるのが 発掘のやうにも見えて冬耕す
もう十数年になろうか。毎年年末は武田禪次さんが計画を立ててくれる煤逃吟行会がある。奈良を中心にあちこちを散策する旅である。私は途中から加えて貰ったが、まだ参加者が若かった頃は1日に20㌔ほど歩くこともあった。回を重ねたので奈良の地理や歴史には随分詳しくなった。夜は必ず句会を重ねるのもいい。鵜飼が時を置かず鮎を吐き出させるように、記憶が新鮮なうちに何回も句会をして絞り出す。俳句だけに心を傾注する贅沢で至福の時間である。この句は浄瑠璃寺から岩船寺に歩く田園の一景であった。遠くにひたすら鍬のようなものを振ったり、しゃがみ込んだりしているひとを見て発掘作業かな、と思った。歴史の宝庫である奈良ではあちこちで発掘作業をしているのだ。近づいてみると冬耕の人であった。いかにも奈良らしい風景だなと思い、残しておいた旅の思い出の句である。もうひとつ人に解ってもらうとすれば「奈良」の前書きを置く手もあるかなと思う。 |
4月 4月22日(月) 3時起床。大浴場。マッサージ機。体重59キロ。急に瘦せたので餓鬼草紙に出てきそう。朝食佳し。一両電車に乗り9時半、城崎温泉。温泉寺の500段の石段を登る。千手観音ほか良い仏様と会う。足湯に浸り、昼過ぎには福知山へ入る。福知山城を見学。2時間ほど。あと由良川の明智藪、御霊神社など散策し、「ホテルアールイン福知山」に投宿。 4月23日(火) 4時起、風呂ゆっくり。昨日も夜は柑橘類、柏餅など食べて19時過には就寝。外は小雨の様子。2度寝して8時起。11時、京都に入り、「糸屋ホテル KYOTO ITOYA hotel」に投宿。13時、清浄華院で浄土宗開宗850年法要。飯田実雄法主は郷里の同期生。あと加藤登紀子さんのライブショーあり。感動。寺町の蕎麦店できつね蕎麦の遅い昼食。「たつみ」で海老天と若筍煮。ハイリキ一杯で出来上り。18時にはホテルに戻る。 4月24日(水) 4時起。この2日間で思いついたエッセイ2本ほぼまとめる。9時過、鳥羽離宮跡を訪ねる。白河天皇、鳥羽法皇、近衛天皇の陵あり。城南宮の庭園見学。霧雨の中。鳥羽離宮はとてつもない広さであったことを実感する。町へ戻って「京極スタンド」。あんかけ揚そばと瓶ビール注文するが、揚そばは3分の3、ビールは半分残して満腹。「高倉屋」から3軒ほど漬物送る。私用には日野菜と酢茎の葉。15時前の新幹線で東京へ。 4月25日(木) 4時起。4日間留守の間の郵便物の整理。9句会の選句。今日から8回目の抗癌剤服用へ。「銀漢」6月号の選句稿を各担当に送る。娘が私の手が黒ずんでいるという。確かに。どうやら抗癌剤の副作用。日光に当たらない方がいいという注意書があった。 4月26日(金) 3時起。同人、会員の選評を書き上げる。キンピラごぼう、ポテトサラダ、京都、和田ちゃんから到来の筍と若布の炊き合せなど。料理は息抜き。 4月27日(土) 5時起。明日の講演会の準備。13時、発行所にて久々の運営委員会。諸物価値上りもあり、資金繰りも徐々に厳しくなってきている。 4月28日(日) 昼、「藤沢市民俳句 春の大会」。「井上井月とその時代」の講演1時間。野村證券同期生の東塚治さんが聞きに来てくれる。あと大会会長の神谷章夫「さら」代表他の案内で「さかな家」にて親睦会。20時帰宅。 4月29日(月) 彗星集の選評を書き上げて6月号の仕事全部終了。 5月 5月1日(水) 昼、久々、整体師の加々美先生のマッサージ受ける。昼、とろろ蕎麦。夜スナックさや、韮と卵の黄味和、酢茎の葉など。 5月2日(木) 「三丁目の夕日」6月号の「昭和歳時記」エッセイ、山頭火を書く。14時半、NHK訪問。Eテレ「語ろう!俳句」のゲスト。高野ムツオさん座長。柴田英嗣さん司会。古坂大魔王、西生ゆかり、中西アルノさんとの句会を収録。あと代々木上原の「笹吟」にて高野先生を囲んで9人で親睦会。NHKOBの水津さん、読売新聞松本由佳、NHK俳句浦川聡子さんなど。帰宅23時過。 5月3日(金) 快晴。久々、「オオゼキ」に買物。韮、島らっきょう、鯛の兜、蛍烏賊など買い下拵え。あと午後は思い切り昼寝。 5月4日(土) 成城仲間の中川家に5家族集まる。手巻寿司他。私は上松家の烏山別宅庭で採れた筍と若布の炊合せ、島らっきょ持参。 5月5日(日) 快晴。気になりながら一度も見たことの無かった府中大國魂神社の「くらやみ祭」に行ってみる。6台の大太鼓が町を震わせる。神輿は8台か、境内に並ぶ。汐盛講送り込みまでを見る。本番は18時からの神輿渡御だがとても待つ体力は無い。帰宅。 5月6日(月) 関東戦国史のおさらい終日。おろし蕎麦旨い。 5月7日(火) 銀行、証券会社、生命保険会社に。色々と整理、一本化。ブックオフで本6冊ほど買って帰る。 5月8日(水) 終日、テレビなど見てだらだらと過す。抗癌剤8回目の服用終る。 5月9日(木) 終日、「銀漢」6月号の校正作業。昼、おろし蕎麦、夜、小松菜入りインスタントラーメン。 5月10日(金) 雲一つ無い快晴。7時半、新宿。武田禪次さん肝煎、飯田眞理子、山下美佐さんがガイドの群馬の古墳巡りのバスツアー。20人。女12、男八といよいよ「銀漢」も女性の時代か? 綿貫観音山古墳は盗掘を逸れ国宝。石室内にも入る。これは見事! 近くの群馬県立歴史博物館も見応えあり。1時間しか無いのが残念。昼食は「登利平」。次は保土田古墳群とかみつけの里博物館。18時前には帰宅。有難い企画であった。途中で買った蕗を煮浸しに。トマト、大和芋も実に旨い。 5月11日(土) 今日はぐずぐず過ごす。17時、神保町「へぎそば地酒処 こんごう庵」。辻本芙紗さんムンバイから1時帰国。「宙句会(朽木直さん)」の企画で歓迎会。理恵ママも。一斗さん幹事。 5月12日(日) 今日は机に向かってもすぐに眠くて怠惰に過ごす。母の日にて莉子、華子が料理を作る。ハンバーグ上々の出来。マッシュポテトの生ハム巻、焼いた薩摩芋のサワークリーム乗せも佳。 5月14日(火) 夜「火の会」。「天為発行所」にて9人。小茄子の浅漬を作り持参。 5月15日(水) 三浦岬から到来の天豆がうまい。「銀漢」7月号の選句続く。夜、新大久保のキムチとご飯。なめこの味噌汁。鰹の照焼。バナナ。 5月16日(木) 到来の新茶、しみじみ味わう。内臓が洗われる思い。10時半から渋谷の「シアター・イメージフォーラム」にて北村皆雄監督作品「冥界婚」を鑑賞。午後、「TOHOシネマズ池袋」にて「鬼平犯科帳 決闘」を鑑賞。18時半、麴町会館にて「銀漢句会」。あと中華店にて親睦会。帰宅23時半。「三丁目の夕日」のエッセイ、大野林火を政さんに送る。 5月18日(土) 9時半、宇都宮手前、自治医大駅下車。下野薬師寺歴史館を見学。薬師寺跡を散策す。恐らく気温30度位の夏日。休み休み散策し、歴史館でタクシーを呼び、しもつけ風土記の丘資料館へ。国分尼寺跡。見事な薄墨桜が何本もあり。古墳にも登ってみる。資料館でタクシーを呼び、小金井駅。宇都宮へ。以前、宇都宮城を見に来たことあり。「香蘭」で餃子とごはんの夕食。500円。18時には「ダイワロイネットホテル宇都宮」に投宿。20時、就寝。 5月19日(日) 4時前位に起床。ゆっくり風呂。柏餅とデコポンの朝食。7時、駅前に北原泰明、大野田井蛙さんと待合せ。北原君の車で北へ。刈田岳へのアルペンルートは残雪があり高山の桜が満開。頂上からお釜や遠く飯豊・朝日連峰を望む。下りて白石へ。蕎麦の昼食。白石城へ。北原君は見学を一切せずホテルへ。城は平成初めに石垣から再建。木造の櫓(天守と呼ぶが)がいい雰囲気。武家屋敷も風情あり。「パシフィックホテル白石」に投宿。夕食は温麵。飲食店は14時頃で閉めるところが多く昼だけ営業、コンビニも見当たらず淋しい町。21時前に就寝。 |
△カサブランカ 花は一日花で、朝に開いた花は夕方にはしぼみますが、夏の暑い盛りにたくさんの花が次々と開花します。花の色は赤の他、白などがあります。 モミジアオイの花は、近縁のフヨウやムクゲとよく似ています。一番簡単な見分け方は、葉の形です。モミジアオイの葉は掌状のモミジに似た形で、3~5裂に深く切れ込みがあります。また、フヨウやムクゲの分類は木ですが、モミジアオイは草です。宿根草なので冬は地上部が枯れますが、春になると芽吹きます。 |