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 7月号  2024年



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銀漢季語別俳句集


伊藤伊那男作品


主宰の8句







    










       
             

                        

    

今月の目次










銀漢俳句会/2024/7月号



    
   
   
















   

 

銀漢の俳句 

伊藤伊那男 

◎山陰線に乗って①

 京都には数え切れない位行っているが、亀岡以北の丹波の国についてはほとんど縁が無かった。ふと思いついて山陰線に乗った。4月中旬の若葉が眩しい時である。所々に桜が混じっているのもいい。嵯峨野駅を過ぎると保津川に沿って走る。江戸時代初期に角倉了以が水運のために開削したのだが暴れ川であることに変りはない。10年ほど前に嵐山の旅館街を水没させたし、昨年は保津川下りの観光船を転覆させている。トンネルを抜けるたびに大蛇のようにうねり岩を嚙んでいる。
 川を覗いて思い出したことがある。昭和25年、金閣寺を炎上させた学僧林養賢は舞鶴の小さな寺の育ちで、この鉄路に乗って京都に来たはずだ。事件直後、事情聴取に呼び出された母親は帰路の列車からこの保津峡に投身自殺をした。事件を題材にした三島由紀夫の小説『金閣寺』は話題を攫った。同じ題材で水上勉が『五番町夕霧楼』を書いている。私は三島の形而上学的な美と知の解釈よりも、現実の人間の哀しさを描いた水上作品の方が好きである。
思えば水上勉は福井県の寒村の大工の子で10歳で京都相国寺の小僧に出され、数年で逃げ出している。三島とは全く違う人生観でこの事件を見ていたのであろう。
 保津峡を抜けると亀岡(昔は亀山といった)の町へ出る。明智光秀が築いた亀山城がある。光秀は丹後丹波の平定を命じられて随分てこずっている。無数の盆地が集積したこの地には様々な武将が割拠し合従連衡を繰り返しており、素人の私が見ても攻略は難儀であったと推測できる。ようやく平定したあとの天正10年(1582)、信長から中国遠征中の秀吉への援軍を命ぜられ、出陣した光秀は6月2日、老ノ坂で進路を京都に変えて本能寺の変を起こした。
その亀山城も不思議な運命を辿っている。大正時代に新興宗教の大本教がこの廃城を買い取り、布教活動の拠点とした。昭和10年、教団の巨大化を恐れた日本政府は、指導者の出口王仁三郎を検挙、格安で城を町に売却させ、神殿を1,500発のダイナマイトで爆破し、石垣は日本海に棄てた。弾圧により2度目の廃城となったのである。戦後所有権は大本教に戻り、今は宣教の中心施設、天恩郷として美しく整備されている。城内は開放されており、信者でなくとも散策することができる。数年前に訪ね、澄んだ気を感じたことを覚えている。私の師、皆川盤水の夫人の父上は東京歯科医師会の会長をなされた立志伝中の人であるが、大本教の重鎮であったという。墓は京都府綾部市の大本教の発祥の地、梅松苑にあると聞いている。















 



  

盤水俳句・今月の一句

伊藤伊那男 

蕗を煮て天宥讃ふ羽黒人         皆川 盤水

天宥法印は江戸初期の人で、天海上人の弟子。羽黒山中興の祖といわれる。月山の水利を活かして耕地を拡げたり、今の羽黒山への二千数百段の石段の参道の整備や芭蕉が宿泊した南谷別院を開くなど、出羽三山の繁栄の基礎を築き、今も慕われている。だが真言宗から天台宗への宗旨替えをしたことや鶴岡藩との角逐から新島に流されて死んだ。「蕗を煮て」が羽黒らしくていい。
(平成十六年作『花遊集』所収)









 




彗星集作品抄
  伊藤伊那男・選

 雛の間に参議篁おはさぬか          中島 凌雲
 小綬鶏に呼ばれ望郷募りけり         星野 淑子
 鉄棒に届かぬ両手入学児           保田 貴子
 桜えび髭を零して干し上がる         小野寺清人
 花守の花の盛りは寝ねにけり         加藤 且之
 小夜更けて枕そばだつ遠雪崩         佐藤 栄子
 寄り道を早も覚えて新入生          今井  麦
 花冷や職員一人の観光課           清水 史恵
 火の島の火種の如し島椿           山元 正規
 山門に葷酒を入れて花見客          大田 勝行
 あかがねの濡れて飴色甘茶仏         萩原 陽里
 寝入りたるらし風船が天井へ         谷岡 健彦
 桜湯や長き見合ひの席に咲く         大田 勝行
 逃水やタケルの旅の果てしなき        中村 湖童
 問診の短き春の風邪ならば          森濱 直之
 春炬燵忘れ上手に聞き上手          福原  紅
 聖霊会ならば鳴くらむ亀石も         中島 凌雲
 花種のスパイスほどを振つて蒔く       清水 史恵
 薄絹の池面となりて花筏           武田 花果
 後三年てふ役の名の駅花ふぶき        大溝 妙子
 梳る松葉のやはく朧月            小林 美樹
     

















    
     

彗星集 選評 伊藤伊那男

伊藤伊那男・選

雛の間に参議篁おはさぬか         中島 凌雲
 小野篁は平安初期の官僚で参議の職。書家、文人としても知られ、小野道風や小野小町の祖とされるが、様々な逸話を持つ人物でもある。それは昼は朝廷に仕え、夜は六波羅の珍皇寺の井戸から冥界に入り、閻魔大王に仕え、朝嵯峨の福正寺から現世に戻ってくるというものである。自在に時空を翔る篁なら雛段のどこかに居るかも知れないという、伝説を踏まえた想像豊かな句であった。


小綬鶏に呼ばれ望郷募りけり         星野 淑子
 小綬鶏の鳴き声は「ちょっとこい」。その声に幼かった頃の思い出が甦ったのであろう。望郷の念が募ったというのである。都会に暮らす者の郷愁である。


鉄棒に届かぬ両手入学児           保田 貴子
 素直に詠んで気持のいい句である。子供の成長は一年間でも大きく変わるものである。小学一年生から見たら鉄棒はとてつもない高さで、両手を伸ばしても届かない。そうした子供の目で見た鉄棒である。新鮮な視点である。


桜えび髭を零して干し上がる         小野寺清人
 駿河湾に揚がり、浜で干される桜海老は春の風物詩だが、漁が始まったのは明治の中頃なので、それほど古い季語ではない。この句は「髭を零して」と細かな描写に到ったところが手柄である。「桜海老が干し上がる」は誰が見ても解ることだが、そのあとが大事である。どのように干し上がるのかを表現できるかどうかである。この句では「髭を零して」と対象物に一歩深入りすることができたのである。その一歩踏み込むことが俳句の要諦。

 
花守の花の盛りは寝ねにけり         加藤 且之
 花守の役割は花の咲くまでの管理。無事開花すれば、ひとまずは役割を終え、肩の力も抜ける一時だ、という句である。そのあとまた黒衣のような地味な作業に入るのだが、その休息のときを捉えた句である。「寝ねにけり」はやや大袈裟な表現だが、それだけに滑稽感も含んでいる。


小夜更けて枕そばだつ遠雪崩         佐藤 栄子
 山懐の宿に泊ったのであろう。夜の遠雪崩を聞いたのである。句は「枕そばだつ」がうまいところである。作者が、というのではなく、枕が聞き耳を立てる、という擬人化が句の味わいを深くしているのである。枕が立ち上がるような面白さと、臨場感がある。


寄り道を早も覚えて新入生          今井  麦
新入生の行動を面白く捉えた。私も目敏い子供であった。


花冷や職員一人の観光課           清水 史恵
 名所の無い村か。桜時だけ賑わう。花冷の今日は暇。 。


火の島の火種の如し島椿           山元 正規
 伊豆七島辺りの景か。「火」の畳み掛けが味わい。


山門に葷酒を入れて花見客          大田 勝行
花時だけ葷酒黙認の寺か。葷酒を「入れて」がうまい。


あかがねの濡れて飴色甘茶仏         萩原 陽里

歳月を経た童子仏。甘茶の色が沁み込んでいるか。 


寝入りたるらし風船が天井へ         谷岡 健彦
 子が寝入って手を離した風船。風船も寝入った感じ。


桜湯や長き見合ひの席に咲く         大田 勝行
 見合いの緊張感がよく出ている。話は咲いていない……。


逃水やタケルの旅の果てしなき        中村 湖童
 父景行天皇に嫌われた日本武尊は旅の果に白鳥となる。 


問診の短き春の風邪ならば          森濱 直之
医者もすぐに見立てのついた軽い風邪。


春炬燵忘れ上手に聞き上手          福原  紅
年寄のとんちんかんの問答が聞こえてくるようだ。 
 

聖霊会ならば鳴くらむ亀石も         中島 凌雲
聖徳太子の忌日。飛鳥の亀石も嘆きの声をあげたか。 


花種のスパイスほどを振つて蒔く       清水 史恵
 芥子などのような微細な種。スパイスの比喩がいい。


薄絹の池面となりて花筏           武田 花果
花筏を薄い絹と見立てた。池面の花弁を美しく捉えた。


後三年てふ役の名の駅花ふぶき        大溝 妙子
〈後三年てふ名の駅の花ふぶき〉でよかろう。


梳る松葉のやはく朧月            小林 美樹
 細部に目が届いており、朧月の取合せが効いている。




 

 





 







銀河集作品抄

伊藤伊那男・選

綿津見の吐く陽気かと蜃気楼      東京  飯田眞理子
北開き淡き光をアトリエに       静岡  唐沢 静男
湖にせり出してゐるさくらかな     群馬  柴山つぐ子
鳥帰る旅の帰りの旅心         東京  杉阪 大和
もろ鳥もそはかそはかと花の寺     東京  武田 花果
花の尾根越せばまた花西行忌      東京  武田 禪次
狛犬にひと色あづけ風船売       埼玉  多田 美記
いま木戸を開けてゆきしが春一番    東京  谷岡 健彦
幾筋の水尾の乱れや比良八荒      神奈川 谷口いづみ
魚鼓打てど応へなき庫裏竜の玉     長野  萩原 空木
これよりは電波届かず山笑ふ      東京  堀切 克洋
祠からどつと噴き出す蚊食鳥      東京  松川 洋酔
春の雪国栖に高まる笛の音       東京  三代川次郎










         





綺羅星集作品抄

伊藤伊那男・選

剪定や一音あれば一枝飛ぶ       埼玉   中村 宗男
首伸ばす亀のおくびや鳴けるかに    茨城   中村 湖童
巡り見る同じ桜や栄螺堂        東京   橋野 幸彦
眼力の二人の美智子昭和の日      神奈川  白井八十八
花散るや余韻の長き芝の鐘       東京   白濱 武子
貼り立てと違ふ明るさ春障子      東京   鈴木てる緒
紫宸殿てふ大いなる雛の間       大阪   中島 凌雲
宙からの地球はかくや石鹼玉      岐阜   堀江 美州
同じ夢見んとて分かつ花の種      埼玉   伊藤 庄平
まなざしがもう飛んでゐる巣立鳥    愛知   荻野ゆ佑子
朝寝せば短くなりし余生かな      東京   柊原 洋征
老いたれば苦もなく朝寝したりけり   東京   畔柳 海村
こらへ降る雨の大粒涅槃寺       東京   小山 蓮子
山笑ふ恐竜の棲むおもちや箱      青森   榊 せい子
白といふ終に着るいろ大牡丹      長崎   坂口 晴子
しんがりは蛇尾の如くにメーデー来   長野   坂下  昭
囀のどこか雅に冷泉家         兵庫   清水佳壽美
踏台の置いてありたる花御堂      東京   清水 史恵
散りたれば花の話を誰もせず      大阪   末永理恵子
春炬燵無為てふ疲れあるを知る     群馬   鈴木踏青子
古里の畳の匂ふ朝寝かな        東京   田家 正好
ざらざらにしてあたたかし猫の舌    広島   長谷川明子
あるがままを水に一生ヒヤシンス    東京   矢野 安美

妹は面倒なやつ八重桜         東京   飛鳥  蘭
初蝶や洗ふ野良着の解れ糸       東京   有澤 志峯
熊蜂の花粉まみれの花の揺れ      神奈川  有賀  理
脱落といふ生き方も残る鴨       東京   飯田 子貢
たも網の乾き切りたる日永かな     山形   生田  武
外に出よか家に居よかと花曇      埼玉   池田 桐人
恐れ多くも円墳の青き踏む       東京   市川 蘆舟
挨拶は花の遅速や桜時         東京   伊藤  政
浦風を巻きとつてゐる春キャベツ    神奈川  伊東  岬
三椏咲く律儀に三枝重ねつつ      東京   今井  麦
山の湯の効き目の板書呼子鳥      埼玉   今村 昌史
春の塵拭ひ去りたきこと数多      東京   上田  裕
源流は神棲むところ座禅草       東京   宇志やまと
引揚げし日のはるかなり黄砂降る    埼玉   大澤 静子
地球儀を廻せば散れるつちぐもり    神奈川  大田 勝行
吹かれをり摘まるる草も摘む吾も    東京   大沼まり子
魚追ふ少年にごりなき五月       神奈川  大野 里詩
魚島の鯛の膨らみ御食国        埼玉   大野田井蛙
福島・夜の森
かくも咲きかくもさみしき桜かな    東京   大溝 妙子
窓硝子軋ませ磨くよなぐもり      東京   大山かげもと
春愁のかたまりとして泣き黒子     東京   岡城ひとみ
落下するやうに飛び立ち巣立鳥     宮城   小田島 渚
目覚めよと二月の風の叩く海      宮城   小野寺一砂
目の揃ふ杉の割箸木の芽和       埼玉   小野寺清人
まんさくや血筋を今も峡に生き     和歌山  笠原 祐子
丸まつて尻尾とあそぶ子猫かな     東京   梶山かおり
鯉の尾の振れ幅広くうららけし     愛媛   片山 一行
永き日や整理のつかぬ古写真      静岡   金井 硯児
春袷色を違へて三姉妹         東京   我部 敬子
湖に点睛として残る鴨         東京   川島秋葉男
斑鳩の旅寝を囃す蛙かな        千葉   川島  紬
六道の辻にふるまふ甘茶かな      神奈川  河村  啓
雨の中湖畔とよもす初音かな      愛知   北浦 正弘
春日遅々と渡り廊下のながさかな    長野   北澤 一伯
緞帳の校章へ向け卒業歌        東京   絹田  稜
釣銭の合はぬ自販機四月馬鹿      東京   朽木  直
鴉の巣あやぶまれつつ仕上がれり    東京   小泉 良子
次の子を待つふらここの静けさよ    神奈川  こしだまほ
幼子の息かたち成すしやぼん玉     東京   小林 美樹
匙うらに来し方映す春の虹       千葉   小森みゆき
地の火照り浅蜊吐き出す世の憂ひ    宮城   齊藤 克之
浅間嶺は村の目印春動く        群馬   佐藤 栄子
犬ふぐり青き耳輪の欲しかりき     群馬   佐藤かずえ
暮れぎはのはくれん闇を深くして    長野   三溝 恵子
時計屋に鳩時計鳴る日永かな      広島   塩田佐喜子
南口も北口もみな花人に        東京   島  織布
来し方を一つづつ打つ遍路杖      東京   島谷 高水
花曇軽きめまひを覚えたり       東京   清水美保子
顔だけの上野大仏風車         埼玉   志村  昌
奥様と呼ばれたくつて春日傘      千葉   白井 飛露
雛人形未だ留め置きて老住まひ     東京   新谷 房子
目覚しに空返事する朝寝かな      東京   鈴木 淳子
一夜雨牡丹深紅の芽をほどく      東京   角 佐穂子
春暑し力士の雪駄ぺつたんこ      千葉   園部あづき
春霞さらつてゆきし待ち人を      神奈川  曽谷 晴子
埋蔵金あるやなしやの山笑ふ      長野   髙橋 初風
念仏に緩みてゆけり蝌蚪の紐      東京   高橋 透水
花冷や帯に潜めし銀時計        東京   武井まゆみ
人形の両の眼の朧なる         東京   竹内 洋平
総身で受くる卒園証書かな       東京   多田 悦子
遠目にも木蓮ひかり放ちをり      東京   立崎ひかり
藍蒔く日空の青きの澄むが良し     東京   田中 敬子
夏近しロダンの像の力瘤        東京   田中  道
ソ連邦残る地球儀鳥雲に        東京   塚本 一夫
またひとつ年を経て聴く卒業歌     東京   辻  隆夫
棒鱈に鋸で立ち向かひたり       ムンバイ 辻本 芙紗
首に解き鞄に結ぶ春ショール      東京   辻本 理恵
断層は地球の記憶鳥雲に        愛知   津田  卓
ふるさとはとほきにありて犀星忌    東京   坪井 研治
だいたいの時刻で帰る日永かな     埼玉   戸矢 一斗
春愁の指を栞に賢治の詩        千葉   長井  哲
少年の目はまつすぐに風光る      東京   中込 精二
耕の本家と分家畦隔て         神奈川  中野 堯司
人はみな故山捨てたり啄木忌      東京   中野 智子
辞書になき孤咳の言葉放哉忌      東京   中村 孝哲
門前に潮の匂や若布売         東京   中村 藍人
硬券の角にありたる花の冷       長野   中山  中
去年の巣に燕今年の泥加ふ       千葉   中山 桐里
百八の数珠玉の艶涅槃西風       大阪   西田 鏡子
味噌汁の貝を漁る花曇         埼玉   萩原 陽里
神酒賜ばる社日色ふる花手水      兵庫   播广 義春
晩年にも反骨少し松の芯        埼玉   半田けい子
履き慣れし靴こそよけれ春の土     埼玉   深津  博
住職は南国生れ夏蜜柑         東京   福永 新祇
飽食の果ては夕餉の目刺かな      東京   福原  紅
たんぽぽの絮吹く息を三度足し     東京   星野 淑子
花筵四隅の石を結界に         埼玉   本庄 康代
雨後の路地物の芽区別出来るほど    東京   松浦 宗克
風の子が空のぶらんこ漕いでゐる    東京   松代 展枝
洛北の谷ひとつ越え涅槃寺       神奈川  三井 康有
弁当を作らぬ朝や鳥巣立つ       神奈川  宮本起代子
波の音風の音背に栄螺売る       東京   村田 郁子
鎌倉に夜来の雨や山ざくら       東京   村田 重子
家系図を辿れば魚涅槃西風       東京   森 羽久衣
残花なほ闇深めたり蔵王堂       千葉   森崎 森平
山彦の声に艶あり山笑ふ        埼玉   森濱 直之
花びらに重さいろいろ飛花落花     長野   守屋  明
鳩時計扉の中の目借時         東京   保田 貴子
生者死者こもごも来る目借時      愛知   山口 輝久
巣箱てふ優しき闇のありにけり     群馬   山﨑ちづ子
雪代の木曾三川を溢れしむ       東京   山下 美佐
桜鯛糶の値高く跳ね上げて       東京   山田  茜
空に立つ細波に似て辛夷咲く      東京   山元 正規
山笑ふ二個目ほほばる目張りずし    東京   渡辺 花穂
奪衣婆の手ぐすねをひく余寒かな    埼玉   渡辺 志水


















          






     





銀河集・綺羅星今月の秀句


伊藤伊那男・選

剪定や一音あれば一枝飛ぶ        中村 宗男
剪定鋏はなかなか威力のあるもので、これも知恵の集積で、かなりの太さの枝も切り落す。一つの音があれば一枝が落ちる。違う意味を持つ「一」の字を重ねた韻律のうまさが手柄である。目を瞑っていても情景が解るのだ。 


首伸ばす亀のおくびや鳴けるかに     中村 湖童
 実際には鳴かないのに、鳴くと断言する「亀鳴く」は俳諧という「おかしみ」を象徴する季語である。この句は「鳴く」とは断定していない。「鳴けるかに」と疑問形にとどめているのだが、この慎ましさもまた味わいである。


巡り見る同じ桜や栄螺堂         橋野 幸彦
私の知る栄螺堂は会津にある。栄螺の殻のように螺旋状をしていて同じ通路を通らずに上り下りができる。通り道は違うが、同じ桜の木を見た、という機知に富んだ句である。「同じ桜」の表現は卓見である。ちなみに栄螺堂は日本に五ヶ所あるという。   


眼力の二人の美智子昭和の日       白井八十八
 なるほどこういう俳句も成り立つのか、と感心した。人事句の極みということになろうか。昭和を代表する二人の「美智子」。樺美智子さんは東大生で六十年安保闘争で二十二歳で死んだ。正田美智子さんは聖心女子大を出て皇后陛下になられた。卓越した昭和の二人の美智子を詠んで、見事!


花散るや余韻の長き芝の鐘        白濱 武子
 芝増上寺の鐘は東日本最大。余りの大きさに七回の鋳造があったという。〈江戸七分ほどは聞こえる芝の鐘〉〈西国の果てまで響く芝の鐘〉と川柳に詠まれているが、江戸中に響いたという。江戸中の花を散らせるような面白さに仕立てた句であった。


貼り立てと違ふ明るさ春障子       鈴木てる緒
春障子を一物仕立てで、しかも非常に珍しい視点で捉えた秀句である。「障子貼る」は秋の季語だが、「冬障子」を経て、やや色合いも変わったこの「春障子」に到った、という。障子一枚にある微妙な色の変化に気付いた細やかな眼力を称えたい。覚えておきたい句である。 


紫宸殿てふ大いなる雛の間        中島 凌雲
 紫宸殿は平安京内裏の正殿の即位の大礼を行う場所であるから、、まさに雛段の大本、ということになる。京都御苑を訪ねての発想であろうが、御所の建物そのものを壮大な雛段に見立てた発想は手柄である。


宙からの地球はかくや石鹼玉       堀江 美州
 石鹼玉を客観的に見た句である。宇宙から見たら地球はこの小さな石鹼玉のようなものではないのか、と思う。こんな意識を持ったら戦争は起こらないのに、もっと地球を大事にするのに、などと考えさせられる句であった。


同じ夢見んとて分かつ花の種       伊藤 庄平
 温か味のある句だなと思う。同じいい夢を見るために花の種を分け合うという。俳句も温かさを分かち合うもの、句会はその花の種なのだと思い到った。


まなざしがもう飛んでゐる巣立鳥     荻野ゆ佑子
誰もが見ていることだが、俳句にすることができなかったことを表現できた句だなと思う。羽搏きながら飛ぶ訓練をする雛鳥。ためらいつつ、まなざしはもう滑空しているという。この微妙な飛び立つ寸前の様子を詠み取っているのである。覚えておきたい句である。 


朝寝せば短くなりし余生かな       柊原 洋征
老いたれば苦もなく朝寝したりけり    畔柳 海村
 いずれも老境を詠んだ句である。俳句は年季、年輪が生み出すものだというのが私の持論だが、こういう句を見るとその意を強くする。若い人には作れない句なのである。洋征句は朝寝した分だけ残りの人生が減ったと滑稽を持って嘆く。海村句は獲得した自適の人生を楽しむ。いい老境である。


こらへ降る雨の大粒涅槃寺        小山 蓮子
釈迦入滅の日、衆生も鳥獣虫魚も嘆き悲しむが、気象までもが嘆きの中にあるという。随分堪えていた空もついに大粒の雨となる。自然現象も巻き込んだ壮大な句となった。 

 

 その他印象深かった句を次に

白といふ終に着るいろ大牡丹       坂口 晴子
しんがりは蛇尾の如くにメーデー来    坂下  昭
囀のどこか雅に冷泉家          清水佳壽美
踏台の置いてありたる花御堂       清水 史恵
山笑ふ恐竜の棲むおもちや箱       榊 せい子
ざらざらにしてあたたかし猫の舌     長谷川明子
散りたれば花の話を誰もせず       末永理恵子
古里の畳の匂ふ朝寝かな         田家 正好
春炬燵無為てふ疲れあるを知る      鈴木踏青子
あるがままを水に一生ヒヤシンス     矢野 安美
















                






 

星雲集作品抄
伊藤伊那男・選
秀逸

真夜中の桜は浮いてゐるやうな     東京  北原美枝子
のどけしや時刻表無き渡し舟      岐阜  鈴木 春水
西伊豆の遅日の宿に着きにけり     東京  関根 正義
移りゆく色を惜しめば飛花落花     埼玉  園部 恵夏
春雨や足袋を気遣ふ京の旅       千葉  平山 凛語
病みし日や縋る思ひの蜆汁       静岡  橋本 光子
あめんぼや己が水輪を知らず行く    神奈川 西本  萌
にはたづみそこを飛び越せ入学児    福島  髙橋 双葉

蟇出づる善光寺(ぜんこじ)さんを拝まむと     長野  戸田 円三
啄木忌桜の便り北上す         東京  松井はつ子
二度三度椅子の疵撫で卒業す      東京  尼崎 沙羅
星数の多き夜なりき別れ霜       東京  久保園和美
鎌倉の夜気は朧に鎮まりぬ       東京  倉橋  茂
傾ぎつつ草に触れざる初蝶よ      埼玉  水野 加代
咲くと書きまた散ると書く花日記    東京  渡辺 誠子

強力の足跡深く山笑ふ         東京  一政 輪太
艫綱の垂れし港や蜃気楼        東京  伊藤 真紀
曇天を引き寄せてゐる山桜       東京  北野 蓮香
あいまいのままも良きかと春愁     東京  島谷  操
花筏切れ目なきまま堰落つる      愛知  住山 春人
風の出て影の膨らむ糸ざくら       栃木  たなかまさこ
ものの芽は歓喜の声を宿しをり     東京  橋本  泰











星雲集作品抄

            伊藤伊那男・選


枕辺に笑む母のゐる入彼岸       東京  井川  敏
歌心映して花の六義園         長野  池内とほる
つくづくし箸一膳の灯かな       広島  井上 幸三
満開のさくらの中を和尚逝く      愛媛  岩本 青山
新しき上履きを手に入学す       長野  上野 三歩
風光る二つ山越え飛驒の郷       東京  上村健太郎
滞在を延ばし延ばしの花見かな     長野  浦野 洋一
朧月淡き影追ひ一万歩         群馬  小野田静江
解禁の一斉出帆桜蝦          静岡  小野 無道
幽閉を解かれ雛の貌のどか       広島  小原三千代
朝寝して帳尻合はす次の朝       東京  桂  説子
花筏十石舟を囲みけり         埼玉  加藤 且之
料峭の間怠き朝の鴉かな        長野  唐沢 冬朱
朝寝せむ目蓋の溶けて仕舞ふほど    愛知  河畑 達雄
宍道湖に日は沈みけり蜆汁       群馬  北川 京子
鳥雲にけふよりあすは良き日かと    東京  熊木 光代

残雪や浅間山(あさま)は今朝も母の顔      群馬  黒岩伊知朗
こんな日は猫と戯る菜種梅雨      群馬  黒岩 清子
啄木忌遠き黄砂を一握り        愛知  黒岩 宏行
立ち上り遅きパソコン目借時      東京  髙坂小太郎
春楽し一口毎の珈琲も         神奈川 阪井 忠太
花散るや雨に小言の無けれども     長野  桜井美津江
祝ひ膳厨に届く桜鯛          東京  佐々木終吉
握力の徐々に戻れる春隣        群馬  佐藤さゆり
飯館の人住まぬ家ふきのたう      東京  清水 旭峰
少年よぶらんこにゐて何思ふ      千葉  清水 礼子
農道を蛙に譲る耕耘機         群馬  白石 欽二
百合の花背中合せを託つ瓶       大阪  杉島 久江
戦争を生きて八十路の蓬餅       東京  須﨑 武雄
煎餅の割れ音こもり菜種梅雨      埼玉  其田 鯉宏
夢の先追うては消ゆる朝寝かな     東京  田岡美也子
海鳴りの鈴の音消せり夕遍路      東京  髙城 愉楽
吹かれたる蒲公英の絮何処へと     埼玉  武井 康弘
蝌蚪あふれ大地やさしくなりにけり   東京  竹花美代惠
蒲公英閉づ明日は雨かと思ひをり    栃木  田中 桂子
葉先から滴こぼるる穀雨かな      東京  田中 真美
魂を吸ふかに碧き春の潮        広島  藤堂 暢子
運転手の数の逃水走りたる       埼玉  内藤  明
故郷てふ文字しみじみと雪の果     群馬  中島みつる
目の前の海縹色春近し         神奈川 長濱 泰子
銭湯の一番客や花ふぶき        京都  仁井田麻利子
内仏の対の輪灯お中日         東京  西  照雄
形よき石の文鎮竜天に         宮城  西岡 博子
菜の花の孤月に喝采送るかに      東京  西田有希子
植ゑ時と種芋箱を膨らます       神奈川 花上 佐都
空いろの靴の弾みや風光る       長野  馬場みち子
飛花落花また会へること願ひつつ    千葉  針田 達行
花冷を映し合はせしビルの街      神奈川 日山 典子
春嵐雄叫びあぐる大樹かな       千葉  平野 梗華
三階に沈丁の香ののぼりくる      広島  藤井 淳子
スコップで砕く土塊黄砂来る      長野  藤井 法子
父母を兼ぬる法事や花の寺       福岡  藤田 雅規
突風に川面を占むる花いかだ      東京  牧野 睦子
常滑の小ぶりの急須花の宿       東京  幕内美智子
生垣の剪定母の丈ほどに        愛知  箕浦甫佐子
茶摘女のひと日を摘みて摘み飽かず   東京  宮下 研児
入学の子の歌声に力あり        東京  無聞  益
巣燕に瞬息の影見え隠れ        宮城  村上セイ子
正直に嘘つく人や万愚節        東京  家治 祥夫
石鹼玉追へば追ふほど逃げて行き    神奈川 山田 丹晴
子の靴を払へば香る春の草       静岡  山室 樹一
一夜にて白く満ちたる桃の花      群馬  横沢 宇内
子育てのし易い街や燕来る       神奈川 横地 三旦
蔦若葉小さきカフェーの飾り窓     神奈川 横山 渓泉
柵越ゆる羊何匹目借時         千葉  吉田 正克
賢治の詩こころに対峙春と修羅     山形  我妻 一男
子規庵に子規を隠せる青簾       東京  若林 若干


























星雲集 今月の秀句

伊藤伊那男

真夜中の桜は浮いてゐるやうな      北原美枝子
桜は日本人の心を揺す振る花だ。殊に夜の桜は尚更である。桜は根に骸骨を抱いているといい、花に魂があると日本人は思っている。この句の「浮いてゐるやうな」には魂の浮遊を想像させるものがある。俳句は美しいものを詠むだけではなく、その奥にある季語の本意を掴むかうかである。 


のどけしや時刻表無き渡し舟       鈴木 春水
柴又の矢切の渡しもいいが、三浦半島の浦賀の渡しは印象深い。西叶神社で買った勾玉を東叶神社に納めるのに通うポンポン舟で、合図を送ると来てくれる。この句のように誠に長閑で豊かな気持にさせてくれる渡し舟である。 


西伊豆の遅日の宿に着きにけり      関根 正義
 私だけかもしれないが、この句は「西伊豆」の地名が効いているように思う。西伊豆には遅日が合うように思う。観光地が少なく、海を見て過ごすしかないようなところが遅日という時間の経過と合うように感じるのだ。


移りゆく色を惜しめば飛花落花      園部 恵夏
 短い花期の桜にもよく観察すれば色の変化がある。まさに「花の色は移りにけりな」である。散り際には少し退色するように思う。あっという間の変化をしっかり捉えている。「惜しめば」の抒情もいい。


春雨や足袋を気遣ふ京の旅        平山 凛語
東山を烟らせる春雨は風情のあるものだ。軽い雨であっても足許は気になるのであろう。さりげない仕種がいい。 


病みし日や縋る思ひの蜆汁        橋本 光子
 蜆は薬効が高く、今も健康補助食品によく使われている。どんなに医療技術や薬品が発達しても、やはり昔から大事にされてきた食品は信頼感のあるものだ。「縋る思ひ」の切実感がいい。


あめんぼや己が水輪を知らず行く     西本  萌
確かに。あめんぼは自分の作る水輪を知っているのであろうか。そんな素朴な疑問が俳句になったのである。「俳句は三歳の童に習え」というのはこのことで、素直な疑問を持って自然界を見ることが大事なのである。


にはたづみそこを飛び越せ入学児     髙橋 双葉
命令形の俳句である。子供に注意喚起をしているのだが「にはたづみ」だけを言っているのではない。これから体験していくであろう人生の艱難辛苦を象徴する「にはたづみ」である。 


蟇出づる善光寺(ぜんごじ)さんを拝まむと      戸田 円三
 物部氏によって難波の堀江に捨てられた釈迦如来を本田善光が拾って信濃の善光寺に祀ったとされる。日本最古の仏像ということになる。蟇も拝みに穴を出てくるという寓話的、土俗的発想がなかなか面白いのである。


啄木忌桜の便り北上す          松井はつ子
 啄木忌は四月十三日。私の子供の頃の信州では入学式には桜の蕾はまだ固く、四月後半が桜時であった。東京の生活に入ると娘の入学式の頃が満開であった。ところが今や三月の内に咲き終わる。気象の変化は只事ではない。とはいえ桜前線は北上していく。啄木忌との取合せがいい。


二度三度椅子の疵撫で卒業す       尼崎 沙羅
卒業時の感慨の句で共感できる。自分の付けた疵であるか、友人か、いやずっと昔からのものであるのか、疵によって様々な事が甦るのであろう。疵を撫でるのは即ち思い出を撫でる、ということなのである。



星数の多き夜なりき別れ霜        久保園和美
 別れ霜で一番被害を受けるのは茶畑である。これを恐れて今では空気を攪拌する扇風機が備えられている。星々がよく見える空気の澄んでいる夜が危ないのである。


鎌倉の夜気は朧に鎮まりぬ        倉橋  茂
昼間あれだけ賑わっている鎌倉だが、夜は意外にも淋しいのである。特に私が怖れているのは北条氏滅亡の地、東勝寺跡の腹切り矢倉周辺、もう一つは護良親王の墓所周辺。昼間でも胸騒ぎがする所だ。「朧に鎮まりぬ」に私は物の怪の存在を感じてしまうのだ。 


その他印象深かった句を次に


強力の足跡深く山笑ふ          一政 輪太
艫綱の垂れし港や蜃気楼         伊藤 真紀
曇天を引き寄せてゐる山桜        北野 蓮香
あいまいのままも良きかと春愁      島谷  操
花筏切れ目なきまま堰落つる       住山 春人
風の出て影の膨らむ糸ざくら       たなかまさこ
ものの芽は歓喜の声を宿しをり      橋本  泰
咲くと書きまた散ると書く花日記     渡辺 誠子
























伊那男俳句


 伊那男俳句 自句自解(102)
            
木枯を聞く二上山(ふたかみ)の挽歌とも

 奈良と大阪を結ぶ日本で一番古い道が竹内街道である。その境目にあるのが二上(ふたかみ)山。関東の筑波山に似た双耳峰である。冬の奈良は二上山に日が沈む。この山を仰ぐと大津皇子のことを思わずにはいられない。父は天武天皇、母は持統天皇の姉の大田皇女(おおたのひめこ。何としても自分の腹を痛めた草壁皇子に皇位を継がせたい持統天皇にとってはこの聡明な皇子は邪魔な存在であった。天武天皇が崩御するとすぐに謀反の意ありとされ、磐余(いわれ)の自邸で自害を強いられた。享年二十四。皇子の辞世の歌は〈ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ〉。「雲隠る」は貴人が死ぬことの婉曲な表現である。その御魂は二上山の日没を見る度にこの悲話と西方浄土ということを思うのである。ついでながら皇子の姉で伊勢斎宮の大伯皇女(おおくのひめみこ)に次の歌がある。〈うつそみの人にあるわれや明日よりは二上山を弟背(いろせ)とわが見む〉。弟を偲ぶ悲しい歌である。

発掘のやうにも見えて冬耕す

 もう十数年になろうか。毎年年末は武田禪次さんが計画を立ててくれる煤逃吟行会がある。奈良を中心にあちこちを散策する旅である。私は途中から加えて貰ったが、まだ参加者が若かった頃は1日に20㌔ほど歩くこともあった。回を重ねたので奈良の地理や歴史には随分詳しくなった。夜は必ず句会を重ねるのもいい。鵜飼が時を置かず鮎を吐き出させるように、記憶が新鮮なうちに何回も句会をして絞り出す。俳句だけに心を傾注する贅沢で至福の時間である。この句は浄瑠璃寺から岩船寺に歩く田園の一景であった。遠くにひたすら鍬のようなものを振ったり、しゃがみ込んだりしているひとを見て発掘作業かな、と思った。歴史の宝庫である奈良ではあちこちで発掘作業をしているのだ。近づいてみると冬耕の人であった。いかにも奈良らしい風景だなと思い、残しておいた旅の思い出の句である。もうひとつ人に解ってもらうとすれば「奈良」の前書きを置く手もあるかなと思う。








   


 



俳人協会四賞・受賞式





更新で5秒後、再度スライドします。全14枚。







リンクします。

aishi etc
        












銀漢の絵はがき


挿絵が絵葉書になりました。
Aシリーズ 8枚組・Bシリーズ8枚組
8枚一組 1,000円

ごあいさつにご利用下さい。






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掲示板



















               
 
     

「銀漢」季語別俳句集




拡大します。
銀漢季語別俳句集
待望の『季語別俳句集』が3月に刊行されました。









主宰日録  

  



4月

4月22日(月)
3時起床。大浴場。マッサージ機。体重59キロ。急に瘦せたので餓鬼草紙に出てきそう。朝食佳し。一両電車に乗り9時半、城崎温泉。温泉寺の500段の石段を登る。千手観音ほか良い仏様と会う。足湯に浸り、昼過ぎには福知山へ入る。福知山城を見学。2時間ほど。あと由良川の明智藪、御霊神社など散策し、「ホテルアールイン福知山」に投宿。

4月23日(火)
4時起、風呂ゆっくり。昨日も夜は柑橘類、柏餅など食べて19時過には就寝。外は小雨の様子。2度寝して8時起。11時、京都に入り、「糸屋ホテル KYOTO ITOYA hotel」に投宿。13時、清浄華院で浄土宗開宗850年法要。飯田実雄法主は郷里の同期生。あと加藤登紀子さんのライブショーあり。感動。寺町の蕎麦店できつね蕎麦の遅い昼食。「たつみ」で海老天と若筍煮。ハイリキ一杯で出来上り。18時にはホテルに戻る。

4月24日(水)
4時起。この2日間で思いついたエッセイ2本ほぼまとめる。9時過、鳥羽離宮跡を訪ねる。白河天皇、鳥羽法皇、近衛天皇の陵あり。城南宮の庭園見学。霧雨の中。鳥羽離宮はとてつもない広さであったことを実感する。町へ戻って「京極スタンド」。あんかけ揚そばと瓶ビール注文するが、揚そばは3分の3、ビールは半分残して満腹。「高倉屋」から3軒ほど漬物送る。私用には日野菜と酢茎の葉。15時前の新幹線で東京へ。

4月25日(木)
4時起。4日間留守の間の郵便物の整理。9句会の選句。今日から8回目の抗癌剤服用へ。「銀漢」6月号の選句稿を各担当に送る。娘が私の手が黒ずんでいるという。確かに。どうやら抗癌剤の副作用。日光に当たらない方がいいという注意書があった。

4月26日(金)
3時起。同人、会員の選評を書き上げる。キンピラごぼう、ポテトサラダ、京都、和田ちゃんから到来の筍と若布の炊き合せなど。料理は息抜き。

4月27日(土)
5時起。明日の講演会の準備。13時、発行所にて久々の運営委員会。諸物価値上りもあり、資金繰りも徐々に厳しくなってきている。

4月28日(日)
昼、「藤沢市民俳句 春の大会」。「井上井月とその時代」の講演1時間。野村證券同期生の東塚治さんが聞きに来てくれる。あと大会会長の神谷章夫「さら」代表他の案内で「さかな家」にて親睦会。20時帰宅。

4月29日(月)
彗星集の選評を書き上げて6月号の仕事全部終了。

5月

5月1日(水)
昼、久々、整体師の加々美先生のマッサージ受ける。昼、とろろ蕎麦。夜スナックさや、韮と卵の黄味和、酢茎の葉など。

5月2日(木)
「三丁目の夕日」6月号の「昭和歳時記」エッセイ、山頭火を書く。14時半、NHK訪問。Eテレ「語ろう!俳句」のゲスト。高野ムツオさん座長。柴田英嗣さん司会。古坂大魔王、西生ゆかり、中西アルノさんとの句会を収録。あと代々木上原の「笹吟」にて高野先生を囲んで9人で親睦会。NHKOBの水津さん、読売新聞松本由佳、NHK俳句浦川聡子さんなど。帰宅23時過。

5月3日(金)
快晴。久々、「オオゼキ」に買物。韮、島らっきょう、鯛の兜、蛍烏賊など買い下拵え。あと午後は思い切り昼寝。

5月4日(土)
成城仲間の中川家に5家族集まる。手巻寿司他。私は上松家の烏山別宅庭で採れた筍と若布の炊合せ、島らっきょ持参。

5月5日(日)
快晴。気になりながら一度も見たことの無かった府中大國魂神社の「くらやみ祭」に行ってみる。6台の大太鼓が町を震わせる。神輿は8台か、境内に並ぶ。汐盛講送り込みまでを見る。本番は18時からの神輿渡御だがとても待つ体力は無い。帰宅。

5月6日(月)
関東戦国史のおさらい終日。おろし蕎麦旨い。

5月7日(火)
銀行、証券会社、生命保険会社に。色々と整理、一本化。ブックオフで本6冊ほど買って帰る。

5月8日(水)
終日、テレビなど見てだらだらと過す。抗癌剤8回目の服用終る。

5月9日(木)
終日、「銀漢」6月号の校正作業。昼、おろし蕎麦、夜、小松菜入りインスタントラーメン。

5月10日(金)
雲一つ無い快晴。7時半、新宿。武田禪次さん肝煎、飯田眞理子、山下美佐さんがガイドの群馬の古墳巡りのバスツアー。20人。女12、男八といよいよ「銀漢」も女性の時代か? 綿貫観音山古墳は盗掘を逸れ国宝。石室内にも入る。これは見事! 近くの群馬県立歴史博物館も見応えあり。1時間しか無いのが残念。昼食は「登利平」。次は保土田古墳群とかみつけの里博物館。18時前には帰宅。有難い企画であった。途中で買った蕗を煮浸しに。トマト、大和芋も実に旨い。

5月11日(土)
今日はぐずぐず過ごす。17時、神保町「へぎそば地酒処 こんごう庵」。辻本芙紗さんムンバイから1時帰国。「宙句会(朽木直さん)」の企画で歓迎会。理恵ママも。一斗さん幹事。

5月12日(日)
今日は机に向かってもすぐに眠くて怠惰に過ごす。母の日にて莉子、華子が料理を作る。ハンバーグ上々の出来。マッシュポテトの生ハム巻、焼いた薩摩芋のサワークリーム乗せも佳。

5月14日(火)
夜「火の会」。「天為発行所」にて9人。小茄子の浅漬を作り持参。

5月15日(水)
三浦岬から到来の天豆がうまい。「銀漢」7月号の選句続く。夜、新大久保のキムチとご飯。なめこの味噌汁。鰹の照焼。バナナ。

5月16日(木)
到来の新茶、しみじみ味わう。内臓が洗われる思い。10時半から渋谷の「シアター・イメージフォーラム」にて北村皆雄監督作品「冥界婚」を鑑賞。午後、「TOHOシネマズ池袋」にて「鬼平犯科帳 決闘」を鑑賞。18時半、麴町会館にて「銀漢句会」。あと中華店にて親睦会。帰宅23時半。「三丁目の夕日」のエッセイ、大野林火を政さんに送る。

5月18日(土)
9時半、宇都宮手前、自治医大駅下車。下野薬師寺歴史館を見学。薬師寺跡を散策す。恐らく気温30度位の夏日。休み休み散策し、歴史館でタクシーを呼び、しもつけ風土記の丘資料館へ。国分尼寺跡。見事な薄墨桜が何本もあり。古墳にも登ってみる。資料館でタクシーを呼び、小金井駅。宇都宮へ。以前、宇都宮城を見に来たことあり。「香蘭」で餃子とごはんの夕食。500円。18時には「ダイワロイネットホテル宇都宮」に投宿。20時、就寝。

5月19日(日)
4時前位に起床。ゆっくり風呂。柏餅とデコポンの朝食。7時、駅前に北原泰明、大野田井蛙さんと待合せ。北原君の車で北へ。刈田岳へのアルペンルートは残雪があり高山の桜が満開。頂上からお釜や遠く飯豊・朝日連峰を望む。下りて白石へ。蕎麦の昼食。白石城へ。北原君は見学を一切せずホテルへ。城は平成初めに石垣から再建。木造の櫓(天守と呼ぶが)がいい雰囲気。武家屋敷も風情あり。「パシフィックホテル白石」に投宿。夕食は温麵。飲食店は14時頃で閉めるところが多く昼だけ営業、コンビニも見当たらず淋しい町。21時前に就寝。



     
 

















         
    






今月の季節の写真/花の歳時記



2024/7/28撮影  モミジアオイ   HACHIOJI






 花言葉     「温和」「穏やかさ」


△カサブランカ
花は一日花で、朝に開いた花は夕方にはしぼみますが、夏の暑い盛りにたくさんの花が次々と開花します。花の色は赤の他、白などがあります。
モミジアオイの花は、近縁のフヨウやムクゲとよく似ています。一番簡単な見分け方は、葉の形です。モミジアオイの葉は掌状のモミジに似た形で、3~5裂に深く切れ込みがあります。また、フヨウやムクゲの分類は木ですが、モミジアオイは草です。宿根草なので冬は地上部が枯れますが、春になると芽吹きます。


翼果 アリウム
ギガンチウム
テンニンギク マヤラン マヤラン
マヤラン エンジュ カサブランカ 狐のカミソリ モミジアオイ










写真は4~5日間隔で掲載しています。 


20224/7/29








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