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 3月号  2025年



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銀漢季語別俳句集


伊藤伊那男作品


主宰の8句












       
             

                        

    

今月の目次









銀漢俳句会/2025/3月号





    














   

 

銀漢の俳句 

伊藤伊那男 

◎季語の問題点

 ①絵の中の季語は季語であるか?
十二月は太平洋側は乾燥が続き、あちこちから火事のニュースが流れてくる。「火事」は冬の季語だな、ということを実感する。「火事」を季語に取り上げたのは高濱虚子である。
   
映画出て火事のポスター見て立てり

が季語と認識して詠まれた最初の句ということになる。そのあと「火の番」「消防車」「火事見舞」などの副季語を入れて十幾つかの季語が成立していく。さてこの虚子の句についてである。私は動詞が三つも入っているし、良い句だとは思わない。また最大の問題はポスター(絵)の中の季語は季語であるか、という疑問がある。実景ではなく絵に描かれた餅や桜は季語として認められるかどうか、という問題である。私の句に〈梅林を余白に洛中洛外図〉があるが、いつでも見ることのできる絵の中の梅林は季語であるか? という疑問が出されたので句集から外した。また〈洛外図畳みしあとの花の塵〉がある。本心を言うと屏風を畳んだあとの絵から舞い落ちた花弁が畳に残っていたという詩的表現であり、実景ではない。もし文句を付けられたら、いやいや部屋に活けてあった花弁ですよ、と言い逃れるつもりで句集に入れた。絵の中の景物や心の中の風景は実景では無く、季語ではない、というのが私の育った写生派の考え方である。この判断については私は作句と鑑賞の年月を重ねてきて、今は個々の句の味わいの深さにより良否を判断すればよい、と思っている。
 ②比喩に用いられた季語は季語であるか?
夏目漱石の句に
   
(すみれ)ほどな小さな人に生まれたし

がある。私はこの句の「菫」は季語として微妙な位置にあるな、と思っている。「ほど」は比較する言葉であり、菫の実態を表している言葉ではない。違う例でいえば〈向日葵ほどの大きな人でありにけり〉といったときに、この向日葵は季語として成立するかどうか? これを敷衍していけば〈鏡餅ほどの嬰児(みどりご)抱かれけり〉の鏡餅は季語として詠まれたことになるのだが、良しとするかどうか? もっと言えば「雛罌粟のやうな人」「氷のやうな人」「紅葉のごとき掌」……などなどの比較や比喩の言葉も全部季語として認めることになるのだが、良いのかどうか?
 今、俳句が多様化し、季語の存在を軽視する風潮にあるように思う。以上を参考に各々で季語について考えていただきたい。














 




彗星集作品抄
  伊藤伊那男・選



 来世より帰りしごとく日向ぼこ        大沼まり子
 歌垣に集ひしあたり冬霞           武井まゆみ
 冬虹は天使の滑り台ならむ          堀江 美州
 鴨川にをりし千鳥は飛石に          塚本 一夫
 葱畑の畝の高きも深谷かな          長井  哲
 体ごと振る大鍋や年用意           小山 蓮子
 ひさかたに届くは訃報花八手         山田  茜
 クラークの右手の彼方冬銀河         大田 勝行
 触診の手の冷たきを詫びにけり        中山  中
 山眠る真神の怒りしづめつつ         橋野 幸彦
 志士の夢鎮め冬日の高瀬川          上村健太郎
 人来ねば落葉が訪うてくれにけり       半田けい子
 咲くといふ務め果たせし冬薔薇        大沼まり子
 紙漉くや水を四角に重ねては         杉阪 大和
 マドンナの写真セピアに漱石忌        坂下  昭
 手毬唄座敷童の数へたり           園部あづき
 開戦日海は木霊を返さざる          長谷川明子








 













    
     

彗星集 選評 伊藤伊那男

伊藤伊那男・選

今回はお休します。

 














銀河集作品抄

伊藤伊那男・選

巻きもどす寺の縁起絵大根焚      東京  飯田眞理子
秋うらら釜めしの底杓で削ぎ      静岡  唐沢 静男
干柿の浅間の風に嬉しさう       群馬  柴山つぐ子
笹鳴や枝の揺れさへ見せずして     東京  杉阪 大和
お多福をほぼ埋めたる大熊手      東京  武田 花果
楸邨の一途な世界木守柿        東京  武田 禪次
移り気はとうにつひえて冬の蝶     埼玉  多田 美記
労ひを言ふ口のまま葛湯吹く      東京  谷岡 健彦
宿坊の枕は硬しもがり笛        神奈川 谷口いづみ
逆縁を誰もが怖れ一茶の忌       東京  堀切 克洋
一の酉待つ棚組を高く据ゑ       東京  三代川次郎



















         





綺羅星集作品抄

            伊藤伊那男・選


てつちりや浪花ことばが酔ふほどに   東京   飛鳥  蘭
茶の花やいつか遠のく石油売り     東京   有澤 志峯
暁闇の遠き鶏鳴けさの霜        神奈川  有賀  理
雑炊の熱さや遅刻かもしれぬ      東京   飯田 子貢
雪雲を割りて現る着陸機        山形   生田 武
日だまりの影を動かし毛糸編む     埼玉   池田 桐人
二三日眺めて掃きぬ柿落葉       東京   市川 蘆舟
磔像を見上げて祈る息真白       埼玉   伊藤 庄平
すす逃げの行き着く先の床屋かな    東京   伊藤  政
夢に出る生家の間取り隙間風      神奈川  伊東  岬
虎落笛人と話さぬ一日暮れ       東京   今井  麦
太編のセーターに合ふモルトの香    埼玉   今村 昌史
手を添へるのみの出棺枯木立      東京   上田  裕
闇汁の曖昧な闇つまみけり       東京   宇志やまと
菊の香や金泥くらき阿弥陀仏      埼玉   大澤 静子
男鹿の地の鬼の数へる除夜の鐘     神奈川  大田 勝行
けふからは二人の暮し冬りんご     東京   大沼まり子
追分は別れるところ凩も        神奈川  大野 里詩
百の手の縒る注連縄の高々と      埼玉   大野田井蛙
綿虫を追へば迷界抜けだすか      東京   大溝 妙子
友よ天は安きか勤労感謝の日      東京   大山かげもと
夕市のやや錆声の飾売         東京   岡城ひとみ
銀杏散る金貨の響きあらねども     愛知   荻野ゆ佑子
食堂車のみづの揺らぎや冬紅葉     宮城   小田島 渚
島の空帰燕名残の群舞かな       宮城   小野寺一砂
入口はすなはち出口風囲        埼玉   小野寺清人
狸汁姓を一つに峡十戸         和歌山  笠原 祐子
買物の足止めて聞く火事の報      東京   梶山かおり
石鹼の瘦せ神無月終りけり       愛媛   片山 一行
旅の宿酔ひ覚ましめく隙間風      東京   桂  説子
雑司ヶ谷
古りもせぬ漱石の墓冬日燦       東京   我部 敬子
煤逃に追ひかけて来る小言かな     東京   川島秋葉男
四天王眉間に寒気集めをり       千葉   川島  紬
除夜の鐘遠く近くに応へ合ひ      神奈川  河村  啓
川風に狙ひのずるる長元坊       愛知   北浦 正弘
日記果つ空白の日は生きぬごと     東京   北川 京子
暦果てミシン目の綴ぢ残存す      長野   北澤 一伯
読み聞かす絵本の重み雪催       東京   絹田  稜
そばだつる耳の静脈冬の鹿       東京   柊原 洋征
冬銀河配流の島に裔のゐて       東京   朽木  直
古利根川の故事の証や都鳥       東京   畔柳 海村
海光をかさねて島の冬椿        東京   小泉 良子
天高し一葉の井に水汲めば       神奈川  こしだまほ
枯はちす筑波嶺に風吹き荒ぶ      東京   小林 美樹
木の声を聴く鋏あり松手入       千葉   小森みゆき
干大根風の仕上げのあと一日      東京   小山 蓮子
海山の深みゆく黙冬隣         宮城   齊藤 克之
熱燗や耳たぶといふ柔きもの      青森   榊 せい子
狐火とうべなふ田原一の坂       長崎   坂口 晴子
息白し満蒙の秘話語るとき       長野   坂下  昭
漆箸宿場に選りて冬うらら       群馬   佐藤 栄子
クリスマスカードの文字の弾みやう   群馬   佐藤かずえ
納骨にかがむ背中や冬日差       長野   三溝 恵子
その辺り足跡ばかり兎罠        東京   島  織布
御慶かな互ひの齢古りたりと      東京   島谷 高水
入口を暫し探すや風囲         兵庫   清水佳壽美
風待ちの港の宿り鮟鱇鍋        東京   清水 史恵
教会の喜びの鐘聖誕祭         東京   清水美保子
大洗鮟鱇鍋の肝の嵩          埼玉   志村  昌
クリスマスソングに合はせ泡立器    千葉   白井 飛露
武蔵野やかつて焚火の通学路      神奈川  白井八十八
張りたての雪見障子を上げてみる    東京   白濱 武子
枇杷の花目立たぬやうに香を放つ    東京   新谷 房子
火を消してなほ湯豆腐のしばし揺る   大阪   末永理恵子
褞袍着て後は夕餉を待つばかり     岐阜   鈴木 春水
着膨れて途中で止まる滑り台      東京   鈴木 淳子
福分けてふ手締めを聞きに酉の市    東京   鈴木てる緒
車窓に日柿又柿のローカル線      群馬   鈴木踏青子
漱石忌読むも読まぬも蔵書とす     東京   角 佐穂子
大根引く円墳の裾穴だらけ       東京   関根 正義
白波に押し出されたり波の花      千葉   園部あづき
シベリアの気団率ゐて白鳥来      埼玉   園部 恵夏
初鏡拭うて作る笑顔かな        神奈川  曽谷 晴子
冬暖か大仏さまの中にゐて       長野   髙橋 初風
雲上の機内静かな開戦日        東京   高橋 透水
角固く新聞届く今朝の冬        東京   武井まゆみ
信濃路の風纏ひ来し冬林檎       東京   竹内 洋平
身の内の修羅を収めて古日記      東京   竹花美代惠
虎落笛民話の里であればなほ      神奈川  田嶋 壺中
甘露煮を遁れ信濃の冬蝗        東京   多田 悦子
猫眠るところで判る三寒四温      東京   田中 敬子
伊那節の伝はる村や実南天       東京   田中  道
余生とも言へば言へさう日向ぼこ    東京   田家 正好
うす紅をつまむ小春の五色豆      東京   塚本 一夫
何処からか鉄の匂や開戦日       東京   辻  隆夫
鴨の陣まだ出陣は先のやう       ムンバイ 辻本 芙紗
狸汁昔噺はあやふやに         東京   辻本 理恵
よき夢をもたらす家の蒲団かな     愛知   津田 卓
鶏鳴のややの間延びや神の留守     東京   坪井 研治
日の翳るときは目を開け日向ぼこ    埼玉   戸矢 一斗
爪切りに爪先遠き日向ぼこ       千葉   長井  哲
港へと落葉の走る絹の道        東京   中込 精二
声低し神農祭の呼び声は        大阪   中島 凌雲
病むよりも老ゆるは難し惜命忌     東京   中野 智子
忘却は水の如しや古暦         東京   中村 孝哲
冬菊の枯れたるところ摘みにけり    茨城   中村 湖童
交はれば互ひに遠く鴨の水脈      埼玉   中村 宗男
一の酉一の手締の湧きあがる      東京   中村 藍人
城塞とまがふ病院十二月        長野   中山  中
味噌蔵の裸電球雪催          千葉   中山 桐里
千の手を仏さし伸ぶ冬ぬくし      大阪   西田 鏡子
もう読まぬ父のレーニン煤払      埼玉   萩原 陽里
笛方の幾人替はる虎落笛        東京   橋野 幸彦
雨こぼす神旅立ちしあとの空      広島   長谷川明子
湯豆腐や箸ふれて良き間柄       東京   長谷川千何子
炉話を聞きつつ交はす地酒かな     兵庫   播广 義春
一陽来復軒に弾める雀かな       埼玉   半田けい子
あの世への標ありさう枯野道      埼玉   深津  博
梟鳴く夜盗の合図かもしれぬ      東京   福永 新祇
飛ぶ構へ見せて冬蝶固まりぬ      東京   福原  紅
水鳥を豊かに利根の懐に        東京   星野 淑子
縺れたる縁途切れず烏瓜        岐阜   堀江 美州
綾取の指の記憶の塔や橋        埼玉   本庄 康代
立冬の朝しづけき水の音        東京   松浦 宗克
長き過去短き未来日記買ふ       東京   松代 展枝
七の子は祖母の手を引き七五三     神奈川  三井 康有
日記買ふ芯やはらかき鉛筆と      神奈川  宮本起代子
訃報多し日がな降り次ぐ大銀杏     東京   村田 郁子
人生の甘し切なし人参も        東京   村田 重子
雪もよひ丼ものは蓋されて       東京   森 羽久衣
侘助のひとつまた咲く東慶寺      千葉   森崎 森平
掌の小鳥の鼓動冬に入る        埼玉   森濱 直之
遠き山つづいて近き山眠る       長野   守屋  明
待つだけのたつき灯すや花八手     東京   矢野 安美
出口はや見失ひたり隙間風       愛知   山口 輝久
街ぢゆうにこぼして余る聖夜の灯    群馬   山﨑ちづ子
初鴨のまだも番とならぬ距離      東京   山下 美佐
踏台をさらに背伸びの煤払       東京   山田  茜
近江路の空昏くして翁の忌       東京   山元 正規
そこにだけ日溜りのある冬薔薇     東京   渡辺 花穂
秋郊や武蔵を名乗る駅数多       埼玉   渡辺 志水















     





銀河集・綺羅星今月の秀句


伊藤伊那男・選

今回はお休みします。











                






 

星雲集作品抄
伊藤伊那男・選
秀逸

浮き気味の尻は残して鴨潜る      東京  橋本  泰
化粧水冷たし龍飛崎の宿        神奈川 日山 典子
夜神楽や高千穂峡の夜は寝ねず     東京  久保園和美
音高く落葉掃き寄す痩せ箒       広島  小原三千代
冬菊の日影のごとき盛りかな      千葉  平山 凛語
冬薔薇の蕾くらいの恋心        東京  松井はつ子
妹と背の出会ひし島の神の旅      神奈川 山田 丹晴
闇を抜け出でたる様に曼珠沙華     長野  戸田 円三
剪られまじ棘の剥き出る冬薔薇     千葉  針田 達行
読み散らす新聞の嵩師走かな      東京  熊木 光代
藁焼きの匍匐のけむり冬はじめ     栃木  たなかまさこ
貧すれど鈍せぬ気骨一茶の忌      神奈川 横地 三旦
寄鍋や病気自慢の同期会        神奈川 渡邊 憲二
漱石忌昨日の夢の不思議かな      東京  伊藤 真紀
垂乳根の公孫樹の脈を聞く小春     東京  北野 蓮香











星雲集作品抄

            伊藤伊那男・選


片時雨眉山ぼかす薬指         東京  尼崎 沙羅
彼いつも忽と現れ焼芋を        東京  井川  敏
しみじみと噛みて味はふ濁酒      長野  池内とほる
初日よりややふくよかに菊人形     東京  石床  誠
四ツ谷駅鐘の音高く冬の空       東京  一政 輪太
落葉掃く湿りかげんの煙かな      広島  井上 幸三
店番の媼の逝きし開戦日        愛媛  岩本 青山
八日より十日に歩む十二月       長野  上野 三歩
大鍋の湯気に巻かるる大根焚      東京  上村健太郎
湯豆腐や旅も終りの南禅寺       埼玉  梅沢 幸子
踏切を挟み靡くや枯尾花        長野  浦野洋一
師走の夜つづく訃報に箸止まる     静岡  大槻 望
爽涼や奇巌の妙義藍深し        群馬  小野田静江
大磯に洋館の窓クリスマス       静岡  小野 無道
鳥羽殿に祝詞もれくる七五三      埼玉  加藤 且之
逆立ちの潜る仕草の真鴨かな      愛知  河畑 達雄
はんぺんの雲のやうなるおでん鍋    東京  北原美枝子
煤逃の誘ひ誘はれ縄のれん       東京  倉橋  茂
産土神に傘寿参りの冬帽子       群馬  黒岩伊知朗
犬も食はぬ夫婦喧嘩や冬ごもり     群馬  黒岩 清子
正夢とならぬ浮世や蒲団干す      愛知  黒岩 宏行
煮大根日本の顔のありにけり      東京  髙坂小太郎
司馬遼に惚れて寝られぬ夜半の冬    神奈川 阪井 忠太
観覧車硬き錆乗せ冬隣         東京  佐々木終吉
紐靴も気も引き締むる冬の朝      群馬  佐藤さゆり
宛所なきとの葉書凩来         東京  島谷  操
冬紅葉瑠璃光院もいまひとつ      東京  清水 旭峰
東に月ある釣瓶落しかな        千葉  清水 礼子
破れても尚捨てられぬ冬帽子      群馬  白石 欽二
冬枯れや尾根眼間の雨降山       東京  須﨑 武雄
焼芋屋の年季入りたる野球帽      愛知  住山 春人
冬服やかくしに去年の映画券      埼玉  其田 鯉宏
小春日やあのイヤリング探す午後    東京  田岡美也子
句作りは生き抜く力一茶の忌      東京  髙城 愉楽
襟巻の狐くるりと顔を出す       埼玉  武井 康弘
他愛なき二人の会話蜜柑剥く      東京  田中 真美
神棚だけで終はりし老いの煤払     埼玉  内藤  明
開拓の人逝き浅間山眠る        群馬  中島みつる
冬凪や島と半島対峙する        神奈川 長濱 泰子
母伏すと神在月のふるさとに      京都  仁井田麻利子
骨壺の思慕の重さや十二月       東京  西  照雄
ひとつづつ行事終りて山眠る      宮城  西岡 博子
窓の霜脳裏よぎるはフロイトか     東京  西田有希子
校門に弾む白息鎮めけり        神奈川 西本  萌
到来の深谷葱なり根深汁        静岡  橋本 光子
しまひ湯や明日は柚子を捥ぐとしよ   神奈川 花上 佐都
ゆつたりと墨磨る夕べ虎落笛      千葉  平野 梗華
黒服にめだち過ぎたる冬の塵      長野  藤井 法子
裏道の暗き教会聖夜待つ        福岡  藤田 雅規
宮守りのくさめひとつや日の暮るる   東京  幕内美智子
掌に綿虫母の忌の近し         埼玉  水野 加代
もてなしの皿へあしらふ実南天     愛知  箕浦甫佐子
男振りと言はれしことも褞袍巻く    東京  宮下 研児
鱈鍋や三陸の海こぼれだす       宮城  村上セイ子
懐かしき父のとつくり熱燗で      東京  家治 祥夫
吾を叱る人は墳墓に冬の雷       静岡  山室 樹一
湯豆腐の湯気に包まる父と母      群馬  横沢 宇内
笹鳴にしばし耳貸す六義園       神奈川 横山 渓泉
夜行バス手編みセーター映す窓     千葉  吉田 正克
火の山は聖のごとし冬が来る      山形  我妻 一男
雪催ひとつ灯るは赤提灯        東京  若林 若干
牛奥ノ雁ヶ腹摺山や冬         東京  渡辺 広佐




















星雲集 今月の秀句

伊藤伊那男
今回はお休みします。


















伊那男俳句


伊那男俳句 その3

草石蚕の紅一点として残る

 「ちよろぎ」という名前もさることながら、その形も巻貝を引き伸ばしたような奇妙な形をしている不思議な食べ物である。一般的にはほぼ年に一回だけ、正月のお節料理の黒豆の中に戯け者のように腰掛けている、のを見るだけだ。しかも梅酢で真赤に染められている変り者である。結局のところお節料理の最後まで残ってしまう運命にあるようだ。或る時栽培をしている友人が味噌漬にしたものを呉れたが、食感も良く滋味深いものであった。江戸時代に中国から伝来した紫蘇科の植物で、夏に紫色の可憐な花を咲かせる。花は夏の季語にもなっている。以前この句を短冊に書いて、俳句大会の特選賞として渡したことがある。ところが後で気が付いたのは「草石蚕」の字を「石草蚕」と書き間違えていたことである。もう人の手に渡ってしまったものなので取り返すわけにもいかず困ったことである。そもそも字も厄介なのである。だが赤い草石蚕の無い黒豆も少し淋しいし、いやはや不思議な存在である。(平成二十三年作『然々と』所収











   


 



俳人協会四賞・受賞式





更新で5秒後、再度スライドします。全14枚。







リンクします。

aishi etc
        














銀漢の絵はがき


挿絵が絵葉書になりました。
Aシリーズ 8枚組・Bシリーズ8枚組
8枚一組 1,000円

ごあいさつにご利用下さい。


















掲示板














               
 
     

「銀漢」季語別俳句集




拡大します。
銀漢季語別俳句集
待望の『季語別俳句集』が3月に刊行されました。











主宰日録  

  

12月

12月1日(日)
9時過ぎの新幹線に乗車。冬麗の富士山に拍手。シウマイ弁当。新神戸から有馬温泉へ。黄葉が美しい。「東急ハーヴェストクラブ有馬六彩」は高台。眺望絶佳。ゆっくり湯に浸る。黄金色の湯。マッサージ機に身体を預ける。夕食は持参の林檎と柿と大福餅。

  12月2日(月)

快晴。温泉とマッサージ。朝、林檎。湯町を散策。太閤の湯、温泉神社、温泉寺。「全寿庵ごんそば」で昼食。四時間ほどの散歩。戻って「俳句界」二月号依頼の「人生の苦難と共に〜俳句の力」のエッセイをだいたい書きあげる。夕食、カップ麺のきつねうどん、甘栗。温泉とマッサージ機。

12月3日(火)
今朝も快晴。温泉とマッサージ機。体重55キロは少ない。京都で食べるぞ‼︎ 11時過ぎ、有馬を後にして三宮へ出る。生田宮、生田の森を参拝して京都へ。東本願寺、菅大臣神社(道真公の住居跡)などを巡る。17時、「味どころ しん」にて和田ちゃんと待合せ。ぐじ、車海老のおどり、くもこ、万願寺焼、コッペなど。20時半、「ザ・プリンス京都宝ヶ池」へ投宿。今年、6度目の京都。

12月4日(水)
窓の下の庭の楓紅葉ただならぬ絶景。作句、エッセイの構想など。昼、「御所南・かまた」。和田ちゃんと。夜のコースを昼に出して貰う。相変わらず丁寧で見事な料理。隣に旦那についてきた舞妓さんと芸妓さん。15時過の新幹線に乗車。

12月5日(木)
「俳句界」のエッセイ。「銀漢」2月号のエッセイ他。「昭和歳時記」(草田男)など書き上げて投函。数句会の選句。「銀漢」1月号の校正。編集長へ投函。染筆葉書30枚ほど作成。

12月6日(金)
昼、歯科、定期検診。14時、下北沢の星乃珈琲店にて、NHK俳句の浦川聡子さんと来年の「一句旬菜」の打合せ。入院に対し励ましをいただく。あと、甥の宝飾店に寄る。 

12月7日(土)
彗星集2月号を理恵さんに送る。春耕賞二次選考送る。昼、「隠れ房 新宿店」。ORIX時代の部下の伊藤会に招かれる。10人集まってくれる。25年振りの顔も。彼らを捨てて転職したのに、こうして覚えていてくれることに感謝!(1年前の入院中に話があり、一年延ばしになっていたもの)。

12月8日(日)
朝食、大根おろし、ジャコ、京都で入手の酢茎、日野菜の糠漬、丸干、明太子、味噌汁、ごはん。蜜柑沢山戴いているので、前の分をジュースに絞る。カラスミの手入れ。入院の準備。昼、到来の永福町「大勝軒」のラーメン。

12月9日(月)
9時、順天堂医院。MRI検査のあと、B棟16階の病室へ。今回は個室。今日は血液検査の外は何も無し。持参の漫画「味いちもんめ」など)を見たり、テレビを見たり。東京の夕景が美しい。担当の小池先生チームの挨拶を受ける。副作用が少なければ木曜日あたりに退院を考えていると。食事全部戴く。

12月10日(火)
シャワー、朝食完食。快晴。藤井先生から治療の説明受く。結局、午後4時位から抗癌剤の点滴投与が始まる。途中、夕食となるが、鯖の味噌煮他完食。21時位に終了する。今のところ気分の悪化などは無し。

12月11日(水)
特に服作用を感じないで起床したが、徐々に発熱。37度五分から38度。急に食欲減退。ぐったり臥す。結局、持参の蜜柑を2つ食べた位。解熱剤貰う。

 12月12日(木)
微熱続き、血液検査をするが、特に異常無しとて、午前中の退院となる。杏さんの迎えを受けて帰宅。林檎、蜜柑、ル・レクチェがうまい! 「大勝軒」のラーメンも少々、うまい。順天堂から紹介を受けた東京目白クリニックの大場院長と連絡。来週からの G C D投与治療はこちらにお願いする。郵便物の処理や返信。夜、京都から到来の豆腐で湯豆腐。明太子、酢茎漬、笹かまぼこ。至福である。

12月13日(金)
カラスミの手入れ。ほぼ出来上がり。朝食、ちりめんと大根おろし、豆腐と油揚の味噌汁。丸干、酢茎、明太子、食欲あり。副作用感じない。昼、林檎、紅まどんな、ル・レクチェ。5句会の選句。入院中に毎日新聞の鈴木琢磨氏より朝日新聞の小泉信一記者を偲ぶ会を14日に企画しており、吉田類、坂崎重盛、鎌田慧、都合つけば山田洋次氏も来るが、と誘いを受けたが、残念ながら断念の連絡を入れる(小泉氏は『神保町に銀漢亭があったころ』に執筆下さった方)。

12月14日(土)
「銀漢」4月号のエッセイ(季語について)書く。朝、食欲あり、昼、細打ちうどん、林檎、紅まどんな。「昭和歳時記」のエッセイ1本(中村汀女)書く。夜、湯豆腐、ル・レクチェ。

12月15日(日)
快晴続く。「昭和歳時記」のエッセイ(三橋鷹女)。16時、日暮里の「夕焼け酒場」に35五名程集まって下さり「銀漢亭の日 忘年句会」。米国の青柳飛さん、ジェフさんも。句会を終え、シャンパンの乾杯をして19時半、帰宅。皆さんから激励の力を戴く! 感謝。

12月16日(月)
1時、加々美先生の整体を受く。身体が少し冷えているようだと。ごぼう、甘酒他買物。叩きごぼうを作る。甘酒少々、湯豆腐。数句会の選句。

12月17日(火)
9時、東京目白クリニックへ桃子に送って貰う。血液検査の結果、白血球が3,000に達しておらず(2,600)、2回目の抗癌剤点滴は延期。白血球を増やす注射を受けて帰宅。副作用は感じていなくても、「身体の中では相当な副作用があるんですよ」と大場院長。成城駅の売店で「美登利寿司」のちらしを買う。「大勝軒」のラーメン、おでん。食欲あり。林檎も。

 2月18日(水)
「銀漢」2月号の選句。数句会の選句。到来の玄界灘一本釣のかんぱち1本を捌く。刺身、昆布〆、カマは塩を打つ。アラは大根と汁に。

12月17日(木)
体温上ってくる。36,3度。カラスミ干上がる。美しい仕上がり。気仙沼のみりん干で朝食。風呂ゆっくり。甘酒など。かんぱちの粗煮。西利の漬物など。

12月20日(金)
14時、調布「アカデミー愛とぴあ」の俳句講話。「正岡子規の食欲」について1時間半。あと、寶田さん、竹内夫妻、広佐、我部、蓮子、三井さん他と喫茶店。寶田さん「銀漢」入会と。これで調布の講座から3人入会。

 12月21日(土)
数句会の選句。「銀漢」2月号の選句。途中、転寝やテレビ。兄から来た柚子があったので柚子胡椒を作る。桃子の造った甘酒旨い。夜、かんぱちの昆布〆、千枚漬など。

12月22日(日)
到来の天美卵を玉子かけごはんに。でべらかれい。「銀漢」2月号の選句稿を各担当者に送る。今回は選評無しとさせていただく。2句会の選句。夜、金目鯛煮付。

12月23日(月)
8時590分、東京目白クリニック。血液検査の結果、白血球十分な量に増加しており、治療可と。3時間ほど点滴。昼過終了。帰宅後も特に異常を感じることなく、昼食しっかり(大根おろし、ジャコ、明太子、とろろ芋、甘酒、林檎、柿など)。やや気怠さはあり。昼寝。夜、かんぱちカマの塩焼、とろろ汁、酢茎の茶漬。蜜柑など。

12月24日(火)
夜中、ふと計った体温が34,8度には驚く。1週間で別人のような血液検査表もそうだが、自覚は少ないものの体内では相当なせめぎ合いが起っているようである。朝、36,4度に回復している。昼、すっぽんスープと揉み海苔の雑煮。旨い。夜、クリスマスイブとて、娘と孫が鶏焼、ピザ、チョコレートケーキ、オニオングラタンスープなど作る。私は出来たてほやほやのカラスミを供す。上々の出来!

12月26日(水)
夜中、体温35.5度(昨日よりは良い)。朝、常の食事。この頃、甘酒を飲む。昼、とろろ蕎麦。1月の調布の俳句講話用に「京都の食物」を紹介するつもりでノートにまとめ始める。なかなか楽しい作業。夜、ゴルゴンゾーラと奈良漬のピザ、舞茸のアヒージョなど桃子の作ったもの。こういうのを食べる気持も出てきている。




     

























         
    






今月の季節の写真/花の歳時記






2025/3/28撮影   カタクリ    . HACHIOJI










花言葉 「初恋」「寂しさに耐える」「嫉妬」



キブシ(木五倍子)    
カタクリはユリ科に属する花で、日本と朝鮮半島が原産地です。薄紫やピンクの花を咲かせ、特徴的な球根はデンプンが多く含まれ、片栗粉の原料としても知られています。
カタクリは、「万葉集」などの和歌集の中でも、うつむく少女のような可憐な少女を表す言葉として詠まれています。



シクラメン セツブンソウ サンシュユ 雪割草 雪割草
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沈丁花 アニソドンテア クロッカス 辛夷 キブシ
カタクリ










写真は4~5日間隔で掲載しています。 


20225/3/24









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