伊那男俳句
伊那男俳句 (令和7年4月号)
潮吹くのみの抗ひ海鼠切る
信州に育ったので海鼠を食べたのが何時のことであったか……。多分東京の居酒屋で食べたのが初めてであったかも知れない。輪切りにした橙の浮く三杯酢の中に浸っていたような記憶がある。すぐに好きになり、品書きにあれば必ず頼む一品である。自分で料理もする。俎に乗せても特に身動きをすることもなく、刃を入れても抵抗することはない。切り口から少し潮を流すだけで、少し気の毒に思うこともある。海鼠の句では〈海鼠切りもとの形に寄せてある 小原啄葉〉が一番の傑作であると思う。金沢で食べ歩いた折、腸の塩辛である「海鼠腸(このわた)」、卵巣を集めて干した「海鼠子(このこ)」に親しんだ。いずれも能登半島の特産品で、実に贅沢な酒肴で、食文化の高さに感嘆したものである。そういえばグアム島に遊んだ時、海水浴場で足の踏み場も無いほどの海鼠に困惑したことがある。大きくてタイヤのように黒光りをしている。身は食べる気にならないが、海鼠腸、海鼠子ならば……と今も思っている。(平成二十二年作『然々と』所収) |






◎読書と俳句
子供の頃から読書が好きであった。
姉の思い出話によると、姉はその頃どの女学生もしていたように毛糸の手編みをしていたら、父から「そんなことをするより本を読め」と言われたという。そんな家庭であったから、私は町の本屋から好きな本をツケで持ち帰る知恵をつけ、三日にあげず本屋を覗いていた。中学生の頃には山岡壮八の『太閤記』『徳川家康』、吉川英治の『新・平家物語』『宮本武蔵』などの長編も読み終っていた。勉強は嫌いであったが、読書の効能で大人より漢字も歴史も知っていたし、文章にも馴れていたので国語だけは良く出来た。一方算数は悲惨な状況で、心配した父が仕事の合間をみて教えてくれたことがあったが、植木算あたりで躓き、医師の父は匙を投げた。高校では文芸部に入って詩や小説めいたものを書いていた。大学でも先輩達と文芸サークルを作って「惰眠」という同人誌を三号まで出した。社会人になって二年間京都にいたが、まさに「事実は小説より奇なり」ということで、現実の世の中が面白くて、一冊の本さえ読まないという、私の人生では珍しい期間を持った替りに語るのを憚るほど紅燈の巷を遊び歩いていた。結婚した後は読書に戻った。通勤時間や昼休みが大切な読書の時間であり、外出の途中で読み終る手持無沙汰を怖れて、次の本も必ず鞄に入れていた。月間十冊以上は読んでいたと思う。読書に傾いていたので麻雀もゴルフも知らない。オリックス時代「営業課長でゴルフをしないのは君だけだが……」と忠告を受けたが「成績に支障が出たら言って下さい」と開き直った。
小説を書いてみようという気もあって机に向かったが、すぐに才能が無いことが解った。小説は鮮明な記憶力と長距離ランナーのような粘りが無いと駄目である。私は記憶が極めて曖昧で、論理的な構成力が無く、持久力が保てない性格である。結局とびとびの記憶と瞬発力でも何とかなる俳句の世界に入ることとなった。短歌の三十一音は覚え難いが、俳句の十七音なら頭に入る。また俳句を作ろうという意識を持って見た風景は割合脳裏に残っているものである。その風景が薬種問屋の抽出しのように整理整頓されて頭に入っていると何年か後に兼題や席題が出た時などにふっと甦ってくるのである。これも年季という訓練によるものであろう。そのようにして私は俳句という居場所を獲得したのであった。
思えば長い読書歴が自然に俳句に誘ってくれたのであろう。理科系には向かないと見切って、好きなだけ本を読ませてくれた父に感謝である。俳句を始めたことを知って『広辞苑』と『井月句集』を送ってくれたのも父であった。 |





彗星集作品抄
伊藤伊那男・選
地球儀のどこが最果て日脚伸ぶ 森 羽久衣
冬滝の時の止まりし虚空かな 髙城 愉楽
水鳥の褥に淡海広すぎる 鈴木てる緒
蒟蒻のふるまひの湯気初閻魔 辻本 理恵
闇は黒ばかりに非ず滝氷る 本庄 康代
三井寺や湖に脚置く冬の虹 鈴木てる緒
七草の集めたる陽を貰ひけり 上野 三歩
初御空疵ひとつなく富士へ尽く 大溝 妙子
人参を切れば生まるる夕日かな 梶山かおり
枯菊の風の乱れをくくりけり 渡辺 花穂
もてなしに豆を撒かるる酒場かな こしだまほ
風花来諏訪に原初の祈りあり 大野田井蛙
金目鯛睨む目玉を外しけり 尼崎 沙羅
隅つこの一人は日陰日向ぼこ 長谷川 明子
書込みの喜怒哀楽や古暦 中山 桐里
老いてなほ気力の背骨冬田打 多田 美記
春待つや布地の筒の万華鏡 絹田 稜
漁りの冬霧まとひ帰りきし 谷口いづみ
誰よりも母が早起き大試験 宮本起代子
群鳩は銀の扇に初明り 池田 桐人
銭湯の一人がよひや夕ひぐらし 中村 藍人
雁や亡夫の日記見ず捨てず 飛鳥 蘭
鶏頭の雨に明るき子規忌かな 武井まゆみ
二百十日蝦蟇の膏を指に塗り 長谷川明子
故郷やことに薄暮の木守柿 竹内 洋平
いつまでも女盛りや菊人形 坪井 研治
海境に雲立ち上がる敗戦日 三代川次郎
火の匂ひ落鮎の香とまざり合ふ 津田 卓
空色の絵具を伸ばす秋の水 有賀 理
白馬蒼むかの月光に触れてより 大野 里詩
片意地の父に似てきし大南瓜 朽木 直
手の甲の皺しみじみと敬老日 中野 堯司
鉄橋と錆朱を競ふ夕焼かな 本庄 康代
文通といふ恋のありけり天の川 山元 正規
突然に大きな顔の金魚鉢 有澤 志峯
花街失せ色なき風のあつまりぬ 橋野 幸彦
鶏頭の種の小ささ柄に似ず 西田有希子
蛇笏忌の葉裏びつしり鬼胡桃 小野寺清人
犬小屋に犬戻さるる野分後 深津 博
磐座の神々のこゑ涼新た 渡辺 花穂








銀河集作品抄
伊藤伊那男・選
冬夕焼上宮王家最後の地 東京 飯田眞理子
日をたのむ峡の明け暮れ年惜しむ 静岡 唐沢 静男
初鴉いつもと違ふ声したる 群馬 柴山つぐ子
白鳥の腋の最も白くあり 東京 杉阪 大和
ゆりかもめ吾も旅人橋数ふ 東京 武田 花果
大枯野貫いてゐる太子道 東京 武田 禪次
鍬の手で神の鈴振る里神楽 埼玉 多田 美記
聖夜劇の星に台詞が一つづつ 東京 谷岡 健彦
冬濤に見しまぼろしの北前船 神奈川 谷口いづみ
実南天晴れて生存五年なる 長野 萩原 空木
凍星や数へなほせばひとつ減り 東京 堀切 克洋
十二月八日廊下の奥に人 東京 三代川次郎







伊藤伊那男・選
枯葦原風ざくざくと押し渡り 東京 飛鳥 蘭
香を焚き香を聞きゐて除夜の鐘 東京 有澤 志峯
斑鳩の起伏そのまま冬田打 神奈川 有賀 理
腕組みに始まつてゐる松手入 東京 飯田 子貢
根からの雫逃げつつ御慶かな 山形 生田 武
沸かす湯に柚子おのおのの弧を描く 埼玉 池田 桐人
巻き癖の奥に佳きこと新暦 東京 市川 蘆舟
初湯せりここ磐梯の明けを待ち 埼玉 伊藤 庄平
早梅の白は山野に紛れざる 東京 伊藤 政
放水をもて甲板の雪を掃く 神奈川 伊東 岬
積もるほど降らせ聖菓の粉砂糖 東京 今井 麦
婿といふ男が膳に初景色 埼玉 今村 昌史
不揃ひにやがて間遠に除夜の鐘 東京 上田 裕
星々の灯す神話や寒の入 東京 宇志やまと
夫の背の眠つてをりぬ日向ぼこ 埼玉 大澤 静子
修羅を見てきし能面かぼろ市に 神奈川 大田 勝行
犇きて花とも見えず枇杷の花 東京 大沼まり子
手の唾に勇み立ちたる喧嘩独楽 神奈川 大野 里詩
梅早し天満宮の絵馬太る 埼玉 大野田井蛙
いうれい飴買うてやりたや雪女郎 東京 大溝 妙子
門松や戦にも竹用ひしこと 東京 大山かげもと
躓きの後はめつぽふ強き独楽 東京 岡城ひとみ
風足さむ風待ち舟の絵屏風に 愛知 荻野ゆ佑子
冬の蝶昼の深さに沈みをり 宮城 小田島 渚
霜の朝船一灯のうごかざる 宮城 小野寺一砂
一室は餅に占めらる生家かな 埼玉 小野寺清人
温情に非ず友情漱石忌 和歌山 笠原 祐子
仏手柑の生りて千手を広げけり 東京 梶山かおり
父の忌に咲く山茶花の気骨かな 愛媛 片山 一行
早梅や天神様の百度石 東京 桂 説子
手毬唄母の違へしまま覚ゆ 東京 我部 敬子
容赦なく時刻まるる年の暮 静岡 金井硯児
雪搔にまだ現役と出てみたが 東京 川島秋葉男
神の島霙に隠す近江かな 千葉 川島 紬
初雪や谷戸に夕餉の薄明り 神奈川 河村 啓
春光や斑にひかる羽の艶 愛知 北浦 正弘
酒一升では足らぬらし雪見舞 東京 北川 京子
薬喰脂に濡れて榾燃ゆる 長野 北澤 一伯
愛でられて盆より跳べぬ雪兎 東京 絹田 稜
雪搔の音を遠くに目覚めけり 東京 柊原 洋征
修善寺の修羅の色とも冬紅葉 東京 朽木 直
水都はもサンタクロースは舟で来る 東京 畔柳 海村
古暦一枚となり反りに反る 東京 小泉 良子
餅ちぎるにぎり仏を生むやうに 神奈川 こしだまほ
水餅や潤びて罅の反り返る 千葉 小森みゆき
山墓に茣蓙ひと巻きの雪囲ひ 東京 小山 蓮子
天秤に偉大と堕落去年今年 宮城 齊藤 克之
石臼の肌理のととのふ鏡餅 青森 榊 せい子
寂しからむ鹿も膝折る雪催 長崎 坂口 晴子
初日記以後十年の一日目 長野 坂下 昭
浅間嶺をしまく雪雲豆煮つむ 群馬 佐藤 栄子
一月の絵具の匂ふ木箱かな 群馬 佐藤かずえ
数へ日の両手で開く蔵扉 長野 三溝 恵子
鬼ひとり残る夕さり雪催 東京 島 織布
早梅や善男善女の見上げゆく 東京 島谷 高水
風花や空より仮名の降るごとく 兵庫 清水佳壽美
羽子板の押絵はどれも斜め向く 東京 清水 史恵
冬の蠅窓を開けても出たがらぬ 東京 清水美保子
寒雀馴染みとなりぬ仁王像 埼玉 志村 昌
身ぶるひの鈴のやうなる寒雀 千葉 白井 飛露
ご破算の珠整然と寒稽古 神奈川 白井八十八
弁天の影向の島恵方とす 東京 白濱 武子
一山を越え風花の舞ふ家郷 東京 新谷 房子
固さうに見えてやはらか冬木の芽 大阪 末永理恵子
屏風絵の風神ばかり目立ちをり 岐阜 鈴木 春水
簪に綺羅が集まり初日受く 東京 鈴木 淳子
知り尽くす生家の間取り隙間風 東京 鈴木てる緒
朔太郎の詠みし駅舎や空つ風 群馬 鈴木踏青子
松が枝の張りの強さも去年今年 東京 角 佐穂子
数へ日や庭木に梯子かけしまま 東京 関根 正義
クリスマス光の中にゐて独り 千葉 園部あづき
松過ぎて七福神もひとごこち 埼玉 園部 恵夏
咲き切れず散らし切れずに帰り花 神奈川 曽谷 晴子
初夢や蛇足の蛇が龍となり 長野 髙橋 初風
凍滝の音の貼り付く奥日光 東京 高橋 透水
鉄瓶のしづかな滾り隙間風 東京 武井まゆみ
初日記開きてのちの所在なき 東京 竹内 洋平
凍滝の音なき声を聞きにけり 東京 竹花美代惠
冬うらら鳩と日向を分かち合ひ 神奈川 田嶋 壺中
本尊へストーブ越しに手を合はす 東京 多田 悦子
見えてゐる他はまつ暗雪を搔く 東京 立崎ひかり
山茶花の散るさままでも花のうち 東京 田中 敬子
宛先の滲む手紙や雪見舞 東京 田中 道
教へ子の癖字のままの賀状来る 東京 田家 正好
近松忌戻れぬ橋を渡りけり 東京 塚本 一夫
早梅や安房の港は網仕度 東京 辻 隆夫
初写真立ち昇る日を真ん中に ムンバイ 辻本 芙紗
床に入るとき寒柝の三廻り目 東京 辻本 理恵
生ききるは死にきることと冬至の僧 愛知 津田 卓
心もち箸は長めや闇夜鍋 東京 坪井 研治
目に見えぬ御子を抱きあぐ聖夜劇 埼玉 戸矢 一斗
記すべき遺言もなし年惜しむ 千葉 長井 哲
目礼に軽くうなづく冬帽子 東京 中込 精二
法善寺裏梵字のごとく河豚の鰭 大阪 中島 凌雲
冬紅葉ひとひらごとの色を持ち 東京 中野 智子
去年今年終着駅は始発駅 東京 中村 孝哲
星冴ゆる駅に裏口屋台の灯 茨城 中村 湖童
解きてまた縮むるままの毛糸編む 埼玉 中村 宗男
後ろ手に羽子板市をみてとほる 東京 中村 藍人
獅子舞の小鉤きらりと後ろ脚 長野 中山 中
壁を這ふ須佐之男の影神楽宿 千葉 中山 桐里
除夜の鐘水輪のごとき余韻かな 大阪 西田 鏡子
裸木の影さへ風にしたがはず 東京 橋野 幸彦
どこへ行く当てなけれども初鏡 広島 長谷川明子
鐘楼に陽射しのみあり松過ぎぬ 東京 長谷川千何子
火袋に月と日と鹿淑気満つ 兵庫 播广 義春
産土の土俵にはづむ初雀 埼玉 半田けい子
初筑波関八州にちりもなし 埼玉 深津 博
我が影の伸びきるあたり寒雀 東京 福永 新祇
どうしても裏側見せぬ風呂の柚子 東京 福原 紅
左義長の火の頃合ひを清め塩 東京 星野 淑子
上段に洗ふ白菜宗祇水 岐阜 堀江 美州
まれびとを迎ふるやうに初日入れ 埼玉 本庄 康代
弾みをり米寿同志の初電話 東京 松浦 宗克
初夢に母をのこして目覚めけり 東京 松代 展枝
夜神楽や笛の高音は闇に溶け 神奈川 三井 康有
数へ日や駆け込むやうに訃音あり 神奈川 宮本起代子
冬苺過ぎ来し日々を顧みる 東京 村田 郁子
楪や孫を持たざる我が庭に 東京 村田 重子
波音のそろそろ高く蕪鮓 東京 森 羽久衣
冬木の芽耐へる男はこんな貌 千葉 森崎 森平
イカロスの翼の破片落葉降る 埼玉 森濱 直之
神棚の神疎開させすす払ひ 長野 守屋 明
かくれんぼ鬼は枯木の脈聞けり 東京 矢野 安美
末吉で満足喜寿の初神籤 愛知 山口 輝久
揃ふべき顔ぶれ揃ひ女正月 群馬 山﨑ちづ子
三輪山に架かる二重の時雨虹 東京 山下 美佐
楪や女系家族の恙なく 東京 山田 茜
隙間風さへ懐かしき生家かな 東京 山元 正規
適塾や出入り自由の隙間風 東京 渡辺 花穂





銀河集・綺羅星今月の秀句
伊藤伊那男・選
今回はお休み致します。






伊藤伊那男・選
秀逸
除夜の鐘胸の音叉の共鳴す 広島 小原三千代
風神に迂回促す獅子屏風 東京 橋本 泰
磊落の家系なりけり福沸 栃木 たなかまさこ
アメ横に夫の埋没大晦日 東京 尼崎 沙羅
屠蘇酌むや恩賜の銀杯磨き立て 静岡 小野 無道
隙間風手強し夜の観覧車 東京 北野 蓮香
歌垣はあの辺りかと初筑波 東京 久保園和美
起き抜けの身に芯通す寒の水 東京 北原美枝子
一音のはづれ許さず寒ざらひ 神奈川 西本 萌
定位置の柱へ吊し初暦 静岡 橋本 光子
日だまりに痒くならぬか寒雀 千葉 平山 凛語
寒卵湯治の朝の湯気に置く 神奈川 横地 三旦
旋回に吾を見抜くや鷹の声 埼玉 其田 鯉宏
かくれんぼすぐに見つかる屏風裏 愛知 河畑 達雄


星雲集作品抄
伊藤伊那男・選
牡蠣船の灯し揺るるや被爆川 広島 井上 幸三
齢ほど老いを厭はぬ年の暮 東京 井川 敏
仙丈ヶ岳の稜線割れて大旦 長野 池内とほる
朴の木に同心円の落葉かな 東京 石床 誠
獅子舞にはづむ祝儀や笛太鼓 東京 一政 輪太
日脚いま足踏みしたり水仙花 東京 伊藤 真紀
八十路越え教へ子と酌むお屠蘇かな 愛媛 岩本 青山
靴先の眩しく仕事始かな 長野 上野 三歩
神木に深き一礼寒稽古 東京 上村健太郎
冬日和昔ばなしを母の墓 埼玉 梅沢 幸子
どんど焼き四方畑のど真ん中 長野 浦野 洋一
追憶のうたかたの恋浮寝鳥 静岡 大槻 望
白鳥の飛ぶに湖面を蹴り上ぐる 群馬 小野田静江
ひとところ柚子の固まる柚湯かな 埼玉 加藤 且之
荒縄で斗缶括りて牡蠣の着く 長野 唐沢 冬朱
去年よりもさらに正直初鏡 東京 熊木 光代
とんと見ぬ初荷幟の立つ車 東京 倉橋 茂
老いて尚七草の名に躓けり 群馬 黒岩伊知朗
太郎の家にも次郎にも雪見舞 群馬 黒岩 清子
ご無沙汰の暖簾くぐりて薬喰 愛知 黒岩 宏行
ゆきをんな星座出る日は隠れゐし 東京 髙坂小太郎
パソコンの傷を労はり春を待つ 神奈川 阪井 忠太
初日の出少し蹌踉けて拝みけり 長野 桜井美津江
初仕事川面に朝日きらめきて 東京 佐々木終吉
髪切りて気分一新春を待つ 群馬 佐藤さゆり
遠ざかる人の背淡き冬日かな 東京 島谷 操
賀状書かねど誰彼を思ひ遣る 千葉 清水 礼子
初日受く今日も榛名の裾に生き 群馬 白石 欽二
安らぎの終の住処や福寿草 東京 須﨑 武雄
枯山水屏風の竜の一睨み 愛知 住山 春人
水仙の背筋伸ばせり遺影前 東京 田岡美也子
寒の雨昔の傷のうづきけり 東京 髙城 愉楽
初明り一人暮しのひとり起き 埼玉 武井 康弘
暗闇を溶かしながらの初茜 東京 田中 真美
心身の透けて見るかに初明り 埼玉 内藤 明
蒼穹や嶺ある限り空つ風 群馬 中島みつる
初明り富士刻々と現れる 神奈川 長濱 泰子
逆立ちの狛獅子の眼に初比叡 京都 仁井田麻利子
除夜の鐘この恙無き吾の暮し 東京 西 照雄
新年を皆いとほしく挨拶す 宮城 西岡 博子
初夢を見る暇なく今日三日 東京 西田有希子
床の間に西行の歌黄水仙 神奈川 花上 佐都
布団からしばらくは出ぬ里帰り 長野 馬場みち子
包丁を研ぎて始まる年用意 千葉 針田達行
今日からは母に優しくお元日 神奈川 日山 典子
ほんたうは煤逃げしたき妻であり 千葉 平野 梗華
ここは信濃茎漬を出す喫茶店 長野 藤井 法子
読初は駅伝前のスポーツ紙 福岡 藤田 雅規
頬張れば浮かぶ故郷雑煮餅 栃木 星乃 呟
軸物の七福神を詣でとす 東京 幕内美智子
托鉢に初雪きらと喜捨めけり 東京 松井はつ子
袖垣の男結びや実南天 埼玉 水野 加代
便りなき友ばかりかな鰯雲 東京 南出 謙吾
ゆつたりと楷書で一句初日記 愛知 箕浦甫佐子
蠟梅の香の八畳にあまりある 東京 宮下 研児
豆腐切るやうにはいかぬ雪下し 宮城 村上セイ子
茎は伸び葉は三界に仏の座 東京 家治 祥夫
貧しさも俳句の糧に一茶の忌 神奈川 山田 丹晴
日短や砂場の城はそのままに 静岡 山室 樹一
豆撒きに耳そばだつる羅漢かな 神奈川 横山 渓泉
暁に静まる漁港初景色 千葉 吉田 正克
春を待つ円空仏は笑み湛へ 東京 若林 若干
煤払写真の人の皆映ゆる 東京 渡辺 広佐






星雲集 今月の秀句
伊藤伊那男
今回はお休み致します。









更新で5秒後、再度スライドします。全14枚。



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aishi etc




挿絵が絵葉書になりました。
Aシリーズ 8枚組・Bシリーズ8枚組
8枚一組 1,000円
ごあいさつにご利用下さい。













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